ChatGPT: もっと深くケインズを語らせる②_2305
overview
以下の投稿では、ChatGPTに、こちらの意図する洞察を語らせることができるかを検討した。いくつかの課題が見えたので、本投稿では、その課題の解決を検証してみる。
orientation
前回の「ChatGPT: もっと深くケインズを語らせる」のPracticeで問題は以下の点であった。(詳細は、前回の投稿を参照)
問題点⓪:Queryで提示したGrain(知の単位)が、回答では使われなかった。
ケインズの言葉(Grain)である「長期的には我々は皆死んでいる」というフレーズが、ChatGPTの回答の流れに沿っていなかった。
問題点①:GDPの三面等価の恒等式が、ケインズの式と記述されている。これは、Queryの指示ミスと言える。具体的に、正しく、記述することが必要と判断
問題点②:「この関係を考えると、財政赤字の発生は過剰貯蓄の問題を緩和する効果があります。」の記述が、「GDPの三面等価の式」と、「財政赤字の発生と過剰貯蓄との関係」を、説明するのに、論理の結びつきが弱く、説得力がない。
で、考察として、以下を考えた。
論述の目的は、先人の知をベースに、自己の発見 Discovery を追加して、洞察 Insight、主張 Opinion を述べることである。
ChatGPTは、「百科事典的知」を記述してくれるが、それは、先人の知であり、ChatGPTは、新たなDiscovery を記述してくれない。
Query Structures
Queryモデルとして、以下を、意識して、構成してみる。
目の前にあるJTBD (Job To Be Done)
あわせて、Desired Outcomesも提示
その状況を含めたScene
あわせて、Scenario
ChatGPTに使ってほしいGrains (知)
上記の内容をもとに、Query (Prompt) を見直す。
見直し点
問題点⓪:「長期的には、我々は皆死んでしまう」のフレーズを引き出すために、直近の経済状況を対処する治療策として、財政支出をするべきである、というこちらのScenarioをQuery文に埋め込む
問題点①:提供した式に、正しい名称(GDPの三面等価の恒等式)をつける。
問題点②:GDPの式の名詞と、ケインズの論述側の名詞を結び付けられるように、表現する。
Q: ケインズに基づくと財政赤字は、問題とする必要はないか?
ChatGPT Answer
ケインズ経済学の視点から、財政赤字の発生は問題ないと言えます。以下にその理由を説明します。
ケインズは、経済が停滞する可能性や不況に陥る可能性を指摘しました。その要因の一つが、過剰な民間貯蓄(S)です。民間貯蓄が計画された民間投資(I)を超えている場合、経済は停滞し、不況が生じる可能性があります。この状況では、民間投資が不足しているため、景気回復や経済の活性化が必要です。
この問題を解決する手段として、ケインズは政府支出(G)を行うことを提唱しました。政府は、景気後退時に財政政策を活用し、需要を刺激するために支出を増やすことができます。これにより、民間投資の不足を補い、景気回復を促進することができます。
財政赤字は、政府支出(G)が政府徴税(T)を上回る状況を指します。ケインズの恒等式を考えると、政府支出(G)から政府徴税(T)を差し引いた値は、民間貯蓄(S)から民間投資(I)と純輸出(NX)を差し引いた値に等しくなります。
(G - T) = (S - I) - NX
したがって、財政赤字は過剰な民間貯蓄(S)と民間投資(I)の差額を埋めるための手段となります。財政赤字によって政府支出が増えると、民間投資不足の問題を解消することができます。これにより、景気回復や経済の活性化が促進される可能性があります。
ケインズは、「人々が月を欲するために、失業が発生する」と述べています。つまり、需要不足が生じると、企業は生産を抑制し、失業が増加します。財政赤字による政府支出増は、需要を喚起し、企業の生産活動を刺激することで失業問題を緩和する効果が期待できます。
(問題点③)また、ケインズは「長期的には我々は皆死んでいる」と述べました。これは、短期的な景気刺激策や財政赤字に焦点を当てていることを意味しています。ケインズは、景気回復や雇用の創出が優先であると考えており、それが経済の長期的な持続可能性を確保するための基盤となると主張しています。
したがって、ケインズ経済学の視点からは、財政赤字の発生は問題ないと言えます。財政赤字による政府支出増は、民間投資不足を補うことで景気回復や経済の活性化を促進し、失業問題を緩和する効果が期待されます。ただし、長期的な持続可能性を考慮する際には、適切な財政政策のバランスや借金の増加に対する懸念も考慮する必要があります。
Discussion
以下、Query改善の結果を考察する。
問題点⓪:「長期的には、我々は皆死んでしまう」のフレーズを引き出す
=>改善OK:ただ、文章が長くなったためか、「人々が月を欲するために、失業が発生する」の説明が端折られて、前回の回答にあり、強調したい部分が消えてしまいました。
問題点①:提供した式に、正しい名称(GDPの三面等価の恒等式)をつける。
=>改善NG:GDPの三面等価の恒等式という表現にミスがあるのか、なかなか式の名称を正しく使ってくれません。
問題点②:GDPの式の名詞と、ケインズの論述側の名詞を結び付けられるように、表現する。
=>改善OK:Queryの提示した民間貯蓄(S)、民間投資(I)、政府支出(G)を、回答の中で一貫して使ってくれて、各々の関係が文章として、明示的になりました。
概ね、想定していた改善はされました。ただ、以下、論述のつながりが気になります。
問題点③:「人々が月を欲するために失業が発生する」を説明するパラグラフと、「長期的には、我々は皆死んでしまう」を説明するパラグラフの内容が、文章全体としての流れがなく、唐突に、現れていると感じます。
本投稿のPracticeでは、Query側の表記ゆれなどを改善することで、問題解決をすることができました。
ただ、Queryを改善すると、想定していた文言が消えたりしました。しかし、Regenerate Responseすることで、書いてくれたりします。Regenerateすると、違った構成で書かれます。この辺は、Outcomeを意識して、目次構造を提示して、文章生成させる等が良いと思われます。(Regenerateしたものは、参考に、下の方に張り付けておきます)
Conclusion
本投稿では、ChatGPTに文章作成を支援してもらう際に、文章作成が意図するレベルの文章を、どう書いてもらうかを検討してみました。
Query文の表記ゆれを改善する、Outcomeを意識してQueryに組み込むことで、それなりに使える文章を作成できました。生成された文章の文字数は、1000文字程度。
ただ、実際は、論理の一貫性が、不明な文章になっていたりして、さらっと読むと、正しいように思えるが、「深く語る」という意味では、問題のある文章と言えます。つまり、文章を書く側が、意図する「洞察」Insight、「主張」Opinionを補完するだけの文であるとは言えない内容でした。
次回の投稿では、ChatGPTの文章になぜ、深みが無いのかを、考えたいと思います。
Appendix
ChatGPT: Regenerated Response
ケインズ経済学の視点から、財政赤字の発生は問題ではないと言えます。以下にその理由を論述します。
過剰な民間貯蓄(S)の問題:
ケインズは、過剰な民間貯蓄(S)が景気後退や不況を引き起こす可能性があると考えています。過剰な民間貯蓄は、民間投資(I)が低下し、経済が停滞する原因となります。このような状況では、財政赤字を通じて政府が追加的な支出(G)を行うことで、民間投資の不足を補うことができます。したがって、財政赤字は過剰な民間貯蓄の問題に対処する手段として有効です。政府支出(G)の必要性:
経済が不況に陥っている場合、民間投資が不足していると考えられます。この状況では、政府が支出を増やすことで需要を刺激し、経済の回復を促す必要があります。ケインズは「人々が月を欲するために、失業が発生する」と述べており、需要の不足が失業や景気後退を引き起こすと考えています。財政赤字を通じた政府支出は、経済全体の需要を増やし、民間投資の不足を補完する効果を持っています。ケインズの時間的視点:
ケインズは「長期的には我々は皆死んでいる」という言葉で知られています。これは、ケインズが短期的な景気刺激策を支持し、経済の活性化を重視する立場を表しています。財政赤字は一時的な手段であり、経済の回復や安定化を図るために使用されるべきです。将来的な財政の持続可能性や債務の問題は別途検討されるべきですが、短期的な景気対策においては財政赤字は有効な手段とされます。
以上の理由から、ケインズ経済学の視点では、財政赤字の発生は問題ではないと言えます。財政赤字は過剰な民間貯蓄の問題に対処
し、需要不足を解消するための政府支出を可能にする手段として活用されます。ただし、財政赤字の規模や持続可能性については慎重な考慮が必要であり、経済状況や将来の見通しに基づいた適切な政策判断が求められます。
以上