あの日手をつないだ、ユズのこと
ユズに会いたい。
ユズは大学の伝統芸能のサークルで一緒だった。
初め、私はユズが大嫌いだった。抑揚のない声で淡々と喋り、たまに私を小突く。サークルで披露する技術は私より優秀で、大学の成績は同じくらい。
ある日、ユズがまた私を小突いた時に、やっと私はそれが彼女の愛情表現であることを知った。確か、知り合って1年半経った、学園祭の時だったと思う。
そこからはいつもユズと一緒だった。私はボケ、ユズはツッコミの夫婦漫才のような日々が続いた。
ある日、稽古の帰りにユズがポツリと言った。
「手、繋ごうよ」
私は躊躇うことなく彼女の手を握った。彼女は少しびっくりしていた。でも、私は彼女の愛情に応えるためには当然だと思っていた。
特に二人の関係は変わることなく卒業した。卒業後、一度だけ会った。3年くらい前になると思う。ユズは同じ職場で恋人が出来たと教えてくれた。少し照れたように口籠ったので、聞き取りづらかったのだけど。
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