小説を書いた
タイトルの通りだ。
小説を書いた。原稿用紙換算で280枚ほど。
新潮社の新井久幸によれば長編として出版できる最低限の枚数が250枚であるというから、ギリギリ長編と言えよう。
書きながら思った。これは大変だ、と。
大変だったのは、私がそれを9月16日の夜から書き始めたからだった。
せっかく書くならば新人賞に投稿しようと思っていた。そしてそのウェブ投稿締め切りが、9月30日だった。
つまり書き始めた時点で、猶予はちょうど二週間しか残っていなかった。
賞の規定によると、原稿用紙換算でおよそ250枚が必要だった。
つまり、一日10枚以上のペースで書くことが求められていた。
また、それ以上の枚数になったとして、小説としての体裁を保っていること、すなわち物語が完結していることは最低条件だった。
これは大変だ。これは大変だ。
そう思いながら、キーボードの上で指を動かした。
なんとか間に合ったのは、私が休職中だったからに他なるまい。
9月3日にオフ会をした。
その人とは、小説のことについて話をしましょう、と事前に言っていた。
読む方の話かと思いきや、少しばかり、書く方の話もした。
その際に私は、「いやあ、賞には間に合わないし、書かないかなあ」などと言っていた。
せめてあの日にでも心変わりをしていれば、と思ったが、あいにくそれは、そこから10日以上待たなければ訪れなかった。
そして今、なんだかあのとき嘘をついたようで少しだけ申し訳なさを感じている。いや、そんなこと、どうでもいい話かもしれないけれど。
書き終えてみて、そもそもなぜ書こうと思ったのか、いまいち判然としない。
もちろん、私のなかにはずっと小説を書きたいという気持ちはあった。
もっと言えば、それでお金を得てみたい、という思いも。
小説等なにかしらの文章を読むことを趣味とする/したことがある者ならば、売文業や執筆に憧れるのは当然という者だろう。
そしてそれは私もそうだった。
しかし、今回の場合、この作品を書こう! とか、こういうことを書こう! という強い思いがあったわけではなかった。
ただ、締め切りを前にして、あのアイデア、この形ならつながるな、という糸口だけあって、あとはそこから伸びる糸を辿るようにして書いていたら、なんか書けていた。
「なんらかの力によって書かされた」とでも表現すれば一丁前に聞こえるが、結局のところ、特に能動性なく、「でも、どうせ休職中暇だし、転職活動する気にもならないし」で、選んだことだった。
達成感がないかと言われれば嘘になる。
しかし、書き終えたあとでも、書いたのかどうか実感が湧かない。
それよりも、「ああ、9月が終わったのか」という気持ちの方が強いくらいだ。
こんな内容だから、私と同じくワナビーである人になんらか役立つ情報を提供できるとも思っていない。
また、書けない不安を共有するものでもないことを申し訳なく思う。
それに、この記事の読みごたえにも、私はまったく自信がない。
しかし、「なんか書いちゃったよ……」という感情をどうにか整理したくて、かようにエディタを開いたのである。
(さすがにパソコンで書くものに対し、「筆をとった」は、比喩表現とはいえ使うのが小恥ずかしい)
取り止めのないテキストにお付き合いいただき、申し訳ない。
私は小説を書いた。
10月はなにをしようか。
生意気にも、燃え尽き症候群みたいに、やりたいことが見つからない。
海にでも行ってみようか。
京都にでも行ってみようか。
まあ、そろそろ人生をどうするのか、ちゃんと考えないといけないんだけども。あー、人生面倒くさいな。
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