おしゃれと身だしなみ
過去にカラー診断というものを受けたことがある。肌や瞳、髪の色から、どんな色が似合うのか見ていき、最終的に4つのグループ(春秋冬の4グループ)に分けるというもの。例えば、黄色寄りの赤、青寄りの赤、パキッとした赤、落ち着いた赤など、赤と言っても本当に多種多様な赤がこの世には存在する。4つのグループにはそれぞれにふさわしい赤が振り分けられていて、なんでもそのカラー診断に沿って、戦略的に色を選択していくと、人生がハッピーになるということらしい。
仕事では、相手から信頼されるような紺、グレーなどを、プライベートでは、顔映りの良いベージュ、オレンジ、ピンクなどを身に着けると、初対面でも話しやすい印象を与えやすいのだそうだ。
いろんな色の布を首元にあて、先生と一緒に鏡を見てどんな色が私に相応しいのか探っていく。
おびただしい数の布をあてた結果、私はオータムカラーと診断された。私の肌の色は黄色味が強く、茶色や辛子色、モスグリーンなどの深い色が似合うそうだ。真っ白よりもオフホワイト、ショッキングピンクではなくサーモンピンク、シルバーよりもゴールドといった具合だ。
既にワードローブの8割方が黒だったので、「え~、わたし黒が好きなんです」と先生に言ってみた。先生曰く、肌の色が青みがかった人は黒が良く似合う。けれど黒という色はとてつもなく強い色で、よほどのパワーが無ければその人の良さを覆い隠してしまうそうだ。逆に、アーティストなど、自分から何かを強く発信できる類の人は、黒のパワーに負けることなく、むしろその人のパワーを増幅させ、より力強く見せてくれる力がある、だからそういった人達は好んで黒を着ているのだと教えてくれた。私の場合はイエローベースだから、残念だけど黒は全く似合わないよと断言されてしまった。そして「好きな色よりも似あう色の方が大切なのよ」と先生は仰った。
結構ショックだった。だって茶色なんてひとつも持っていないし、おばさんくさくて着たくないし。
オフホワイトやサーモンピンクって、、、。無理でしょって思った。
カラー診断後は、自分のグループに合った色を意識したメイクも教えてくれたけれど、ショックすぎて、あんまり頭に入らなかった。
"黒は痩せて見える" 最初はただそれだけで黒を選んでいた。
でも、初めて買ったブランド物が黒だったこともあって、それに合うものを買い足していった結果、おのずと黒い物、黒に合う物が増えていく。DCブランドブームも手伝い、だんだんと私のクローゼットは黒に染められていった。とにかく田舎出身ということをコンプレックスに感じていたが、黒を纏うと少しは洗練された女の子になれた気がしたし、内気で無個性な自分も、ちょっとだけ凛とした女の子になれた気がした。だからいくら茶色が似合う~と拍手喝采を浴びたとしても、気持ちはまったく茶色ではなかった。
会社用だけでも色物を取り入れてみては? と先生からアドバイスをいただいた。はっきり言って、会社用のものにあまりお金をかけたくないと思っていたのだけど、確かにビジネス上できちんとした印象を与えることはとても大切だ。その場に相応しく、相手を意識した装いが身だしなみであり、思い切り自分が好きなものを装うのがお洒落だと割り切ることにして、少しずつ色物を増やしていった。オフホワイトのボウタイブラウス、ベージュのパンプス、ピンクのセットアップ。だんだんオフィスでのスタイルが出来上がっていき、周りの反応もとても良好だった。
以来、会社用にと控えめなデザインの黒い服を、妥協して買うことが必要なくなった。休日には、気に入った黒い服を思い切り着た。本当に好きなものがはっきりしてきて、流行にも左右されることがなくなってきた。そういう意味ではカラー診断は良い機会だったのかもしれない。
戦略的に色を選択して仕事に挑んだからといって、昇進したとか大幅ベースアップしたとか、寿退社できたとか、そういうことは何もなく、特に私の人生、変わりはないんだけどね(笑)。