2021年上半期ボカロ10選
は、8月になってしまった・・・!!
元々「今回は作れない気がするな・・・」と思っていて作る気はなかったのですが、7月になってから自分のマイリストに入っている曲を聴いていると「あれ?やっぱり作れるんじゃね?」と思い直して急いで選定作業に入った次第です。
だから遅れちゃったのは許して!
さて、前置きはこれくらいにしてさっそく発表させていただきますね。
これが私の #2021年上半期ボカロ10選 だ!!!
ではいつものように、1曲ずつこんなところが良かったよ~って話をしていきますね。
ぜひ読んでいただきますれば!
BeatSea「それはシャンデリーナ ‐ feat.鏡音リン」
BeatSeaさんを知ったのは可惜夜から。特徴的かつ玄人好みのするサウンドメイクに「とんでもない人がきた、この方はいずれドカンとくるぞ」と思った覚えがあります。といってもこの曲を見つけたのは作者を追っていたわけではなく、タグランの上位にいたのを聴いただけなのですが!wありがとうデイリートピックス!
「それはシャンデリーナ」は可惜夜と比べるとかなり趣の違うポップな曲調ですが、音をまとめ上げる力の並でなさは共通しています。
懐かしさを感じる、という旨のコメントが散見されるとおり、冒頭ではひと昔前のポップサウンドを思わせるシンセサイザーが鳴っています。それでも古臭さを感じさせないのは、直後に入ってくるベースのせいでしょうか。
このベースが良い!!このひたすらに主張の強いブリブリベースに私は一目(耳?)惚れしました。主張が強いと言いましたがそのバランスが絶妙で、曲全体ではこのベースがいなくなるパートも多く存在するにもかかわらず、ベースのいる/いない で音のバランスを損なっていません。低音の全くいない場所があったり、あるいは別のシンセで低音を代用させたりと、ベースを出さない部分で遊んですらいるような余裕が心地良い。個人的には、この低音域に終始振り回されるのを楽しんで聴いています。
「ベースを決め手に据える」というコンセプト、それを最大限に活かす周りの音の豊かさに衝撃を受けた作品でした。
ちなみに、
こんなこと言っておいて最終的に10選入りしているのがおもしろい
疲れたからさ / 瀬名航 feat.初音ミク
瀬名航さんは「バイバイ」「かすみ草の花束を」あたりでドラムの異様な進化に驚いたのが印象的で、いずれドハマりする作品が出てきそうだな~と思っていたのですが、それがこの曲でした。
まず言いたいのが、歌詞が良い。こういうクリエイターの苦悩みたいな歌詞、軽率に好きになっちゃうんですよね。普段「作者と作品は切り分けて聴いてる」とか言ってるのにどうして・・・。
一番好きなのは『また 夜が明ける』という歌詞。”夜明け”という言葉を希望ではなく絶望の象徴として扱う歌詞が元々好きなのですが、加えて演出がとても良いんです。1サビ直後にポエトリー部分が入り、演奏がギターのみになったその一発目にくるのがこれ。後ろの音が静かになるためこの言葉が心にズシンと重く響きます。絶望感がよりこちらに伝わってきている気がして、もう・・・。
この曲についてもうひとつ語りたいのが、曲構成です。先述した1サビ後のポエトリーの挿入。1A終盤で特徴的な半テンを差し込み、それをラスサビの一番最後で回収する展開。1番Bメロや2番Aメロで少しだけ顔を見せるいつもの瀬名さんサウンド。
そして何より耳に焼き付くのが、2サビ前の猛ラッシュです。スネア+フロアタムの連打からスネア+クラッシュシンバルの連打に移行、そこからロールとすら言える超連打に遅くなっていくテンポ。ここの圧倒的なまでの激情が、この曲のすべてを物語っていると思います。
このこちらの火もつけてしまそうな熱い思いを聴いていると、「これは真正面から向き合って聴かなければならない」という気持ちにさせてくれます。瀬名航さんの”本気”、まだ体感していない人は必ず聴きにいってください。
「シュメリ」玉響に願いヲfeat.蒼姫ラピス
かわいい~~~~!!!
去年主に私を大きくざわつかせた"2020年新人ボカロP三銃士"(勝手に名付けた)の一角である玉響に願いヲさん、今年もい~い曲を持ってきてくれました。
まず、ボーカルであるラピスの声がかわいい!「しゅあよー!しゅあよー!」って歌ってるとこなんかは舌っ足らずで聴いてて微笑ましい。ラピスといえば透明感のあるロックというイメージがありますが、こういったあまあまな曲との親和性も高いんですね~。
さらに、2番Aメロで転回型もってきてるのがすごく良いです。1番Aメロが地味なメロディということは全くないのですが、2Aはさらに輪をかけてキャッチーですね。かわいさ押しなリズムなのもまた好き。こういう展開の時大抵良いって言ってる気がする。全体的に音の雰囲気や歌メロが良くて、単純に「クオリティが高い」と思わせる曲です。まだ聴いたことない人がいたらぜひ一度は聴いてほしい。
個人的には1A『乙ゲーじゃあるまいし、、』の歌詞の後に来るタッツクチーというドラムのフィルがすごく好き。あとこの曲の歌メロはまずサビから入るのですが、イントロから入ってサビを聴かせてくれるタイプの曲ってあんまりないんじゃないかと思います。つまり好印象!
一瞬にも満たない / 初音ミク
ヘリP・・・!4年強ぶりの新曲、とてもよかったです!この手の曲はもう必ずと言っていい確率でハマってますw待ち望んでいたものがピタッときた感覚。
頭打ちのリズムがかなり全面に押し出されているのがとても好きです。イントロ、Bメロ、ラスサビで使用されていますね。
そもそも頭打ちというのはことボカロシーンにはあまりメインで用いられることがないリズムです。分母が非常に大きいため、有名曲から調べていけばそれなりの数出てくるのですが(カゲロウデイズ、モザイクロール、ヒバナ等)、ボカロシーンをリアルタイムで追ったときに頭打ちが出てくる曲は体感的にシャルルビートの1/5以下であるのは間違いないです。
さらに、頭打ちが採用されている曲ってけっこうハードめなロックであることが多いんですよ。この曲のような”ポップロック”という趣の曲調となると使われている数はさらに減ります。ようやくこの曲の話に戻ってこれた!つまりこういった曲調でこのリズムはボカロであまり見ないから嬉しいな~ってことです!
あと個人的には、
『好きな曲が変わってても 変わらないでほしい
言葉にしたらなぜか 粉々になるような気がしてた』
という2サビの歌詞がめちゃくちゃ好きです。口に出してしまうことで輪郭を帯びてしまって、全てが取り返しつかなくなっちゃうことってあるよね・・・。
犀は火曜日、山羊は海 『天使人間』 feat.初音ミク
言いたいことはほとんどBメロとアウトロに集約されます。この曲の最も素晴らしいのはメロウさとポップさが綺麗に内在していることだと思うんですが、それを成立させているのがBメロの接続部分だからです。
柔らかい音と共にフェードインして始まり、溶けていくようなスローテンポを崩すことなくAメロを終えます。そしてBメロに入って太く伸びるシンセと消えるリズム隊。ここが本当に秀逸で、チルさの極致が感じられるのと同時に、リズムが消えたことでここが転換地点ともなっているんです。直後に入るドラムと転調がそれを裏付けています。さらに上転調によってその後の開放感や疾走感も生み出し、それまで湿度の高さが色濃かったパートから一転して、気づけば清涼感あふれるサビに。緩やかに役目を終えてバトンタッチするシンセ音のピッチベンドが気持ちよすぎる・・・。
1番でインパクトを与えた後、2番ではAメロの歌を早めに切り上げ、接続部分の原型を残したまま趣の違う間奏に突入するという変化を見せてきます。まったく抜け目がない。1番で音に慣れたせいなのか、2番の間奏ではメロウさとポップさがもはや同居しているようにすら感じられます。これほど”発想の勝利”という言葉が印象付く曲は久しぶりに聴きました。まぁその前に聴いたのは「A面B面」という、同じ作者の曲なんですけどね・・・w
あとアウトロ!!フェードアウトで終わっていく曲は名曲の法則!!(アウトロはこれが言いたかっただけ)
フェードインしてメロウに始まり、途中で爽やかさを見せ、またメロウにフェードアウトして終わっていく・・・完璧な構成。
KAIRUI - 空想 (feat.初音ミク)
これが処女作ってマジ?????個人的に #ボカコレ2021春 で一番の掘り出し物でした。この音の奥行き、ボーカルの重ね方、さては素人じゃないな??
この曲調だとか、音の背景に見える音楽的蓄積が私には全然わからないのでそのへんを語ることはできないです。有識者がこの曲について語っている記事やツイートなどありましたら、ぜひ教えていただきたい・・・!!
ですから私にはひたすら感覚的なことしか言えないのですが、この底の見えない水に潜っているような神秘とか恐ろしさとか、その上にある可愛らしい声とかがすごく好きです。曲が2:36と気づけば終わってしまう長さなので、もう一度触れたいと何度もリピートしてしまいます。
この豊かなボーカル処理にあくまでポップの枠組みに収めているところが他に類を見ない印象を与えます。ボーカル処理だけなら存在しそうな気がしますが、そういった曲は得てしてアンダーグラウンドな雰囲気を纏っていることが多いというのが個人的見解です。その点で、この曲はもっとより多くの方の元に届くべき曲だと。私はそう思います。
先の「シュメリ」とはまた別の、好きかどうかわからないけど「この曲を聴く」という音楽体験をしてほしいという意味で、まだ聴いたことない人がいたらぜひ一度は聴いてほしい曲です。
【GUMI】アイカ 【オリジナル】
れるりりさん曲作るのうますぎワロタ。今期最高峰のシャルルビート曲になります。同氏の中毒性狙いの曲調は作品によってハマったりハマらなかったりまちまちなのですが、これは裏に見える音楽的技巧に押し切られた形です。つ、強えぇ~~~。
もうね、細部のドラム運びやリズム遷移が玄人すぎてどんなに大味な展開しても許される始末ですよ。(褒めてる) 1番Bメロのポリリズムだったり2番Aメロ中間のフィルのキメだったり2サビ後の間奏だったり、明確な見せ場の演出がない部分での職人芸が光ります。”神は細部に宿る”ってこういうことなんだろうかと思わされます。2サビ前みたいなドラム強弱を曲全体に気配りさせている人なんて今のボカロシーンにどんだけいるんだ。
また、1番Bメロにはジャズっぽいオシャレなリズムが入っていますが、ボカロ界隈に時々現れる「2番Bメロでジャズっぽいことする」というセオリーを綺麗に裏切っているところが、歴戦のボカロPならではの遊び心という感じがして個人的に好きです。
あと1サビ直前のフィルがめちゃくちゃ好き~!
関係ない話ですが、サムネの表情ってサビの最初にちょっとしか出てきてないから、曲全体でも合計10秒くらいしか映ってないよね・・・。
ナイトフォール / 伊根 feat. IA
お気づきの方もいるかもしれませんが、「天使人間」からこの「ナイトフォール」までの4曲、すべて同日投稿の曲になります。ボカコレ春すげえ!w
伊根さんは「メドレーライフ」で明確に意識するようになった身ですが、今回で満を持してハマることができました。伊根さんらしいアクの強さは比較的控えめ気はしますが、私はむしろこれくらいのブレンドが良い・・・!
先述のように今回は普段の積み木遊びのような無秩序な音運び、というより一貫してしっとりした空気ですので、いつもに増して音の方に注視して楽しむことができます。ブリッジミュートしたり、逆に開放してみたり、高音でブラッシングしたり、細かく刻んでループしてみたり・・・。このあたりの音と一緒に遊んでいるような耳心地の良さは伊根さんらしさが現れていると思います。
じゃあ今回特に好きになったのは何が原因だったのかと考えると、いつもよりも強調されて曲全体に漂っている寂しさなのかなーと。さらにその原因を考えると、他作品と比べて歌メロがあまりリズムを刻んでいないというか、ドラムに取り合っていないところがドライな印象を与えているのかなと思います。この考察、いかがでしょうか?w
【UTAU / 十鳴子】daikonspiders「she is」【オリジナル】
(ヘッダー画像はこちらのスクリーンショットになります)
daikonspidersさんという方を知っていますか?初投稿の2/12以降、現在に至るまで毎週曲を投稿している凄まじいボカロPです。しかもそのペースでありながら毎回曲のクオリティがえげつない!!私はぼかうたらんで「夜の偶像」を聴いたのがきっかけだったのですが、そこから気になって数曲聴いた結果「これは間違いなく全曲巡回しないといけない”ヤバい人”だ!!」と革新しました。そうして出会ったのがこの曲!
daikonspidersさんのすごいところは投稿頻度もそうですが、これだけ多作ながら大雑把なキャッチーさでなく曲構成や歌メロの工夫が細部まで行き届いている点です。後ろの音は打ち込みを使用した激しいものですが、同時に「本当に1週間で作ったの??」と言いたくなるような小技が各所に散りばめられています。歌メロはそれ単体を聴けばしっかり聴かせてくれるパワーを持った歌モノであることがわかり、全体を通して見るとむしろ中毒性どころかスルメ曲だと思わせられます。
そして個人的にその最たる曲がこれだと思っています!極めて自然で流麗な歌、暴れるというよりもストレートさを印象づけるギター。そして何よりラスサビ最後の畳み掛け!!もうこういうのに、本当に弱い・・・。
そして、この曲でめちゃくちゃ好きなのが歌詞です!!
1番の
『ほんの僅かな僕の勇気を
夏の魔物が奪おうとしてる』
からのラスサビで
『夏の魔物がそこまで来ている
奪われぬように手を握った』
ですよ!!そして最後の最後で
『言えなくても』
なんです!!!ウワアアアアアアアアアアアアアア(壁まで吹っ飛ぶ)
あと私は歌詞で手を握られると無条件で好きになってしまうらしいことが最近わかってきました。”手を握る”とかいう行為、エモくね?
あとこの歌詞で「貴方」の描写がほとんどないのがすごく好きです。曲中で描写されているのは『靡いた髪』『僕を呼んでる無邪気な声』『夕日の下で笑う貴方』『見透かしたような貴方の笑顔』くらい・・・割とあるな・・・。
言い方が少し違いますかね。「歌詞に第三者の余地が全く無い」とか、「明らかに主観しかない描写のみで構成されている」とかって言えば伝わるでしょうか?そこが良いんですよね。なんていうか、ひとりよがりというか、内省的な感じがして・・・。
と、ここまで歌詞を読んでもらった上で改めて動画を見てください。ノーコピーライトガールさんのイラスト、めちゃくちゃ良くないですか!?手をかざし目を細めている彼女の様子が、この歌詞世界のワンシーンであるように感じるのは私だけでしょうか・・・!
∴flower『アイロニーナ』 / 煮ル果実
私、イマジナリーフレンドというのが好きなんですよ。そしてこれ、広義のイマジナリーフレンドです。私のアンテナがそう告げている。
アイロニーナちゃんは(映像から推測するに)”僕"によって創作されたキャラクターで、創作者である”僕”に無償の愛を注いでいる。創作者という親がいなければ自分は存在できていないのだから、メタ的に考えればある種当たり前とも言えます。この"当たり前"なのが良いんです。無償の愛を疑わずにいられるから。「どんな時も自分のことを想ってくれている」なんて荒唐無稽なことを、人間相手では到底信じられないようなこともイマジナリーフレンドなら信じられるんです。なぜならそれを生み出したのは自分なのだから。
個人的にイマジナリーポイント高いのは、
『信じたいんだよ 信じたいんだよ
この世界以外の居場所があることを』
→自分だけに触れられる世界や存在がある
『濡れそぼった眼をぬぐった』
→映像ではアイロニーナが拭っているような描写なのに、歌詞は一人称主体
『信じたいんだよ 信じたいんだよ
何かを成した自分が在ることを』
→イマジナリーフレンドを作り出すタイプの人にはネガティブな経緯があるケースが多い
『愛が冷める頃に
僕を離さないでおいて ねえ』
→直前で『さよなら』しているにも関わらず未練を残している
イマジナリーフレンドの”無償の愛”を信じているからこその歌詞と考えると、あまりにも醜くて眩しい.........
『透明な言葉で僕を
ずっと救ってくれよアイロニーナ』
→共に生きることを選んだのかそれとも決別を選んだのか、どちらともとれる歌詞
『延びた手をぎゅっと掴んだ』
→手を握る系の歌詞はいいぞ。(これだけイマジナリー要素関係ない)
あたりでしょうか!イマジナリーフレンド、好き・・・
(イマジナリーフレンドかどうかは個人の意見です)
この笑顔。眩しすぎんか?
あとがき
以上になります。
10曲紹介し終わったので、恒例の上半期1選発表タイムといきましょう!
2021年上半期で一番好きだった曲は、これ!!
daikonspidersさんの「she is」でした!!
今期はヘビロテの度合いとしてはけっこう横這いになるくらいどれも好きな曲でしたが、1つ選ぶならこれかな~~!
daikonspidersさんは本当に全曲巡回推奨なので、まだの人はマイリストへGO!
上半期はそれほど数は聴いていないながら、マイリストに入れた曲をよくリピートして聴いていたと思います。えらいね!
あと今期、普段から音とか構成の話ばっかりしてる私にしてはけっこう歌詞の話してたと思いませんか!?えらいね×2!
今年はまたボカコレ秋の陣が待ってますので、下半期もまだまだ気が抜けませんね!いっぱい聴くぞ~!!
それでは、よいボカロリスナーライフを!
#vocanote #感想 #VOCALOID #2021年上半期ボカロ10選
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