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プレゼンティーズムの負担が大きい「ある疾患」とは?

プレゼンティーズムとは「心身や体調の調子が悪いにもかかわらず会社に出勤すること」を指す、労働生産性の管理に必要不可欠なワードのこと。
 
前回の記事でプレゼンティーズムについて、アブセンティーズム(会社に出勤しても早退してしまったり、そもそも出勤できなくなる状態)と比較しながら概説していきました。
 
実際にプレゼンティーズムの内訳をみてみると、男性 25%、女性 34%もの方に何らかの症状があります。特に50 歳から 59 歳の労働者は、症状の有病率が最も高く、31%もの方がプレゼンティーズムの症状をきたしているのです。

参考文献1より当社作成
参考文献1より当社作成

しかし中には「プレゼンティーズムをなくすことが社員の健康管理には良いのはわかったけど、具体的にどんなことに注意すればよいの?」と思われた方もいらっしゃることでしょう。
 
そこで、今回はプレゼンティーズムをなくす上で大切な「うつ病と精神疾患の管理」について、解説していきます。

プレゼンティーズムとうつ病・精神疾患について

プレゼンティーズムでの損失を防ぐのに欠かせない疾患の1つが「うつ病」や「精神疾患」です。
 
12,350人を対象とした、プレゼンティーズムそのものの経済損失についての論文があります。

雇用主の調査によると、病気や状態による医療費・薬局費のトップ 3 は、がん、腰痛・首痛、その他の慢性疼痛であり、総費用(医療費・薬局費、アブセンティーズム・プレゼンティーイズム)が最も高くなる状態のトップ 3 は、うつ、肥満、関節炎であった。

参考文献1より当社翻訳
参考文献1より当社作成
参考文献1より当社作成

ここでいう「筋骨格系および結合組織の疾患」というのは、例えば腰痛や肩こりなどのことです。普段からオフィスワークでほとんど椅子に長時間座っている状態が続くと、筋肉の緊張が続くため、慢性腰痛や肩こりにつながります。介護や運送など、人に関わったり重たい物を扱う仕事でも筋骨格系での疾患の発生につながります。
 
一方、精神・行動障害では、例えば人間関係がうまくいっていない時や、チーム行動で不具合が生じた時、ノルマが自分の身の丈にあっていない時などに生じます。そのため、人間関係が発生する職場なら、どの職種でも生じることがあります。またどの職場でもノルマがあるでしょうから、精神・行動障害は身分や仕事内容を問わず起こりえるのです。
 
これらからわかる通り、うつ病や精神疾患に対するケアはプレゼンティーズムを始めとした経済損失を防ぐ意味でも極めて重要といえます。

うつ病・精神疾患がプレゼンティーズムに重要な理由

 では、なぜうつ病や精神疾患の管理がプレゼンティーズムをなくすことに重要になってくるのでしょう。
 
例えば、社員がうつ病になった時の場合を考えてみましょう。
 
うつ病とは、強いストレスなどをきっかけとして、脳の特定の機能がダメージをきっかけとして、物事への興味や関心を失ったり、自分へのポジティブなイメージを持てず、将来への希望を失っている状態のことを指します。
 
特にうつ病では自己肯定感の無さから脳の働きが低下し、仕事だけでなく人生全般に対する意欲がなくなっていきます。
 
そのため、自身の仕事が進まず、やるべき仕事が終わらせられなくなり、それがかえって自己肯定感の損失につながる、という具合に悪循環に陥ってしまいます。
 
それだけではありません。うつ病をきたした方がチームにいた場合、うつ病の方が受け持っている仕事だけ遅れてしまい、チーム全体の遅れにつながってしまいます。さらに、会議の場でもチーム全体の士気の低下やパフォーマンスの乱れにつながるでしょう。
 
これが、うつ病における「プレゼンティーズム」です。こうしたことから、かえって治療に時間がかかっても良いので、会社へのパフォーマンスをあげるためにもうつ病の治療に専念すべきということが言えます。

プレゼンティーズムの第一歩は早期うつ病の発見と精神疾患の管理から

米国における会社の損失は医療費が中心であるのに対して、日本ではプレゼンティーズムが中心であった。

参考文献1より当社翻訳

ここには日本人の根底に「休んでしまうことで会社に迷惑がかかる」「自分が病気だと知られてしまうと、自分の評価や昇進にかかわってしまう」などの意識があり、病気を隠そうとしてしまう傾向にあります。これは精神疾患やうつ病であればなおさらです。
 
本記事で紹介している論文の結びには下記のように示されています。

本研究では、メンタルヘルス不調による健康関連生産性損失が甚大であることを明らかにし、この事実は、産業保健スタッフが病気休職者だけでなく、うつ、不安、睡眠などの症状を持つ労働者に対しても配慮する必要があることを示唆している。

参考文献1より当社翻訳

つまり、これは「もっと会社全体でうつ病や不安障害、不眠症などの精神疾患をサポートする体制が必要」ということです。
 
まずプレゼンティーズムを考えてみる第一歩として、まず普段から「周りにうつ病や不安をかかえている人はいないか」「最近、精神疾患をかかえていない社員がいないか」から考えてみるようにしましょう。
 
そして、気軽に社員が相談でき、精神疾患をサポートできる体制づくりが大切であるといえるでしょう。

参考文献
(1) Nagata T, Mori K, Ohtani M, Nagata M, Kajiki S, Fujino Y, Matsuda S, Loeppke R. "Total Health-Related Costs Due to Absenteeism, Presenteeism, and Medical and Pharmaceutical Expenses in Japanese Employers." J Occup Environ Med. 2018 May;60(5):e273-e280. doi: 10.1097/JOM.0000000000001291. PMID: 29394196; PMCID: PMC5959215.
(2) 厚生労働省ウェブサイト「うつ病 こころの病気を知る



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