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【TBT~名画の旅~】マコーレー・カルキンのキャリアに転機をもたらした『おじさんに気をつけろ!』
「スローバック・サーズデイ(ThrowBack Thursday)」略して「TBT」……ここ数年、SNSでよく見かける文言だ。これは「木曜日に過去を振り返ろう」という意味が込められたスラングで、何も予定のない木曜日だからこそ、懐かしい瞬間にタイムスリップしようじゃないかという何とも粋な取り組みである。
世の中には名画と呼ばれる作品がいくつも存在している。しかしながら、世間で有名な作品だけが名画とは限らない。中には隠れた名作というのも数多い。ここでは、「TBT」にかこつけて、そんな眠ったお宝映画を紹介していく。
天才子役。
芸能の長い歴史においてそう呼ばれた子役俳優たちは世界中に数多く存在したが、ワールドワイドな人気子役としての地位をほしいままにし、一世を風靡した子役というのは数えられる程度しかいない。
その筆頭として間違いなく名前が挙がるのが、1990年の映画『ホーム・アローン』で大ブレイクを果たした、マコーレー・カルキンであろう。
老若男女とわず一度は聞いたことがある名前だと思う。いまなお世代を超えて愛されている『ホーム・アローン』の‘‘あの子’’と言っても通じることだろう。
そんなカルキンが、1990年に『ホーム・アローン』で世界的な人気を獲得する以前に出演した、あるコメディ映画を紹介したい。
監督を務めるジョン・ヒューズという男
1989年公開の映画『おじさんに気をつけろ!』で、監督・脚本・製作を務めたのは、ジョン・ヒューズである。
ヒューズと言えば、『ブレックファスト・クラブ』(1985)や『フェリスはある朝突然に』(1986)といった学園映画で名を上げ、80年代を代表する青春映画の旗手として名を知られているフィルムメーカーだ。
そんなヒューズは、当時のティーンたちが既存の体制に抗議し、青春を謳歌しようとする様を描き出すことに長けた映画監督であったが、同時にコメディ映画でも抜群の手腕を発揮していた。
その最たる例が、1987年に公開されたコメディ・ロードムービー『大災難P.T.A.』である。
同作で、スティーヴ・マーティンやジョン・キャンディといったコメディ俳優たちの実力を引き出すことに成功したヒューズは、1989年に『おじさんに気をつけろ!』を製作した。
『おじさんに気をつけろ!』あらすじ
突然の病で倒れてしまった祖父の元に向かうことになったラッセル家は、反抗期の長女ティア(ジーン・ルイザ・ケリー)、幼い長男のマイルズ(マコーレー・カルキン)、次女のメイジー(ギャビー・ホフマン)を残して、父と母だけで自宅を離れることに。
子供たちの面倒を見てもらうために、白羽の矢が立ったのは、叔父のバック(ジョン・キャンディ)だった。しかしバックは、いい年こいて手に仕事はなく、独り身で、自由気ままな生活を送っている男だった。
この破天荒な性格が災いしてか、親戚一同からも相手にされていないバックは、彼らの両親が帰ってくるまでの間、3人の子供たちの面倒をしっかりと見なくてはならない。
ヒューズ作品らしい力強いメッセージ
本作は、ひょんなことから自宅にやって来た風来坊の叔父と思春期ティーンの姪っ子が交流を通して、人間として成長していく姿を描いている。
ガサツで品がない叔父のバックは子供の面倒を見たことなど一度もないような男。そんな彼が姪のティアの言動に手を焼く姿が小気味よく、またティアもティアで、家族への愛の裏返しとして反抗的な態度を取っており、事あるごとに歯向かってくるような性格で、彼らの掛け合いが常に歯がゆい気持ちにさせるのだ。
何かと感情的になりやすく、常に目に留めておかないと、取り返しのつかないことをしかねない年ごろの姪を過保護に面倒を見続けるバックとそれを嫌うティアが、物語のラストで心を通わせ、お互いに人間として成長していく様は、とてつもない感情移入を誘う。
また、本作にはなんともジョン・ヒューズらしい部分もある。それは、次女のメイジーの件で学校に呼び出されたバックが、副校長と話をするシーン。副校長からメイジーは「悪い卵」だと言われ、教育上において「よくない発想」の持ち主であると告げられたバックは、「子供の自由を奪うような教育はおかしい!」と異を唱える。
これは、『ブレックファスト・クラブ』や『フェリスはある朝突然に』で描かれた「既存の体制への対抗」であり、ホームコメディでありながらも、ジョン・ヒューズの力強いメッセージが込められた作品でもある。
ブレイク前のマコーレー・カルキン
本作は、主演のジョン・キャンディをはじめ、魅力的なキャストが顔を揃えているが、やはり大注目なのは、ラッセル家の長男マイルズ役を演じるマコーレー・カルキンであろう。
本作が公開されたのは、カルキンにとっての出世作『ホーム・アローン』が公開されるおよそ1年前の1989年のことである。
それまでいくつかのCMや映画でキャリアを積んでいたカルキンにとって、初の大役となったのが、この『おじさんに気をつけろ!』なのだ。
キャリアの浅い当時9歳の子役であるが、その存在感はピカイチで、どこか『ホーム・アローン』を彷彿させる場面もある。
思うに、本作での演技がのちの『ホーム・アローン』主演を決定づけたと言っても過言ではなく、まさに彼にとってのオーディション用素材として何らかの効果を発揮したことは間違いなさそうだ。
つまり『おじさんに気をつけろ!』は、マコーレー・カルキンがブレイクを果たすための足掛かりとなった作品なのである。
もちろん、カルキンの実力を引き出しているのは、主演のジョン・キャンディであって、彼の名演技も忘れてはならない。
1980年代を代表するコメディ俳優の一人だったキャンディのどこか憎めない悪戯っぽい表情の数々が存分に発揮され、なんとか良い叔父であろうとする姿がとても感情移入を誘う。間違いなく彼にとっての代表作である。
1994年に43歳という若さでこの世を去ってしまったことが非常に残念で、もっと彼のユーモアたっぷりの演技を観たかったと改めて実感させられる次第である。
マコーレー・カルキンの俳優キャリアにおいても重要なポイントとなった、ジョン・ヒューズ監督による『おじさんに気をつけろ!』。
ソフト化もされているため、比較的簡単に鑑賞することができるだろう。
(文・構成:zash)
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