【Actor's File vol.5】『S.W.A.T.』シェマー・ムーアが歩んできたNo.1海ドラ俳優への道
海外ドラマ人気が日本で高まり始めてから、ハリウッドのスターとは異なる「TVの中の人気スター」が数多く誕生してきた。
古くは『ナイトライダー』のデヴィッド・ハッセルホフや『フルハウス』のジョン・ステイモスといった俳優が人気を博し、近年では『プリズン・ブレイク』のウェントワース・ミラーや『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』のマイケル・ウェザリー、『クリミナル・マインド』のマシュー・グレイ・ギュブラーがその系譜を受け継ぐ存在である。
海外ドラマで人気を博し、その後のキャリアを決定づけた俳優は多いわけだが、中でも忘れてはならない存在がもう一人いる。
奇しくもギュブラーと同じく『クリミナル・マインド』に出演し、世のマダムたちの注目を一身に集めた、シェマー・ムーアである。
現在、アクション・ドラマ『S.W.A.T.』で主演を務めている彼のキャリアを改めて振り返ってみよう!
1970年代、人種差別が色濃く残るアメリカに生まれる
シェマー・ムーアは、1970年4月20日アメリカ・カリフォルニア州オークランドで、アフリカ系アメリカ人の父とアイルランド人とフランス系カナダ人の血を引く母のもとに生まれた。
彼の母はシェマーがまだ生後6か月の頃にデンマークへと移住し、数学教師として働きながら、シェマーを育て上げた。その後、母子はバーレーン王国へと移り住み、シェマーは7歳になるまでイギリス系の私立校に通っていた。当時のアメリカは未だ人種差別が色濃く蔓延っており、安全に豊かな生活を送るために、外国の生活を選んだのだという。
ちなみに両親は離婚しており、父親は日本人女性と再婚し、神奈川県で暮らしている。
1977年、アメリカへと帰国したシェマーは、カリフォルニア州の日差しの元、逞しく成長していく。
サンタクララ大学でコミュニケーション学を専攻しながら、モデルとしても活動。ショービジネスの世界に興味を抱くようになり、1995年にコメディ・ドラマ『Living Single(原題)』で俳優デビューを飾った。
2000年からは、70年代より続く長寿音楽ダンス番組『ソウル・トレイン』で司会を務めるようになり、お茶の間の人気者となった。
『クリミナル・マインド』での大躍進!
その後、2002年からはDCコミックス原作のTVシリーズ『ゴッサム・シティ・エンジェル』に出演するようになり、同作がシェマーにとっては初のレギュラー作品となった。
同作はDCコミックスに登場するハントレスやオラクルといった女性キャラクターを主人公に据えた作品。シェマーは、近未来のゴッサム・シティであるニュー・ゴッサムで、刑事として様々な事件を解決へと導くジェシー・リース役に扮した。人一倍正義感が強く、超能力を秘めたメタヒューマンたちが関与する事件にも真っ向から立ち向かっていくキャラクターを好演したシェマーは、持ち前のセクシーな魅力とカリスマ性で視聴者から好評を集める。
1シーズンのみの放送で幕を閉じる残念な結果となってしまったが、同作でのパフォーマンスがその後のキャリアの足掛かりとなったことは言うまでもない。
初のレギュラーを掴んだこの時、シェマーはすでに32歳だった。意外にも遅咲きの俳優なのである。
そんなシェマー・ムーアという俳優にとって、間違いなくキャリアのターニングポイントとなった作品は、2005年放送開始の犯罪捜査ドラマ『クリミナル・マインド』であろう。
『クリミナル・マインド』は、FBI行動分析課(BAU)の面々がアメリカ全土で巻き起こる凶悪犯罪に敢然と立ち向かい、犯罪者のプロファイリングを行うことで事件解決へと導いていく様が描かれる。
シェマーはBAUの中でも肉体派捜査官の印象が強いデレク・モーガン役を演じた。常にセクシーな魅力を振りまきながらも、誠実な性格の持ち主であるモーガンは、シェマーにとってまさにハマり役だった。
三十代中盤から‘‘四十不惑’’へと向かう時期に、俳優としての飛躍を遂げたシェマーは、新たな挑戦を試みるために、2017年、『クリミナル・マインド』を降板することを決意。
さらなる飛躍を遂げることになるのだった。
『S.W.A.T.』でTVドラマ初主演!
『クリミナル・マインド』降板直後となる2017年より米CBSで放送が始まったアクション・ドラマ『S.W.A.T.』にシェマー・ムーアは主演していた。意外にも、同作がシェマーにとって初の本格主演となったわけだ。
『S.W.A.T.』は、1975年のTVドラマ『特別狙撃隊S.W.A.T.』を現代的にリメイクし、「ワイルド・スピード」シリーズなどで知られるジャスティン・リンを初めとしたアクション描写に定評のある監督たちが魅せる大迫力の銃撃戦やカーチェイスなどが魅力の作品である。
シェマーが演じるのは、ロサンゼルス市警の精鋭チームS.W.A.T.を率いるダニエル・’’ホンドー‘‘・ハレルソンだ。チームメイトからも、住民からも厚い信頼を獲得している頼れる男である。
かつて『クリミナル・マインド』でもそうだったように、同作でもシェマーは、ひたすら限界ギリギリのアクションを披露し、持ち前のキラースマイルも健在。男子の心を熱くさせ、女子のハートを掴んで離さないのである。
そんなシェマー演じるホンドーも、シーズンを重ねるごとに大きく変化しており、シーズン4では‘‘父親’’としての側面も垣間見せる。息子同然に育てるダリルを守ろうとする姿は、視聴者にどこか安心感を与える。
シェマー自身も五十代を迎えて、俳優としてさらなる進化を遂げている印象である。
2022年からは映画「ソニック」シリーズでも活躍している、シェマー・ムーア。
紆余曲折の俳優人生を送り、四十代にして、ようやく初主演の座を手にし、栄光のNo.1海ドラ俳優の地位を獲得したと言っても過言ではないだろう。
常に挑戦し続ける彼のキャリアは、未来永劫輝き続けることだろう。
(文・構成:zash)