2024年4月から始まった医師の働き方改革とは
医師の働き方改革とは
「医師の働き方改革」とは、医師の長時間労働を是正し、医師個人の健康を守りながら、持続可能な地域医療体制を確立することを目的とした制度改革です。2021年5月に公布された「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」を根拠として、2024年4月から施行されています。
従来、日本の医療は医師の長時間労働によって支えられてきました。しかし、近年の高齢化の進行や医療ニーズの変化、医療の高度化により、個々の医師に求められる業務が増え続けています。その結果、医師自身の健康状態の悪化や労働意欲の減退などを招き、患者さんにも十分な医療を提供できなくなるという懸念が高まっていました。
そこで、医師の労働時間に上限を設け、健康管理を徹底することで、安全で質の高い医療を提供できる環境を整備しようというのが「医師の働き方改革」の背景です。
医師の長時間労働の実態
医師の長時間労働は、日本の医療現場で長年にわたり深刻な問題となってきました。
全国の病院の常勤勤務医を対象とした調査では、1年間の時間外労働時間が960時間を超える医師が約4割存在し、約1割の医師は年1,860時間、つまり月平均155時間を超える時間外・休日労働を行っているという過酷な労働実態が明らかになりました。中には1か月に200時間を超える長時間労働に従事する医師もいます。
このような長時間労働は、単に医師個人の健康リスクを高めるだけでなく、過労から集中力が低下すれば、医療ミスや患者さんの命に関わるような重大な事態にも繋がりかねません。また、患者さんの診療に専念する時間が増えることで、自己研鑽の時間を確保することも難しい状況にあります。結果として、医療の質の維持・向上にも支障をきたす可能性があるのです。
さらに、医師が働く医療機関の中には36協定の締結が行われていなかったり、客観的な時間管理が行われていないような労務管理が不十分な医療機関も存在します。
こうした医師の過酷な労働環境は、若手医師の離職の一因にもなっており、ひいては医師不足をさらに加速させかねない危険な悪循環に陥っているとも指摘されています。
そのため、医師の長時間労働是正は喫緊の課題とされ、今回の医師の働き方改革の狙いとなったのです。
医師の働き方改革の詳細
前述の医師の長時間労働の実態を受けて、2024年4月から医師の働き方改革が本格的にスタートします。この改革では、具体的に以下のような新たな制度が導入されます。
■時間外・休日労働の上限規制
医療機関の役割や診療科の特性に応じて、医師の時間外・休日労働に以下の5段階の上限が設けられます。
A水準(年960時間)
診療に従事する全ての医師が対象となる上限規制で、臨時的な長時間労働が求められる場合の原則的な上限です。
連携B水準(自院960時間、通算1860時間)
地域医療確保のため、複数の医療機関で勤務する医師に適用される上限規制で、2035年度末までの暫定的な特例水準とされています。
B水準(年1860時間)
救急医療提供体制、及び在宅医療提供体制の確保のため、三次救急医療機関や救急車を年間1,000台以上受け入れる二次救急病院などにおいて、長時間労働が求められる医師に適用される上限規制です。B水準も2035年度末までの暫定的な特例水準とされています。
C-1水準(年1860時間)
臨床研修医・専攻医が、研修プログラムに沿って基礎的な技能や能力を修得する際に適用される上限規制です。
C-2水準(年1860時間)
医籍登録後の臨床従事6年目以降の医師が、高度技能の獲得を目指すために、医師が自らの発意により計画を作成し、審査を受けたうえで適用される上限規制です。指定された医療機関で診療に従事する際に適用されます。
■面接指導の実施
時間外・休日労働が月100時間を超える見込みの医師には、面接指導を行い、健康状態を確認することが新たに義務付けられます。また、その結果、必要と認める場合には労働時間の短縮や宿直の回数の減少など労務管理上の措置を講じなければなりません。
■勤務間インターバルの確保
医師が十分な休息を取れるよう、連続勤務の間にインターバル(休息時間)を設けることが求められます。具体的には、通常の日勤及び宿日直許可のある宿日直に従事する場合は、始業から24時間以内に9時間の連続した休息時間を確保すること、宿日直許可のない宿日直に従事する場合は、始業から46時間以内に18時間の連続した休息時間を確保すること、というものです。また、長時間の手術や急患対応等のやむを得ない事情により、勤務間インターバルを実施できない場合は代償休息が付与されます。
■多職種による役割分担(タスク・シフト/シェア)の推進
医師の労働時間の長時間化の一因は、医師への業務の集中にありました。そこで、医師の業務のうち、他の職種に委ねることができる業務の移管(タスク・シフト)や、複数の職種での業務の分担(タスク・シェア)によって、医師の業務量を減らし、医師が本来担うべき高度な医療業務に専念できる環境を整備することが推進されています。
このように、時間外労働の上限規制と健康管理の徹底、多職種連携による役割分担の3つを柱とした法改正により、医師の長時間労働の是正や健康確保を通して、質の高い医療を効率的に提供できる体制の確立を目指しているのです。
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令和4年度の厚生労働省の調査では、医師の時間外労働の理由として、37.8%の医師が「業務上必要とされている委員会・会議・勉強会・研修会等への参加」を、17.3%の医師が「上司の指示のある学術活動(学会発表の準備や研究等)」を挙げていました。
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医師の働き方改革には、医師や医療従事者だけでなく、患者の方々やその他医療に関わる全ての方が一丸となって取り組んでいく必要があります。
メネルジアとしても、少しでも医療従事者の労働環境の改善に貢献できるよう引き続き努力してまいります。