北風と太陽
北風と太陽の話が大好きだ。私の人生の基盤になっていると言っても良いくらい気に入っている。
力尽くでも上手くいかない案件を工夫一つで成功させる。その上誰も傷つけない。こんなうまい話があるのだったらどんどん取り入れた方がいいと思っている。
ちょっと本来の寓話とは違うかもしれないけれど、最近我が家で成功した話。
1歳半のチビはローテーブルに登りたがる。そこに登ると、ポットなどの危険な物に手が届くようになってしまうので、登っては降ろし、また登っては降ろす。そして最後はお互いに怒る。
また、ローテーブルの側面は引き出しが付いていて、そこも開けたがる。引き出しにはハサミやペンなどがすぐ使えるようにしまってあり、これも危険なのでガムテープで塞いでいる。
登らないようにチクチクした素材のマットを敷こうかと夫と話し合ったけれど、生活に支障が出るので断念。その一方で引き出しの開け閉めを巡ってまたチビと喧嘩になる。
ある時名案が浮かんだ。そんなに引き出しが好きなら、もう完全にチビにあげようと思ったのだ。文房具はすぐ取り出せなくなるけれど、もともとガムテープの封印を解き、チビの注意を逸らせて…なんてやっているので、取り出しにくい事に変わりないのだった。
引き出しを空にして、最近出していないおもちゃや、まだあまり読ませていない本を入れておく。珍しい物が入った秘密の引き出しが完成した。いつも引き出しを開ける度にやめさせていたチビに、もうここはチビのものだよ、好きなだけ開けていいよという。この瞬間がたまらなく清々しい。嬉しそうに開けるチビの前に、おもちゃや絵本が飛び出した。夢中で取り出して遊ぶ。そしてこれは新たな効果を生んだ。チビがテーブルに登りたがった時に、引き出しに誘導するとそちらに夢中になるので、更に喧嘩が減ったのだった。
育児は思うようにいかない事だらけで、つい怒ってしまうことが多いけれど、これからも北風と太陽の寓話を心に留めておきたいと思う。