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【感想】目撃!にっぽん「ウイルスと闘う、ということ 〜宮崎・口蹄(てい)疫から10年の舞台劇〜」
コロナ禍の中、宮崎県で上映された「ドキュメンタリーシアター・29万の雫2020」の舞台裏を追う。今から10年前に、宮崎県では家畜の伝染病「口蹄疫」が蔓延し、29万頭の家畜が殺処分になった。宮崎県では日本で初めて「非常事態宣言」が出されて、町から人の姿が消えた。この舞台の脚本・演出は、宮崎県出身の劇作家・演出家の古城十忍氏だ。
古城氏は10年前は東京にいた。地元宮崎県で起こっていたパニックは、ほとんどの人にとって「他人ごと」だったことにショックを受けた。感染症パニックが広がる現在、感染症リスクを「自分ごと」として考えてほしいと、コロナ禍のリスクを負いつつこの作品を世に発表することにしたのだ。
ドキュメンタリーシアター
今回の作品は、登場人物のセリフのほとんどが、口蹄疫の被害に遭った当事者たちのものだ。畜産農家、獣医師、ウイルスと本当に戦った人たちを取材し、そのインタビュー原稿が脚本となった。当事者の生の声にこもる感情をどれだけ役者たちが表現できるかがカギだ。古城氏は、演者たちにキビシイダメ出しをし続ける。セリフは単なる言葉ではなく、当事者の魂の叫びでなければならない。
訴えたいのは「理不尽」
古城氏が、もっとも訴えたかったのは「理不尽」だ。ウイルスによって、何十年も大切にしていたものが、破壊されること。割り切ろうとしても割り切れないつらさ。誰も責められないとはわかっていても、わ~っと泣き叫びたくなるようなつらさだ。
出演者は自ら当事者にインタビューを重ね、その時の思いを追体験しようとする。畜産農家を営む女性は、その思いを父の戦争体験と重ね合わせた。戦争は理不尽なものだ。お国のためと言って、多くの人が命を落としていった。今、考えると、なんて理不尽な死に方だろう。ただ、戦争体験者の父親は多くを語ろうとせず亡くなった。
「実際にそこにいたものしか分からん」と。
分かろう、分かろうと思っても、当事者でなければ分からない思いがある。口蹄疫で、大切にしてきた家畜を殺処分してきた畜産農家も同じだ。宮崎県民以外の人にとっては、10年前のニュースの1コマに過ぎない。宮崎県民であっても、温度差がある。多くの人にとっては、災いは自分に降りかからなければ、無関心なものなのだ。日常はあっという間にひっくり返るのに。
感想まとめ
ちょうど、今、GOTOキャンペーンで、多くの人が観光地に繰り出し、消費活動が再開した直後だ。医療従事者から見たコロナ禍、経済的なショックを受けている事業者から見たコロナ禍、立場が変われば視点が変わる。この手のドキュメンタリーを好んで見ているのはそのためだ。
コロナ禍は、まだ過ぎ去ってはいない。私は、今、この時期に経験したことを、ひとつひとつ自分の中に刻んでいきたいと思っている。やがて、この時代が経験したことが、重要な歴史になるはずだ。そのひとつひとつを記憶していきたい。
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