2023/12/06
ひんやりと透き通った空気の中、布団に縮こまる。暖房は苦手だ。乾燥するんだもん。眠ることを諦めて、ぼんやりと天井を眺め始めたのは、きっと大分前で。いい加減うえを向くことに飽きて目線を下げた眼球は、狭いくせによそよそしい、殺風景な6畳一間を捉える。何もかもが呼吸を止めたような部屋。底冷えしたフローリングはやけに冷たかった。随分前に、そろそろ眠らなきゃまずいな、ってベッドに向かった素足が、未だにシトシトと足跡を残しているような気がする。唯一鼓動を続けるのは、点滅するWi-Fiの青いランプだけだ。
時刻は朝の5時。まだ外は暗い。すっかり冬だなぁなんて思いつつ、相も変わらず眠ることが出来ない自分にうんざりする。
流石にそろそろ眠らなきゃ。明日のために睡眠を取らなきゃ。そう思えば思うほど頭は冴え冴えと澄み渡り、昔の記憶を無意識に反芻した。
多分7月ぐらい。やっぱり眠れないまま5時を迎えた、私。じんわりと明るくなる空が窓から光をゆるゆると部屋に誘い入れ、眠るあの人の顔を眺めていた。緩やかに上下するブランケット、ぽかぽかした手のひら、赤ちゃんのようにふやふやと膨らんだ頬っぺた。眠れない私のために空けられたベッドのスペース。無防備に投げ出された足を撫でるのは当たり前のことだった。なんてことない部屋なのに、ドクドクと脈打つ血液が部屋を巡り、どこまでもどこまでも暖かかった。
白んだ空がカーテンの隙間から漏れ見えて、部屋にシャキシャキと青白い光を落とす。耳が痛くなるほど高く澄んだ静寂と共に、はたと、私を現実に引き戻した。甘痒く痛む心臓が体の中心で暴れる。
眠れないまま朝を迎えた私は、寒々とした部屋の中ひとりベッドに縮こまる私は。カーテンを閉め直して、瞼を固く閉じ、明日片付けなければならない仕事と最近あった友人との楽しい記憶を、繰り返し繰り返し、繰り返し繰り返し思い出して、今をやり過ごす事しかできないようだった。