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感想:初の音


こんにちは。
書こう書こうと思いながら寝かせ続けている秘伝のnoteがどんどん増えていく中、「これは感想書きたい!!」という電撃の走った曲が来ました。
久々の曲単体記事ですが、衝動的に書き散らしていきたいなと思います。


初期の瀬名航さんから通底するかわいらしいサウンドを存分に盛り込んだ曲調と、曲名からの期待通り初音ミク愛に溢れるアルセチカさんのイラスト。言われてみればなぜまだ存在しなかったのかと思える納得感の高い組み合わせです。

そんな本曲でまず注目したいのが、ドラム。やはりドラムです。
皆さん、知っていますか?瀬名航さんはドラムの組み立てが非常に巧みであることを。
思い返せばその腕前を知るところとなったのは「バイバイ」「かすみ草の花束を」あたりでしょうか。それまでのスタイルとはかなり異なるフレーズとなるので突然何があったのかという驚きがあったことを覚えています。
ドラム(というかリズム)視点で見た時のこの曲のテーマは"空白""シンコペーション"でしょう。シンコペーション(アンティシペーション)を用いるのは、通常より早く次の音が来るため疾走感を急激に上げることのできる魔法のテクニックなのですが、その便利さゆえに無策に使うと通常のリズムに返ってくるタイミングがわからなくなってしまい策に溺れてしまう悪魔のテクニックでもあります。
ざっくり対策は2つ。策に溺れぬよう一定の距離を離す、つまり多用しないようにすることと、共生する道を選ぶ、つまり多用して基本リズムをシンコペーションとしてしまうことです。

この二者のうち本作は後者の手法を採っています。そしてこのシンコペーションを曲に馴染ませるのでなく、際立たせる方向にフレーズを組み立てています。具体的に言えば、拍頭にあるシンコペーションの手前から余白を持たせたキメを用意することでシンコペーションを強く予期させています。
たとえば、冒頭を聴いてみてください。

ドラム抽出しました。
字に書き起こすとンダッダッドッジャーンといった感じですが、均等の間隔で裏拍の音が鳴らされてそのままシンコペーションの頭拍に到達しています。リズミカルなので頭拍まで含めてアクセントをつけているように聴こえますよね。このようなテクニックが随所にあるので、シンコペーションを主軸に据えたメリハリのあるリズムが非常に多いという曲全体の輪郭を形成しています。
シンバル直前にあるタムなんかは特に、タムを2発にして余白を埋めても全然おかしくないところなんですが、これを1発に留めることでブレイク感を強烈に印象付けています。ここの裏→裏の流れが気持ち良すぎる。

この"空白"はさらに細かい視点でも確認できます。たとえば、1サビ最後のフィル。

こちらはピアノロールも用意しました。注目してほしいのは赤枠のスネア連打部分。上にぽつんとあるのがシンバルですが、よく見るとスネア連打とシンバルの間に1つ分の空白があります。そう、空白です。
ここは疾走感だけを考えるならスネアを1つ増やして隙間を埋めた方が効果が上がると思います。あえてそうしなかった理由があると考えられるのではないでしょうか。そしてその理由が空白の創出のためです。こちらも他で同様に使われている箇所が複数あります。2番Aメロ最後のフィルとか、2サビ後の間奏の途中とか。

この空白があえて行っている説を補強するものを挙げましょう。これと逆に、曲中で空白を作っていない箇所もあるんです。

これは2番Aメロの途中(1:14~1:18)にあるキメですが、この赤枠部分では先程のような空白がありません。同じような状況で空白を入れる部分と入れない部分があるということは、意図的に選択していると考えてよいでしょう(ただし、作者の表現意図を考えると、ここで違いを持たせていることについては意識的な選択であることを伝えるためにやっているというよりは、キメが多くなりすぎるのを緩和するといったバランス感覚による意味合いが強いのではないかとは思います。入れることも入れないことも意識したというより、意識して入れない部分を作ったのではないかというニュアンスです)。

説明が長くなってしまいましたが、シンコペーションという諸刃の剣を、定型的な効果である疾走感の付与とは違う視点で最大限活用するリズム作りをしている(と勝手に感じた)ところに感動した、というのがまず言いたかったことです!


・・・ここでドラムの話終わりそうなので、他に特にお気に入りの部分も書かせてください。

・2サビ最後のフィルがめっちゃ好き。

よく聴いたらクラッシュシンバル入ってて思ったより難解だった(シンバルの間に裏でハイハット入れてんのやばい)んだけど、この手の金物とスネアを絡み合わせるフレーズってボカロで全然聴かないフィルだと思うからすごく嬉しい。

・『BPM見失ってもフリーテンポで声掻き鳴らせ』のところでライドシンバルが6連符の刻みになってるの、歌詞に合わせて拍感を崩しているように思えて好感。

・ラスサビ2回し目の頭打ちしてから途中に来る拍頭のシンバルが変わらず裏で叩いてるのがすごく良い。うまく説明できないけど、好き。

・ラスサビ最後のフィル。2:38あたりでブレイクが入ってるもののライドシンバルとハイハットが鳴ってて、聴いてる印象とは裏腹に演奏としてはけっこう忙しいフレーズになってる。パズルを当てはめるようにフレーズを作っているようでDTM的な作曲だなぁと思うんだけど、だからこそそこでしか味わえない旨味を感じる。


いったんスッキリしたので次にいきましょう。歌詞について!
最初の方に書いた通り映像を見るとかなりミク色の強い本作ですが、初音ミク100%な歌詞!というよりは初音ミクと一緒に曲を作る自分についての歌詞かなと感じました。(それって初音ミク100%の歌詞じゃねえか!って思った人がいたら・・・すみません)

私は瀬名航さんの「疲れたからさ」の歌詞が大好きなんですが、こういった歌詞を書く人の「つらい、苦しい、でもまだやめない」という歌詞が大好きなんですよね(ヘルニアさんの曲名みたいになってしまった)。「生きる」よりも「死なない」に栄養を感じるタイプの人間です・・・。
そんな自分からしたら、ラスサビの大盛り上がりの締めに『まだ、そう、まだ僕は やり残したことがあるんだな』という歌詞はブッ刺さりました。初見時でここの歌を聴いた私は思わず顔を上げると、"やり残したこと"の答えを指し示すような画面いっぱいに埋め尽くされた初音ミク、そして愛に満ちた「初の音」のタイトルロゴ。致死量の光を浴びたぁ~・・・と見事にノックアウトでした。

また、1サビの『それでも僕らは ただ、好きだってこと。』という歌詞は、最初聴いた時は"僕"と初音ミクが音楽を愛していると言っているのかと思い、「いいなぁーー!!」と浸っていたのですが、どうなんでしょう。後から読むと自分含めたボカロファンが初音ミクを愛しているという歌詞な気もしてきたんですが、果たして・・・。(自分はやっぱり前者だと嬉しい)






書きたいことは以上です。
今日の昼にゼロから書き始めてるので勢いでなんとかしてる部分があるのですが、大丈夫でしょうかw ここまで衝動的に書くのはかなり久しぶりですし、せっかくなのでこのまま走り切っちゃおうという記事になっております。
良い体験をありがとう瀬名航さん。

この曲が新アルバム「せなのおと3」にリードトラックとして収録されているそうで、ボーマスまだ参加できるか確定してないのですがめちゃめちゃ行きたくなりました!!頼む~~~


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