文化の入り口としての食事
好きな牛丼屋はどこですか?
王道の味を求めるなら吉野家、"とろ〜り3種のチーズ牛丼"をはじめとしたトッピング牛丼を食べるならすき家、肉はやや薄めだが味噌汁付きの松屋。牛丼御三家の中で、どこが一番好きかと聞いたら意見は割れるだろう。
大学生時代に一人暮らししていた家から圧倒的に近かったというただそれだけの理由で、私は松屋フリークである。大学時代の酸いも甘いも、すべての思い出が松屋とともにあったといっても過言ではない。少なくとも、体調が悪い時/疲れている時の食事は全て松屋だった。ありがとう松屋。「みんなの食卓でありたい〜」のフレーズが心に沁みた。
松屋のカレーは少し辛すぎる、とか、フレンチドレッシングを牛丼にかけると変化球で美味しい、とか、贅沢する時は豚汁変更、とか、生卵より温泉卵、とか自分なりのこだわりが松屋にはある。
シュクメルリの衝撃
そんな松屋もたまに期間限定のメニュー出す。コロナウイルスの日本初感染者が確認された2020年1月、時を同じくして松屋に突如現れたメニューが『シュクメルリ』だ。シュクルメリ?シュクメルリ?シュルクメリ?なんだそれ?と思った記憶がある。
シュクメルリとは、鶏肉を鉄板で焼いたあとに香辛料・大量のニンニク・クリームソースとともに土鍋でグツグツ煮込んだジョージアの郷土料理である。”世界一にんにくを美味しく食べる料理"らしい。
これが、めちゃめちゃ美味しかった。
そして、この料理をきっかけにジョージアを知った。
ジョージア?
オレンジワインといえばジョージアだし、ノマドに優しい国ならジョージアだし(ビザなしで1年間滞在出来る)。今でこそナチュールブームやネット・在宅勤務の普及により、ジョージアという国名を聞く機会も増えた。中学校の社会で覚えた名前はグルジアだったが、2008年にジョージアに変わったらしい。ロシアとの交友関係が悪くなり、ロシア語由来のグルジアから英語由来のジョージアに変更になったということだ。シュクメルリはそんなジョージアのシュクメリ村由来の料理。松屋をきっかけに食を知り、国を知る。
満を持しての復活
そんな『シュクメルリ』が復活する。松屋の第3回復刻メニュー総選挙で堂々の1位を飾り、2021年1月に短期復活をして以来3年ぶりに食べられることになった。2024年2月6日から、是非食べてみて欲しい。
ちなみに、松屋のプーパッポンカレーとマッサマンカレーもとても美味しいので是非食べていただきたい。
深夜の松屋
『他人が幸せに見えたら深夜の松屋で牛丼を食え』というパワフルなタイトルの本を読んだ。月刊誌『裏モノJAPAN』に連載されている『タイムマシンに乗って若かりし自分に教えてやりたい 人生の真実とは?』を再編集した本になる。上野、新橋、赤羽の大衆酒場で聞かれるオッサンたちの会話の全てが詰まっているんじゃないかな、と思えてくる。男が語る持論ってなんでこんなにも適当で、自信満々なんだろうと思いながらも、要所では芯を食っていて頷いてしまう自分もいる。
これこそが人生経験に基づいた悟り
なのかもしれない。
牛丼屋はいつでも僕らの味方だ。