
映像でとらえる〜『同時通訳者の頭の中』①〜
同時通訳のトレーニングを手話学習に取り入れる
手話は言語で、手話の学習は語学。
語学を「かじる(決して習得には至らない)」のが好きな私にとって、その感覚は手話を学び始めた頃からありました。今も、手話と並行して、趣味である外国語を勉強しています。
手話通訳士の中にも、韓国語や中国語を学んでいる方がおられます。もしかしたら、語学が好きな手話通訳士はけっこういらっしゃるのかもしれません。
手話通訳の技術も、音声言語の通訳技術を応用して磨いていきたいと考えています。
ここで私が、英語の通訳を目指せるほど英語力があり、日英通訳の訓練を受けたりできればかっこいいのですが、残念ながらそこにはまっったく届きません。
せめて…との思いから、音声通訳者の方の書籍はいくつか読んできました。
その中でも、読みやすく、手話通訳にも通じる部分が多く、けっこう私のカバンの中に入っていることが多いのがこちらの本です。
著者の関谷さんが日々どのように準備して通訳に臨んでいるかが具体的に紹介されており、とても刺激になります。
これから数回に分けて、私がこの本から学び、手話の学習に取り入れていることを綴ってみます。
映像でとらえる
関谷さんは、通訳をしている時に話されていることを「文字」ではなく「映像」でとらえます。
「私」の中は目や耳から得たスピーカーの情報がイメージ(映像)となって浮かび上がり、そのイメージを私は言葉にします。
あぁ、まさに目指してるやつ!
ろう者の手話を映像でとらえ、日本語に訳す。
日本語音声を聞いて映像でとらえ、手話に訳す。
私はこれを永遠に追い求めている気がします。
話者からの話がどんどん展開していき、それを別の言語で表現していく、という作業を行うとき、頭の中で文字で考えていたら、ものごとを高速で処理することは不可能だからです。
通訳というと「言葉から言葉への変換」というイメージを持たれがちですが、それぞれ特色の違う言語を、ストレートに変換することはできないのですね。
そこに共通する「映像(イメージ)」を挟むことによって、それぞれの言語に着地できるのだな、ととても腑に落ちました。
イメージ力とレスポンス力
関谷さんによると、同時通訳者に求められる能力は次の2つです。
・イメージ力(文字や言葉にとらわれず「本質をとらえる力」)
・レスポンス力(相手の言ったことに瞬時に反応して言葉を発していく反応力)
この後、この本ではレスポンス力とイメージ力の鍛え方を、「英語の基本的な学習法」と「同時通訳のトレーニング法」の2つの視点で紹介しています。
本noteでは、この後の投稿で「レスポンス力の育て方」と「イメージ力の育て方」に分けて書いていく予定です。
インプット、アウトプット、継続
英語力をつけるには、この3つのステップを繰り返していくこと。それに尽きるのです。
1.インプットすること
2.アウトプットすること
そして、3.このサイクルを繰り返し継続することです。
インプット
インプットは、英語で言うと「リーディング」と「リスニング」。単語や熟語や言い回し、文法などさまざまな英語の知識を吸収することです。
手話に置き換えると、「読み取り」と「文法の学習」、さらにろう者や手話に関する知識を吸収することにあたるでしょう。
アウトプット
アウトプットは「使う」学習。
英語で言うと「スピーキング」や「ライティング」にあたります。
手話では「手話で話すこと」にあたるでしょう。
インプットとアウトプットの同時並行
英語学習のステップとしては、まずインプットをして文法や語彙、表現などを知り、その後にそれを使うアウトプットの学習、という流れになりますが、関谷さんはインプットとアウトプットを並行して行い、それをバランスよく回しながら継続していくことを推奨しています。
ひとつの単語や、ひとつの表現をインプットしたら、その後に例文を作って言ってみるなどのアウトプット練習をする--このように、インプット、アウトプットを交互にバランスよく勉強するのがポイントです。
手話サークルで
「インプットとアウトプットの同時並行」を読んで、私が所属する手話サークルでの私が好きな学習のことを思い出しました。
サークルではさまざまな学習をしますが、季節ごとに時々おこなう「○○と言えば…」という学習が好きです。
例えば、「春と言えば…」という学習はこのように進みます。
私のサークルは30人ほどいるため、3つの班に分かれています。
①班ごとに、「春」から連想できる単語をなんでもたくさん挙げ、模造紙に書き出します。
②班ごとに、模造紙に書きだした単語を表現します。
③ひとりひとり、春の単語の中から好きな単語を1つ選んで、それを使った短文を作って発表します。
各班にはろう者もいるので、①〜③を通してろう者と一緒に学習します。
②では春に関する単語をインプットし、③で短文を作ることによってアウトプット練習になっています。意識はしていませんでしたが、「インプットとアウトプットの同時並行」をしていました。
これからも、手話サークルの学習を考える時は、「インプットとアウトプットの同時並行」を意識して企画してみようと思います。
インプットとアウトプットを繰り返しながら、「イメージ力」と「レスポンス力」を鍛えていく…。
頑張ります。