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【モービウス】「古き良き超人映画か?時代遅れの超人映画か?」

・SSUシリーズ最新作「モービウス」を鑑賞して参りました。嫌でも前評判が色々と目に入るもので、鑑賞前から大体はお察ししていましたがまあ普通の映画でした。そう、良くも悪くも普通の映画であり、多くの人の期待を超える事は決して無い映画であったと言えます。

・内容としては様々な作品で延々と擦られて来た王道的なプロットであり、正に普遍的な超人映画の象徴とも称すべき作りとなっている。全体的にMCU以前のマーベル映画やアメコミ外を例に挙げれば「ダークマン」「ザ・フライ」「インビジブル」等の常人から変貌してしまう苦悩を描いた作品を彷彿させるそういう映画であった。

・人助けに尽力する優しき博士マイケル・モービウスはとある治療薬開発の失敗により吸血鬼へと生まれ変わる。その中で大きな主題となるのが親友マイロとの対立だ。幼い頃から同じ病気を抱える2人は苦楽を共にした固い友情で結ばれていたが、治療薬の誕生により2人の関係性は大きく揺らぎ始める。

・個人的な趣向からすると親友と対立する構図は滅茶苦茶好みな設定の一つだ。この部分が作品を楽しめた要因の一端を担っていると言っても過言ではないだろう。しかし、ヴェノムシリーズにも通じるのだがSSUでは重大な問題点が繰り返され続けている。それは同族対決に対する飽きだ。

・ヴェノム二作品も根本的な部分ではシンビオート対決の繰り返しであるし、はっきり言ってモービウスもヴェノムの一作目と同様の構成だ。ヴェノムシリーズは元々のキャラ人気やバディムービーとしての側面が成立しているからまだ魅力は勝るが、モービウスに関してはそれを上回るポテンシャルの魅力に欠けていたのが事実であろう。

・映像面ではやり過ぎなぐらいの過剰エフェクトCGアクションがこの作品の特徴となっている。正直、スローモーションでコミック的に魅せる演出は使い古されているとは言えカッコいいし見応えはあります。しかしながら地下鉄で電車が来る前のCGシーンはシュール過ぎて笑ってしまいましたがね。

・SSUは挑戦を恐れ過ぎていると感じるのが本音です。個人的にはアメスパシリーズも嫌いでは無かったのですが、あのシリーズを継続出来なかった問題点を未だ尚引っ張っているのは些か残念だ。特に今はMCUシリーズが大きく台頭し、こちらのシリーズは飽くなき挑戦を続けているのだからどうしても対照的な目線で評価されるのは避けられないだろう。賛否両論ある「エターナルズ」や映画史に残る「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」は挑戦作の最たる例だし、公開を目前にした「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」も意欲作になる事は間違いないだろう。こういう状況でSSUをMCUに対抗して制作していくには冒険心が足りないと思うのです。

・勿論、普遍的な作品を否定する訳でも無く、その様な映画を愛するB級映画好きを自負するいち映画ファンとしてはジャンキーな好物だと言えます。が、SSUは折角スパイダーマン関係の映画化版権を得ているにも関わらず宝の持ち腐れになりつつある現状はどうしても憂う物だ。いっそのこと主人公をキチンとヴィランとして描く作品を制作すればスカッとすると言うのに。ヴィランをダークヒーローとして描き観客の同情心や共感性に寄り添うのは大衆映画の姿勢の観点からは正しいのだが、似たり寄ったりの作品を量産するより悪を大々的に描き切る脚本の方が間違いなくファンウケする筈だと思うのだが。このままの作りを続けていつか「シニスター・シックス」が実現しても、DC映画の「スーサイド・スクワッド」の模倣にしかならないのでは無いか?

・そして「モービウス」最大の失敗は予告編とそれに連なるポストクレジットだ。確実にこれは作品の評価を少なくとも5倍は下げただろう。映画に期待した人達は皆裏切られた気持ち、詐欺にでもあった気分になったであろう。展開の無理矢理さもそうだが、サプライズがサプライズになっていない異常さは凄まじい。ある意味でこれは挑戦的であったのかもしれない。かなり最悪な方の挑戦である…。これが無ければヴェノム同様にうーんまあまあ面白い映画だったねで終わったかも知れないが、これは絶対的な失敗だ。最悪内容がこのままでも予告編であんな真似をしなければ、ファンウケも良かっただろうに。

・この様な事柄から洗練されていない突貫工事的な制作方針が見え透いて萎えてしまう人達も溢れかえるのは当然だ。この件に関してはコロナ禍により、公開が遅れに遅れたのが特に災いしたのだろうと推察出来る。時代の状況の変化に揉まれたのは運が無いと擁護出来るが、それでもう少し何とか出来ただろうとは確実に思う。

・「モービウス」は今後のSSUシリーズのターニングポイントになるのは間違いだろう。しかし果たしてそれは成功か失敗の道のりを辿るのかは分からない。このまま迷走を経てまた企画が頓挫するのか、観客を納得させる新しい作品を生み出せるのか、勝負所だろう。恐らく次回作になるだろう「クレイヴン・ザ・ハンター」が同じ轍を踏まない事を願うばかりだ。

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