心理学コラム/パワハラ上司撃退法
昨今、セクハラに続き、パワーハラスメント(以下パワハラ)防止が法制化されたこともあり、メディアでもハラスメント問題が話題になることが増えているようです。ハラスメントといっても好き嫌いという次元の話から、被害を受けた方が不調になって休職する、訴訟問題に発展するものまで様々です。今回はご相談が多い上司→部下のパワハラ対処について考えてみたいと思います。
それは本当にパワハラなのか?
あなたが上司からの言動をパワハラだと感じたとします。まずはその言動がパワハラに該当するかを確認する必要があります。厚生労働省によると、パワハラは以下に定義されています。
『職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素全てみたすもの』
冷静に判断し、該当するようなら黙って耐えているのは得策ではありません。なぜなら、あなたが辛いだけでなく、上司にとっては問題行動が是認されたことになり、言動を強化し、エスカレートする可能性もあるからです。
ストレスマネジメントとして具体策を考える
この状況にどのように対処するか、ストレスマネジメントの考え方にあてはめ、硬軟おりまぜて対応策をいくつかご紹介します。
1)ストレスの原因をなくす・少なくする。(自力で克服、相手に働きかける、逃げる)
▼上司が余計なことを言えないほど完璧に業務を遂行し、周囲の評価を勝ち取る。
仮にできたとしても、パワハラはなくならないかもしれませんが、あなた自身の成長のためにはよい方策かもしれません。また、実力をつけたあなたは、上司のことなど気にならなくなるかもしれません。
▼言動を改めてもらうよう、依頼する。
直接対決です。これができたら、または聞き入れてくれたら苦労しないよ、ということかもしれません。さらに酷くなるのが怖くて言えないかもしれません。
▼パワハラだと感じた言動の意図を冷静に判断する。
上司の言動の解釈に誤解があるかもしれません。「このように理解しましたが、正しいでしょうか」と確認してはいかがでしょうか。「そんなつもりはなかった」であれば多少なりとも溝は埋められるかもしれません。また、毅然とした態度で質問すれば、抑止に働く可能性もあります。
▼異動願いを出す。または退職する
ハラスメントで心身の調子を崩してしまうことほど、もったいないことはありません。異動願いを出すこともできます。また、「最終的には辞めることだってできる」と考えることで多少は楽になるのではないでしょうか。
2)自分の受け止め方を変える
▼成長のための試練だとあえて受け入れる
上司だからと言って、人間的に優れているとは限りません。未熟な人間だと割り切り、逆に教育してやろうという発想で対応策を練るというのはいかがでしょうか。
▼言動を予想して楽しむ
次にどんな理不尽なことを言うか、と備えておくと案外楽しめることがあります。その際は記録に残し、相談する際に活用しましょう。
3)ストレスを発散する
▼プライベートを充実させる
仕事が終わったら、頭を切り替え、自分の時間を有意義に使うことを考えましょう。意識的にオンオフの切り替えをし、エネルギー充電を心がけます。
4)周囲の助けを借りる
▼上司が言うことを聞きそうな他の人に相談
上司が頭の上がらない人、または対等以上の方はいないでしょうか。相談する際は、報復を受けないように、その不安も含めて相談しましょう。
▼仲間を増やす
同じように虐げられている同僚はいないでしょうか。複数で訴えを起こすこともできます。また、愚痴を聞いてもらうだけでも救われることがあります。くれぐれも自分ひとりで悩まないで下さい。
▼窓口へ相談
ハラスメント相談やコンプライアンス相談窓口が社内に設置されていれば、相談することを検討しましょう。その際は状況について論理的に説明する必要があります。「ひどいことを言われて傷ついた」では窓口も対応ができません。どのような言動がどのくらいあったのか、記録を残すことをお勧めします。またはスマホで録音することもできます。これは暴言を止めたい時にも有効です。窓口対応が不十分であれば、外部への相談を検討することもできます。
上記全てを実行しても上司が改まらない、または会社が対応しないのであれば、そこはあなたのいる場所ではないのかもしれません。ただし、残念ながら、職場を変えたとしても、合わない上司がいる可能性はゼロではありません。
私は過去に上司との関係性が悪く、先輩に「上司がバカだから困る」とぼやいたことがありました。その時、「バカを操れないお前はバカじゃないのか」と言われ、なるほど、と思った経験があります。これも受け止め方を変えるということでしょう。
また、パワハラまがいの暴言は許されませんが、言われたあなたに本当に非がないか、これもきちんと内省することが大切です。
最後に、組織としては、パワハラする人を処分できずに要職に置いているということであれば、それがいかに個人としてハイパフォーマーだったとしても、組織全体に悪影響を及ぼします。多くの部下は暴君が管理職であることを会社が認めている、と理解し、モチベーション・モラルの低下、人材流出のリスクが高まることをご認識いただければと思います。