僕たちは「言語」を習得したことによって教え合い、急激な成長を遂げるようになったんだ〜オリジン・ストーリー〜
人間と他の動物の学習能力の差はどうやって生まれた?
ビリ・ゲイツが絶賛し、歴史の集大成を見せる作品とも言える著書『オリジン・ストーリー』を読みました。
本書のテーマは
わたしたちはどこから来たのだろうか?
というありきたりな、それでいて最も困難とも言えるものです。
本書の著者であるデイヴィット・クリスチャンは
ビッグバンから複雑な現代社会までの宇宙の歴史を、さまざまな分野から得られた洞察とエビデンスでもって一つの物語としてまとめ上げている権威者でして、
ビル・ゲイツと共に
「ビッグヒストリー・プロジェクト」
という宇宙創世から現代文明までの138億年を一つの物語として描き出すプロジェクトを立ち上げたほどの方です。
正直、いきなり本を読んでも難しいので私は動画から興味を持ちました
上記の動画はちらほら専門用語が出るものの、イラストを見ればすぐにイメージできるような素晴らしい構成でした。
そして、歴史を紐解いていくうちに「人間」の神秘は「言語化」にあると言えました。
集団で学習し、分業でシステムを構築する「ニンゲン」なるもの
本書が他と違う点は、
単に歴史を追うだけでなく、人類、あるいは生物や宇宙が次の段階に進むために必要とした変化やイノベーションは何かを問う点にあります。
その本書によるとイノベーションの「臨界点」は8つあるとのことでして
1.宇宙の誕生
2.恒星の誕生
3.銀河の誕生
4.分子と衛星の誕生
5.生命の誕生
6.ニンゲンの誕生
7.農耕の誕生
8.エネルギー革命
という8つの臨界点を経て複雑な現代に至るというヒストリーがあります。
中でも、「ニンゲン」がここまで他の生命体と違うことは
言語による「集合的学習」を可能にしたから
だと説きます。
人間ほどの豊富な語彙や文法を持つ生命体はいません。
そして、目の前にないものについての正確な情報を伝達できる生命体もおりません。
言語による能力強化により、人間は情報を共有し、世代を超えて知識を蓄積していきました。
人間は死期が近づくと、「何かを遺したい」という意欲が異様に高まります。
世代を超えて、情報を殺すことなく伝達できる種がニンゲンなのです。
集合的学習における集合知は膨大なエネルギーでしょう。
あらゆるエネルギーを活用し、余剰を生んだ「ニンゲン」なるもの
そして人間は「農耕」を学習したことにより
牛や馬という大きな運動エネルギーの活用
エサとなる草を育む光合成エネルギーの活用
を経て、農作物や食肉を余らせることに成功し
その「余剰」によってヒエラルキーや分業といった社会の原型を生み出しました。
「余剰」が「社会」を生み出す理由については以前紹介した『父が娘に語る経済の話』を読むといいかと!
「農耕」とは蓄積された知識により、生物圏を巡っているエネルギーと資源を利用する方法です。
そのエネルギーを活用して人口は何百倍にも膨れ上がり、集合知も何百倍となりました。
そして今、化石燃料革命という驚くべきイノベーションも経て、現代世界ができあがっていきます。
「石油」と「集合的学習」によって複雑な社会が出来上がり、今に至るわけです。
こんな壮大なヒストリーを分かりやすく紐解いた、「教養本」といって差し支えない作品でした!
動画から入って本書を読むと分かりやすく読めるかと思われますのでぜひ!