2023/09/26

1998年の8月生まれ25歳の私は、3回くらい上司に嫌味を言われながらフルリモートに移行した私は、考えすぎですっかりシワシワになった脳みそを隠すように、2回、髪の毛をブリーチした。色を抜いた前髪は長くてもあんまりうっとおしくない。文字通り、目の前をサラサラと横切る髪の毛が、私の世界だけ不透明度20%のきいろいレイヤーを重ねる。

私と同じく25歳の恋人の寝息を聞いた回数は、きっとリアルに800回くらい。熟睡すると、何かを咀嚼するみたいに、歯をガチッ!ガチッ!っと、心配になるくらい大きな音を立てて鳴らす。私、800回はこの音を聞いてる。その音を聞く前のうち200回くらいは、私の分の歯ブラシもついでにベッドまで持ってきてよーって、駄々をこねてる。
部屋着と寝巻きを分けてる私は、たくさんたくさんたくさんお気に入りのパジャマを恋人に見せた。紺地にさくらんぼ柄のサテンのパジャマ、ピンクに紺のハートがドットみたいに入った綿のパジャマ、恋人と色違いで買った柔らかい生地のジェラピケのパジャマ。コレは生地が気に入ってて、コレは柄が可愛くてね、こっちは寝心地が段違いに違うの。あのねあとはね…。
パジャマをいつでも見せられる私。話を聞いてなかったら露骨に不機嫌になれる私。お布団に入ったら中々出られないのを知ってて、歯ブラシを持ってきてくれる。恋人。

ハタチの頃。何も考えてないぴかぴかの脳の輝きをそのまんま反映させたような、キラキラの髪の毛。
今と同じようにブリーチをしてた。無敵で、よく笑って、あんまり寝なくて、随分寂しそうだった。随分と寂しすぎるゆえに、1人が好きで、皆んな嫌いで、誰かに助けて欲しかった。寂しくて強かった、ハタチの私。
25歳の私は、ピカピカキラキラの髪の毛を纏っていても、しわしわになった脳を誤魔化しようがない。なんというか、度を失って寂しかったハタチの私は、ぴかぴかの脳がきらめいて金髪がよく似合った私は、すっかりどこかに行ってしまった。
たくさん歩いてだるぅくなった足で家路に着く。駅の人工的な光にあたって透ける前髪。ピカピカのキラキラだ。もしかしたら、駅から家まで1人で帰るには、あまりに弱くなりすぎたかもしれない。眠れない夜、思い出したようにヒタヒタと寄ってくる寂しさが、今日も枕元で私を待っていることを思い出す。

いいなと思ったら応援しよう!