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手話通訳士試験(学科)を解いてみました

昨日は祝日だったので、
手話通訳技能認定試験(通称「手話通訳士試験」)の第34回(令和5年7月)と第35回(令和6年7月)の学科問題を解いてみました。
私自身は、第27回(平成27年度)と第28回(平成28年度)を受験しているので、約10年ぶりです。


手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)

手話通訳技能認定試験は、厚生労働省が実施する手話通訳の知識や技能を計る試験で、合格すると手話通訳士として活動することができます。
このnoteをお読みになる方は、手話通訳に関心がある方が多いと思うので、詳細は割愛します。必要に応じて下の試験案内をお読みください。
以前は1泊2日の試験でしたが、今は学科試験が7月、実技試験が9月に行われます。


学科試験

学科試験の過去問は、第15回試験から21年分の問題と回答が公開されています。

科目は、何回かの変遷ののち、現在の形に落ち着いています。

1.障害者福祉の基礎知識
2.聴覚障害者に関する基礎知識
3.手話通訳のあり方
4.国語

合格基準は次のように定められています。

次の条件を満たしたものを学科試験の合格者とする。
全ての科目において得点があり、かつ、その4科目の総得点の60%程度を基準として、必要に応じて問題の難易度で補正した点数以上の得点を得た者。

第35回(令和6年度)手話通訳技能認定試験『受験の手引』より

1科目20問ずつなので、トータル48問正解で60%。少し余裕を見て、50問以上正解していれば合格できそうです。


聞こえない人たちと社会の変化

私は平成29年に手話通訳士となり、機会は少なめですが通訳活動をしています。
手話通訳は、テレビでよく見かける英語等の音声言語通訳とは違い、ろう者に寄り添う「福祉的な立場」も併せ持ちます。言語通訳者であると同時に、ろう者が暮らしやすい社会に向けた運動にも携わる支援者の一面もあるのです。
私自身は、通訳業務の際は言語通訳に徹し、手話サークルや通研、また日ごろろう者と付き合う中で、支援者として動いている感じです。

以前は、音声言語通訳にそのような福祉的な側面はないように感じていましたが、昨今は、日本で働いたり学んだりする外国人に寄り添う音声言語の通訳者もいらっしゃいますね。

日々暮らしていると大して変わり映えしないように見える社会も、刻々と変化しています。
特に、聞こえない人たちにまつわる制度や政策は、彼ら自身が社会を変える運動を押し進めてきた歴史とともに、大きく変化してきました。

厳しく制限されていた職業が広く選択できるようになりました。
運転免許を取得できるようになりました。
テレビ番組に字幕が付き、東京オリンピック・パラリンピックにろう者の手話通訳が付きました。
これらは皆、聞こえない人たちが支援者とともに進めてきた運動の成果のほんの一部です。
手話通訳制度そのものも、聞こえない人たちの運動から実現しました。

私は、初めて手話を学んだ講座でこのようなろうあ運動の歴史を知り、そこからずっと、社会を次々と変えていくろう者のパワーに魅了されています。

情報のアップデート

聞こえない人たちの歴史を学び、社会の日々の変化についていくことは、手話通訳者として欠かせない準備だと思っています。

通訳をする際の精度がまったく違ってくるのです。

日本語を聞いて手話に変換する「聞き取り通訳」でも、
手話を見て日本語に変換する「読み取り通訳」でも、
知っている話題であれば、自然と目標言語(変換する先の言語)を組み立てられますが、知らない話題だと、聞こえてくる、見えてくる一つ一つの単語から、話している内容が見えてこず、いつまでも単語をぽつぽつと変換する、言語としてまとまらない通訳になってしまいます。

幅広い分野の通訳に対応するために、手話関係の団体に所属したり、業界が発行する新聞を読んだりして情報をアップデートしている…つもりでしたが、実は、今回過去問を解いてみて、ヤバいことになっていました。


自己採点結果

第34回
1.障害者福祉の基礎知識……………13点
2.聴覚障害者に関する基礎知識…12点
3.手話通訳のあり方…………………16点
4.国語……………………………………17点
合計  ……58点(72.5%)

第35回
1.障害者福祉の基礎知識……………10点
2.聴覚障害者に関する基礎知識…13点
3.手話通訳のあり方…………………19点
4.国語……………………………………18点
合計……60点(75%)

わぁ、ヤバいヤバい😱
合計点数はなんとかなったものの、
「障害者福祉の基礎知識」と「聴覚障害者の基礎知識」の分野が壊滅的です💦第35回の障害者福祉に至っては、半分しかわかっていませんでした。

中には「あぁ、あの頃勉強したけど忘れたなぁ。」という問題もあれば、まったく知らない情報もありました。
特に、第34回の問題には、試験の前年や同年の時事問題(聴覚障害関連)がたくさん出題されていました。

この試験は、意地悪な出題のしかたはしません。
知っていれば解けるし、知らなかったら解けない。
私が全然アップデートされていなかっただけです。
日々の情報収集の甘さを痛感しました。

日本聴力障害新聞

日本聴力障害新聞(日聴紙)は、全日本ろうあ連盟が発行する機関紙で、私が聞こえない人たちにまつわる情報源としてもっとも頼りにしている媒体です。

今年の試験(第36回)を受験予定の方は、日聴紙を購読されているなら、昨年(令和5年)の日本聴力障害新聞を1年分読み返して、どんなトピックがあったか概観されると、試験対策として有効だと思います。

購読されていない方はぜひ今月から。

今から購読される方でも、バックナンバーについては上記サイトで見出しだけを読むことができます。見出しをチェックして、知らないトピックがあったら調べてみるのも良いかと思います。

これまで私は、毎月1日に日聴紙が届いたら、いったんさーっと流し読み、一応カバンには入れておくものの、じっくり読み込むことなく次の月になり…の繰り返しでした。今年はしっかり読んでいきます。

手話通訳者だからこそ

手話通訳技能認定試験に「合格」するには、全体の60%の問題が解ければ十分です。「試験対策」という視点で見れば、満点を目指すのは時間と労力の無駄で、70%くらい取れるようになったら実技試験対策に切り替えるべきだと思います。

しかし、手話通訳者は別です。
手話通訳者は60%ではいけないと、今回反省しました。

聞こえる人にしろ聞こえない人にしろ、話し手が出した話題を、私が知らないばっかりに正確に聞き手に伝えられないなんてことが起こったらたいへんです。
6割は知ってても、残りの4割の話題だったらお手上げになるのです。

できれば満点。
少なくともどの科目も8割は知っている状態でないと。

1〜3月は、今回解いた過去問をこの本を使って復習します↓

また、手話通訳士協会からは、過去問の解説本も発行されています。1冊1000〜1595円でお手頃です。
現在、第34回までの分しか発行されていませんが、いずれ第35回の本も発行されると思います。


毎年、解く。

学科試験は7月に実施され、8月末か9月頭に問題と正答の発表があります。
今年から、毎年9月は手話通訳士試験の学科問題を解くことにします。
目標は全科目9割。

今年受験予定の方、将来受験しようと思っている方、
私も伴走しながら応援します。

手話通訳士の皆さんも、良かったらご一緒に☺️