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受刑者の再犯率を下げる画期的な取り組み「世界一豪華な刑務所の内側」BS世界のドキュメンタリー
誰もが過ちを犯すが、時に取返しがつかないような罪もある。殺人・強姦・児童虐待・麻薬取引など「重大犯罪」を犯した人たちが、どうしたら本当に更生することができるのだろうか。以前、読んだこの本がけっこう衝撃だったが、刑務所にいる犯罪者のほとんどが本当の意味では「更生」していない。それは「反省」させるからだという内容。
この本の内容と、ある意味で重なるドキュメンタリーを見た。
世界一豪華な刑務所と呼ばれるノルウェーのハルデン刑務所。この刑務所から出た元犯罪者の再犯率は25%と非常に低い。イギリスの元刑務担当相(アン・ウディコム)がハルデン刑務所を視察して、その自由過ぎる?方針に驚きつつ、刑務所長や刑務官・犯罪者にインタビューをしながら、真の更生について考えるという面白い番組だ。
原題:The World‘s Most Luxurious Prison/イギリス 2020年
世界一豪華な刑務所
まず、この刑務所には、どこにも鉄格子がない。犯罪者が収監された時に、刑務官は彼を握手で出迎える。監房は「ルーム」と呼ばれ、ベッド・テレビ・バスルーム・冷蔵庫が完備されている。驚かされることに、妻や恋人と週2回面会することもでき、セックスをすることも自由だという(コンドームも用意されている)。これを聞いたアンは頭を抱え込んでしまった。「刑務所はホテルではないのよ」と。そりゃそうだ。
収監されている受刑者は日中は作業場で仕事に集中する。例えば自動車整備の仕事をプロについて、最新式の工具を用いて行い、資格を取得することもできるのだ。ただ監獄に閉じ込められて、十数年後にいきなりシャバに放り出されたら社会不適合を起こし犯罪を起こし再収監されるのがオチだ。しかし、手に職をつけて刑務所を出ることができれば、再犯する可能性はぐっと下がる。事実、受刑者たちは口をそろえて「ノルウェー政府にかけてもらった税金の分、恩返ししなければならない」と語る。
さらに、興味深い更生プログラム?として、受刑者たちの中には音楽(ラップ)で自分の感情を表現することが許されるものもいる。レコーディング室で最新の機器を使用して、犯罪に陥ってしまった自分の生の感情を音楽に載せて表現するのだ。また、塀の外でも放送されるラジオ番組で自分の感情を語ることも許されている。「どうしたら更生できるか」という質問に受刑者が真剣に答えを出しているのが面白い。
大切なのは更生させること
もちろん、ここは刑務所でリゾートではない。受刑者は自由を奪われており、指示には従わなければならない。刑務官はマッチョでいざという時には武装して制圧する権利がある。しかし、大事なこととして刑務官の役割は「罪を償わせることではなく、受刑者が出所後にうまくやっていけるように、真に更生させること」なのだ。刑務官は罰を課すのではなく、社会に有用な一員になって戻れるように助けるサポーターだという意識が双方(刑務官にも受刑者にも)にあるのだ。
受刑者たちは、施設内のスーパーに買い出しにでかけ自炊する。塀の外に出ると、自炊して栄養豊かな食生活を送ることも必要だから。この刑務所の方針は、徹頭徹尾、受刑者を外の世界に送り出すための準備である。
受刑者たちは、人道的に扱われることに感謝し、残りの人生をやりなおそうと決意するようになる(人が多いという)。冒頭で紹介した本によると、日本の受刑者は驚くほど反省していないという。むしろ捕まったことへの恨みを抱いたり、復讐心を募らせている人のほうが多いという。そして、社会との接点がなくなっているので、すっかり社会不適合を起こし再犯を起こす可能性が高まるのだ。
「罪を憎んで人を憎まず」という言葉を「実践」するのは難しい。しかし、ノルウェーの刑務所は、この言葉を地で行っているのではないだろうか。収監されて自由を奪われた時点で、罪に対する罰は下されている。後は、どうやって社会に戻れるかを再教育する場になっているのだ。
普及はしないかも
イギリスから視察に来たアンもすっかり驚き、その効果に納得してしまったハルデン刑務所だが、ノルウェー全土に広まっているわけではない。このような刑務所を作り、維持するには莫大な資金がかかるのだ。
この施設には薬物中毒者のためのリハビリ施設もあるが、ある受刑者は他の刑務所から出た後に何度も再犯し、結局、ここ(ハルデン刑務所)で薬物をやめられた。ただ、そのために約12億円を要したという。この一人の受刑者を更生させるために12億円だ。
このような方法で、真の更生が促されるなら良いけれど、どこの国でも、犯罪者に対して、それだけの人手も資金もかけられない現状がある。ある意味では「理想の刑務所」と言えるのかもしれない。
また、被害者感情・遺族の感情を考えると、手放しに認められないと感じるかもしれない。あまりにも快適な刑務所内の暮らしを見ると辛く感じるだろう。また、塀の外で真面目に生活し、一生懸命働いても貧しさから抜けられない大勢の人にとっては、あまりにも不公平だ。
感想まとめ
ただ「理想の刑務所」と言って片付ける(考えない)のはもったいない成功事例だ。日本でも刑務所を出た受刑者たちの再犯率は問題になっているだろう。(日本の再犯率は57.7%)。私は専門家でもないので、あれこれと言う立場にはないが、下記の本は非常に興味深い視点を提供してくれた。ぜひ、手に取って読んでほしい。
反省させると犯罪者になります (新潮新書) (日本語) 単行本 – 2013/5/17
岡本 茂樹 (著)
いい子に育てると犯罪者になります (新潮新書) (日本語) 新書 – 2016/3/17
岡本 茂樹 (著)
凶悪犯罪者こそ更生します (新潮新書) (日本語) 単行本 – 2014/7/17
岡本 茂樹 (著)
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