ウクライナ軍がロシア軍に対して善戦している理由
時系列
2020年2月24日 特別軍事作戦の発表
電子戦
通信環境を巡る争いであり、あらゆるモノが電子化されている現代戦で重要視されている。
電子戦の敗北
クリミア併合では圧倒的にロシア軍が有利だった。
しかし、ウクライナ侵攻ではクリミア併合のように成功しなかった。
インターネット回線の確保
侵攻当初にウクライナの通信機器が積極的に破壊されることは予測されていた。
スターリンクがウクライナの全てを支えた
世界的な実業家である、イーロン・マスク氏が2月27日に提供を表明。
低軌道衛星群通信システム
スターリンクの画期性
現在の通信は、静止衛星を活用しているため、高性能の通信機器を確保しないと高速大容量の通信が不可能である。
しかし、スターリンクは数千の小型衛星網を低軌道に構築。
静止衛星高度の1/70(計算ミスの恐れあり)のため、高性能の機材が無くても通信が可能であり、軍民領域にもたらした恩恵は計り知れない。
民間
ゼレンスキー氏や戦闘当事者の投稿が出来る環境である。
これは、今回の大衆メディア戦に多大な影響をもたらした。
軍事
ウクライナの砲兵システムやドローン
大衆メディア戦と歴史
戦争初期のゼレンスキー氏やウクライナ市民によるSNSでの発信、これは国際世論の醸成に大きな影響力を示した。
また、開戦から数か月経過した今でも。高い解像度で戦場の様子が伝えられている。
メディアコントロールの重要性
国家において、国民感情は大切である。
昔はラジオを統制することで、コントロールをしていた。
例:ナチスや米国、日本
メディアに敗北したベトナム戦争
テレビが台頭し戦争な悲惨さが発信された、これにより大衆メディア制御に失敗し米国内で反戦運動が活発化、撤退せざる負えない状況になった。
情報統制時代の湾岸戦争
メディアにより戦争のリアルが報道されると思われていた。
しかし、米国はメディアの自由な報道を抑え。
大衆メディアを完璧にコントロールした。
非統制と情報環境時代のイラク戦争
大胆にもメディアの従軍取材を許可し自由な報道を用意した。
これは、インターネットによって多元的・加速的に拡散されるため統制が困難であると判断したからだ。
そこで、統制ではなく米国政府の積極的な情報公開により米国の報道の信ぴょう性を高め。
国際世論までもが米国の情報を信用する情報環境を構築した。
SNS攻防戦のウクライナ戦争
戦争当事者がSNSに直接情報を公開する時代に突入した。
SNSの利用者増大により、既存のマスメディアだけではなくSNS空間も重視されており。
これにより、SNS攻防戦とも言える情報戦が展開されることになっているのである。
国際企業群を突き動かした、副首相
今回のウクライナ戦争において、ミハイロ・フェドロフ副首相の存在は無視できない。
彼は国際的な企業群に対して、ロシアに制裁をしウクライナを助けるように発信した。
これにより、スターリンクを始めとする情報戦に経済戦までもがウクライナへ傾いたと言える。
SNS時代にロシアは情報を統治できるのか
米系SNSを停止させ、TikTokやテレグラムの共産圏のSNSだけに限定した。
一部の市民はVPN等により当局の規制を回避は可能ではあるが、徹底的にテレビ・新聞・ネットを統制しており現状においては、十分ロシア国内の情報統制を出来ていると言える。
英米による、フェイクニュース対策の効果
ゼレンスキー氏等を使用したディープフェイクが、ロシア派により拡散されたが大した影響はなかった。
これは、事前にディープフェイクが知られていたのが大きいだろう。
また、米国国務省GECがロシアの偽情報対策を実施
イギリスはBBCがロシアの偽情報に対してSNSやテレビなどの複数のメディア層でファクトチェックをしていた。
これにより、ロシアによるSNS空間での攻勢をある程度無力化出来た。
ウクライナ国内の報道情勢
ウクライナ戦争において、情報統制はロシアだけが行なっているモノだという認識はある種の思い込みであり、ウクライナ政府により戒厳令が発せられている。
戦時下の情報提供
テレビにおいては、24日つまり、進行当日から公共・民間の両社が協調し24 時間放送を続けています。
具体的には各報道局毎に時間を割り当て、全ての報道局で放映するという形式です。
主な報道内容な、治安状況の状態と国家機関の活動の報道が行なわれています。
勿論、これらのニュースは命を守るために必要な情報です。
規制当局とプロパガンダ
上記の24時間放送のニュースの間には国威発揚と軍の支援を促すCMが放映されています。
具体的な内容は言語の壁により正確性を担保出来ないので紹介できないことをご理解ください。
また、軍事関連を映す事を禁じられ報道が規制される場面もあります。
戦時下のウクライナでジャーナリズムは保たれるのか
ウクライナ外務省は毎度決まったセリフを発し、国威発揚を促しています。
また、成果が強調されるも負傷者数などは発表を控えるもしくはしない場合が有ります。
勿論、これらの規制は国家存続の為に必要な事ではあるが国家から報道機関へ圧力をかける場合が有るわけです。
これらの環境の中で、ジャーナリズムが果たして保たれるのかというのは注視すべきかもしれません。
軍事編
ウクライナ正規軍vs紛争用のロシア軍
敗因
BTGの過大評価とウクライナの過小評価
BTGの特徴
常備化した旅団でありモジュール式の大隊戦術軍
紛争用であり、本来はBTGは数は少ないが充足率と練度が高い、というのが本来の特徴である。
数が少ないため損害を嫌い、準軍事組織(代理部隊)の後方から偵察し砲火力により沈黙させ機甲部隊を前進させる作戦を好む。
構成
歩兵が少ない
部隊の2/3ぐらいを歩兵とするのが一般的
WW2の戦車の上に兵士が乗ってる画像
アレは冗談でやってるのではなく、あのぐらい歩兵が必要という事だ。
歩兵の役目と重要性
歩兵は待ち伏せの排除、地雷の撤去。
偵察、前線でのドローン戦や対ドローン戦等も担うのが歩兵である。
このように、歩兵は様々な場所で重要であり数が必要である。
(専門家の方々から見たら、色々突っ込みどころはあるが多めに見て頂けると嬉しいです。)
BTGは準軍事組織や代理部隊の現地部隊の歩兵があってこそ成り立つ編成であるとも言える。
脆弱な通信網
ロシア軍の電子戦は非常に高度であり、強力なモノである。
しかし、BTG間やBTGと準軍事組織との通信が暗号化されてない例が散見される。
(COPとかの話)
中央集権的な指揮系統の限界
BTGは各指揮官が中央集権的に指揮をする。
集権的な指揮なので、指揮機能にかかる負担が大きい。
(Command Modern Operations等でやって見たんだけど、脳が処理しきれない。と知り合いが言ってました。情報の信頼度は低いですが、マトモな訓練を積まないと無理って事だけは分かるね)
具体的な話をすると、火力を機動的に運用するのが難しいらしいよ。良く分かんないね。
少数ゆえの欠点
本来の軍隊と言うのは、損害を受けた際。
小隊・大隊などの各規模で共食いにより再編成することで戦力を復元させることが出来るが、BTGは規模が小さく特に歩兵が200名程度なので再編成が難しい。
BTGはあまりにも少なく、損害を受けると著しく戦力が低下する。
また、即応化と契約兵の重視により高価な部隊となっておりリスクを冒せない。
さらに、歩兵が少なく警戒網を広く取れないため、欺瞞・再配置・反撃による多方面から攻撃に対して弱い。
BTGの良い所
部隊規模が小さいため、充足率を高める事が出来る。
また、静的な戦場においては圧倒的な火力を投射できる。
(少数精鋭化というのは、悪い事だけではなく。より素早くコンパクトに運用できる。え?じゃぁなんでF-35の画像?それはね、カッコいいからだよ。(説明放棄))
クリミア併合でのBTGの成功
2013~2015年のウクライナ戦争で成功しており
クリミア半島併合では、サイバー攻撃や「リトル・グリーンメン」による特殊作戦などを併用しハイブリッド戦(マルチドメイン)を完遂した。
クリミアで見えたBTGの失敗の予兆
火力・電子戦と防空網などでロシアが圧倒的に優勢なのに、ウクライナ正規軍に戦術的に敗北する場合があった。
また、BTGが研究されており弱点が明らかになっている。
(詳しい人へ、BCTとBTGが戦ったらどうなるみたいな資料を漁ると色々出てくるのでそこら辺の情報を根拠に書きました。)
ウクライナ軍の改革
クリミア併合の後、ウクライナはロシアの電子戦に敗北した理由を分析し対策を積み重ねた。
軍備の再編
2000年代初頭に、軍事力調整計画を策定しNATO標準化へ
2022年現在、現役20万人、予備役25万人、民兵5 万人
NATO基準化
「標準化協定」(Standardization Agreement:STANAG)を批准し通信と情報システムを構築した。
これにより、スムーズな米・NATOからの情報提供が出来ていると思われる。
また、戦術・戦略面も更新されており、武器提供の支援を受け入れる下地が出来たとも言えるだろう。
ウクライナの活躍
対BTG戦術
陣地構築
ウクライナの国土は、平原が多いです。
なので、戦車による機動力を封じる必要があります。
①政治・経済・軍事の要衝を要塞化
②河川や森林と鉄条網や地雷を効果的に組み合わせ、機動力の制限を行う。
③偵察・狙撃歩兵小隊やドローン、衛星画像により把握
④killゾーンへの誘導と自軍の機動火力による挟撃
ドローン兵器のハイロー・ミックス戦略
バイラクタル等の兵器は皆さんご存じなので割愛させて頂きます。
民生ドローンは、軍事用ではないので防空・電子戦が行われてる環境においては弱いが。
そうではない環境においては十分に効果を発揮できる。
つまるところ、要所に軍用ドローン兵器を投入
そうではない所に民生ドローンを投入するというハイロー・ミックス戦略が取られているのだ。
これにより、コスト戦において優位を獲得することが出来ている。
軍民一帯の徹底抗戦が出来る理由
・明瞭な軍事侵攻による、国家危機の認識
・2014年のクリミア危機の人手で不足を補う特殊任務警察制度
・同年の徴兵制復活
・ソ連崩壊後に乱立した政治・文化・経済において作られた準軍事組織(自警団や民兵組織)
・18 歳から 60 歳の男性の出国を原則禁止
具体的な準軍事組織
アゾフ大隊やキエフ大隊、また、25空挺大隊が撤退後も抗戦を続けたことで有名なドニプロ大隊。
国家全体として、領土に対する危機感を持っており。
各地域の民兵集団と協力することで、言わば総力戦へスムーズに移行することが出来た。
武器提供
米・EU圏から数々の提供されているのはご存じだろう。
その中でも、ジャベリンやバイラクタルはゲームチェンジャーとしても持て囃された。
しかし、これは偶然提供した兵器が活躍したのではなく米陸軍などによるBTGの研究結果により適切に提供されたといのうが正解だろう。
ジャベリンとバイラクタルの活躍
BTGが苦手とする、異方向からの攻撃と隠蔽による歩兵への負荷の増大である。
総評
2013~2015年のウクライナ戦争で成功した、ロシアのBTG(大隊戦術軍)
しかし、NATO標準化により近代化されたウクライナ正規軍との正規戦争では思うような侵攻が出来なかった。
また、BTGの歩兵の少なさによる警戒網の脆弱性によりドローンや携行対戦車兵器が活躍した。
あと、やっぱりこれですね。
やさしいじんどうてきなくに、かんどうしました
参考文献:
https://www.ssri-j.com/SSRC/higuchi/higuchi-94-20220404.pdf
https://www.benning.army.mil/armor/earmor/content/issues/2017/spring/2Fiore17.pdf