人間の「あぁやっちまった・・・」を知っていくと対策が打ちやすくなる話〜誘惑される意志〜
人間は未来の損失を過小評価してしまう
著書『誘惑される意志』を読み終わりました。
本書のテーマはサブタイトルにあるとおり
人はなぜ自滅的行動をするのか?
ということを精神科医である著者が語るもの。
・体に悪いと分かっていても、酒やタバコがやめられない
・損すると分かっていても、ギャンブルをやめられない
・痩せるためにトレーニングをしようと決意しても、3日坊主
という風に、
悪くて魅力的なものほど「やっちまう」
良いことで魅力的なものは「やめちまう」
という人間の不合理な側面を語ったもの。
これは精神科医が書いた作品でしたが、蓋を開けてみるとバリバリの「行動経済学本」だったな〜というのが印象的でした
行動経済学とは超ざっくり話すと
人間の不合理性を理解し、合理的に行動させるためにはどうすれば良いのか?
ということを追求した学問。ダニエル・カーネマン氏の『ファスト&スロー』が有名です。
例えば社員の健康に配慮した食事にしたいときは、普通ならカツ丼みたいなカロリーの高いウマイものを頼みがちですが
メニューの目立つところに健康セットを見せる
サラダバーを近くに配置し、アクセスしやすくする
健康的セットを「定番メニュー」にして、健康レストランのイメージをさせる
みたいに、人間の「考えることが基本的には嫌い」な性質(脳は省エネが大好き)を使って無意識のうちに健康的な食事をさせる、みたいな感じです。
今すぐ1万円欲しい?それとも明日1万1千円欲しい?
ということで本書に戻って「なぜ自滅的な行動をとるのか」ということでしたが、これは
人間は「双曲割引」という心理を持っているから
というもの。双曲割引とは
遠い将来は待つことができるが、近い将来は待つことができない
という人間のこころの性質を表したものです。時間割引とも言います。
良く聞く話として
A.1年後に1万円をもらえる
B.1年と1日後に1万1000円をもらえる
上記の二択ではどちらがいいかと問われた場合、ほとんど全ての人がBを選びます。しかし、
A.今すぐ1万円をもらえる
B.明日に1万1,000円をもらえる
このように、渡すタイミングだけを変えて質問すると、Aの選択肢を選ぶ人が突然増えます。
人は、遠い将来の「1日」は短い時間と感じられるのに、「今から明日まで待て」と言われた場合の「1日」については、とても長い時間のように感じてしまうのです。
つまり、私たちの心は「今すぐできること」の価値を非常に過大評価する傾向があり、「ちょっと待つ」ことでより大きな利益を得る行動が、とても苦手ということです。
このような心理が働くからこそ
今すぐ快感が得られる酒やタバコをやっちまうし
報酬が得れる快感からギャンブルもやっちまうし
トレーニングしてる最中がしんどくてやめちまうし
という話になります。
本書では、人間の自滅的行動のメカニズムについては語られていますが、
良い習慣をどうやって続けようか
悪い習慣をどうやってやめようか
という部分には触れておりませんので、
あらかじめ失敗する日を設けて、快感をちょい得つつ、続けていく
という提案を下記記事で補足しておきます。
いまさらながら継続することは人間の性質上超ムズイんだなと感じました。
あらゆる欲求ががんじがらめになりますし。そういったことが良くわかる本でした。