冬の小樽
映画【ユンヒへ】を観ました。
雪深い、冬の小樽の住宅街のように、とても静かな映画でした。
雪を踏む音、紙を触る音、猫が喉を鳴らす音、煙草を吸う音などが印象的で、気温や質感や匂いまでもを彷彿とさせます。
小樽で長く生活している私にとって馴染みのある街並や、薄曇りの青暗い雪道が映画の背景として美しく生かされていて、監督が“冬の小樽”に相当拘って撮ったことがビシビシ伝わって来ました。
ユンヒとジュンは、お互いのことを他者に説明するとき、“友達”と表現していました。2人の学生時代の付き合い方は具体的に描写されてはいないものの、ジュンがユンヒに撮ってもらった昔の自分の写真をフォトスタンドに入れて飾っていることや、小樽運河で突然再会したときの様子から、お互い誰よりも特別に想っていることが十二分に伝わります。
こう、具体的な描写や言葉で誰にでも簡単に分かるように撮らない感じ、すごく好きです。
ジュンの従兄弟が『なんで結婚してないの?』『紹介しようか?』って言ってくる感じ、同じことを言われた経験は無いけど、めっちゃイラッとした(笑)
髪をばっさり切っただけなのに『失恋でもしたの?』って言われて、まず私にそんな相手はいないし、あんたの物差しで人のやる事なす事の意味を決め付けんなって思ったことはある。
ユンヒの娘セボムとジュンの伯母が、ユンヒとジュンを家族として大切に想っている感じがすごく良かった。セボムとその彼氏も素朴で好感が持てる。
ユンヒもジュンも、黙って煙草を吸う様がとても絵になる方々でした。ほつれた髪の毛すらも絵になってた。美しい方々だ…
“趣味は映画を観ること”では全く無い私ですが、“好きな映画”はいくつかあります。この映画もリスト入り決定です。
ただ、『すごく良いなぁ』と思った作品を周りの人にも是非観て欲しい!感想言い合いたい!と、あまり思わないんですよね。何故なら作品の感想を聞いてその人の感性にがっかりする事が結構あるから。こうして私という存在は1人で勝手に熟成されていく……