おじちゃんからの電話
月曜日、お昼前に用事で外出していると、携帯が振動した。画面を見るとおじちゃん。一瞬緊張する。
そう言えば今日は検査の日だった。そう言えば母も妹も付き添いできないと言っていた。でも診察があるとは聞いてなかった。先月末に日帰り帰省して診察に立ち会った時は、医者が「少し良くなってる」と言ってたのに、まさか。
できるだけ平静を装って電話を取る。
「おじちゃん、どしたん?」
「今日の、診察じゃったんよ」
「うん、知っとるよ。ごめんね行けんかって」
「ええんよ。での、医者がゆうにはの」
一瞬間が開く。まさか。
「癌の影がほとんど消えとるんと。はぁ九分九厘治っとるゆうて。医者がゆうんじゃけぇ間違いない」
普段寡黙なおじちゃんにしてはすごく明るい声。ホッとしたんだろう。そりゃそうだ。「医者がゆうんじゃけぇ」に心なしか力がこもってる気がした。
「えー、そうなん!?ほんまによかったねぇ!」
ぼくも嬉しくて少し目が潤む。ほんとによかった。
実際にはこの先再発もあり得るんだろう。ただ、いまは治療の効果が出たこと、抗がん剤を飲まなくて済んだことを素直に喜ぼう。
夕方、おばちゃんにも電話する。声の感じがやっぱり明るい。毎月おじちゃんに付き添うのも大変だったろうし、何より肩の荷が降りたんだろう。「おばちゃんも気を付けてね」と伝えて電話を切った。
少なくともこれで穏やかな正月を迎えられるだろう。おじちゃん、ほんとによかったね。