【ボカロ中心に解説】「倍テン」と「頭打ち」について
どうも。先日こんなnoteを投稿した者です。
今回は、前回話しそびれてしまった「倍テン」の話をしていこうかと!
またそれだけでなく、"加速"という点で似た意味合いを持つ「頭打ち」というリズムについても話していきます!
ではさっそく。
倍テンとは。
こちらは、前回の記事で「半テンとは何か」というのを納得していただいた方なら感覚的にわかるのではないでしょうか。
半テンは半分のテンポになったかのように感じることでしたね?
つまり、倍テンとは「倍のテンポになったかのように感じること」です。わかりやすいですね!
わかりやすくて有名なのはこのあたりでしょうか。
倍テンしているのはラスサビ、時間でいうと3:00~の部分ですね。
ラスサビに本格的に入ったところで「加速したな」という感じがしませんか?これが倍テンです。
このようにテンポが速くなったように感じるので、倍テンは最後の盛り上がりとしてラスサビやアウトロに使われるケースが存在します。
有名な曲をもうひとつ。
すべてのサビ、そしてその直前のBメロで倍テンしています。1:10~あたり
こちらがアウトロで倍テンする曲。時間では2:58~あたり。
最近ですと、「グッバイ宣言」が殿堂入りして今話題のChinozoさんが、その前作で使用していますね。こちらは1サビ後半とラスサビ後半で使われています。2サビでは省略して間奏に入るのが技巧的。
正直、こちらは半テンと比べるとそれほど採用されいるわけではないという印象です(というか半テンがめちゃくちゃ使われてる)。
ですが、だからあまり使わない方がいいかというとそんなことはなく、あまり使われないからこそ使われた時により意外性があり、リスナーの意表を突けるのだと私は思います。Chinozoさんが使った時はちょっと感動しました。個人的にはもっと使われてほしい手法です。(ボカロPの方見てますか!?)
半テンの項でしっかりガッツリ説明したので、今回はかなり簡潔に済みました。(もしわからないという声があったら追記するかもです)
ですので、せっかくですし今回は似た性質を持った手法にも目を向けてみたいと思います。
それが「頭打ち」というリズムです。
急にわかんねえ用語出てきたなと思った方がいるかもしれませんが、そう身構えないでください。
こちらは半テンや倍テンと比べると言葉の知名度こそ劣りますが、曲に採用される度合いや重要度では引けを取らないくらい大事なリズムです。
むしろ、「こういうリズムがあることは知ってたけど、こんな名前だったんだ」という方がいるんじゃないかな、と思います。
では解説!
頭打ちとは。
まずは用語説明ですね。
頭打ちとは、スネアドラムを1拍目から表拍で叩くリズムパターンのことです。
文字通り頭(の拍)で叩いているから頭打ちというわけですね。
・・・はい。
「スネアドラムってなんだよ」と思った方がいるかもしれません。
ですので、次はスネアドラムの説明を!
この音がスネアドラムです。
もちろん曲によって音色が変わりますので差異はありますが、だいたいこんな感じの音!
ドラムの中でシンバルの次に目立ってる音になるのかな?感覚的には。
で?これを1拍目から表拍で叩くと頭打ちになるって?
つまりこうです。
スネアの音だけだと1拍目とか表拍とかわけわからないのでドラム全体を打ち込んでますが、スネアがどんな音かわかっていればなんとなく聴こえてくるのではないでしょうか。
では具体例を聴いてみましょう!
頭打ちってどんな曲に使われてるの?
おそらく誰もが知る有名曲です。実は頭打ちが使われてるんですね~。
使われているのはサビ全体。時間だと0:57~です(要は1サビ)。
”カゲプロ”ことカゲロウプロジェクトが爆発的にヒットするきっかけとなったこの曲でも、サビで頭打ちが使われています。0:59~付近。
サビで頭打ちしている曲を2つ挙げましたが、イントロで採用される曲もあります。たとえばこれ。
再生時間だと0:11~
Cメロで頭打ちしている曲もあります。動画ではこの部分で「ここすき」というコメントが非常に多いのですが、2サビ直後で頭打ちをすることで疾走感がさらに上がるのが人気の秘訣です。
ここでも例によって邦楽で使われている曲も紹介します!
不動の人気バンドから今キているアーティストまで、広く使われている手法だと伝わるでしょうか。
頭打ちの特徴って?
実はこのリズム、ラスサビで使われることが非常に多いです。
どうしてかというと、普通のビートより疾走感が増すから。
三度目のカゲプロ曲です。(ステマかな?)
イントロでも頭打ちが使われているのですが、注目すべきはサビ後半の方。再生時間でいうと1:39~のあたり。
ここの部分で感じるのは畳みかけ感です。
前半でもサビですので盛り上がった展開なのですが、後半にくるとそこからさらにクライマックスになったように感じませんか?
これが頭打ちの効果です。
音楽的な話をすると、スネアの数が倍になっているから。ちなみに半テンではスネアの数が半分になっています。
では倍テンはなんなんだ?という話ですが、倍テンは裏の拍で、頭打ちは表拍でスネアを叩いているという違いがあります。
難しい話をしましたが、ポイントは「頭打ちにすることで疾走感が増す」こと、そして「倍テンとは似て非なるものだ」ということです。
「倍テンと似て非なるもの」というのを具体的に言うと、倍テンほどは速くなったように感じません。
そう、ここが今回一番伝えたいことのひとつです。
頭打ちと倍テンでは、倍テンの方が体感でテンポが速くなったように感じる。
詳しく説明しましょう。
倍テンと頭打ち
比較してみました。前半が倍テン、後半が頭打ちとして両者ともオーソドックスなドラムパターンを用意してあります。
これら2つを聴き比べてみてください。前半の方が速く感じませんか?
「ちょっとわかりにくいなぁ」という方のために、後半の変化部分のみを単純比較したものも用意しました。
(変化前の部分がなくなったので倍テンという定義からは外れてしまいますが、便宜上の措置ということでご了承ください)
「頭打ちがゆっくりに聴こえるのはバスドラが少ないからなのでは?」という声もあるかもしれませんので、さらにバスドラの数を合わせたバージョンもご用意しました。笑
ここまでやれば比較できているってことでいいですかね!
で、ここまでやっても私は前半の方、つまり倍テンの方が頭打ちよりテンポが速いように感じるのです。理由は強拍の位置なのかな~と。
強拍っていうのは文字通り強い拍で、アクセントがきている拍です。今回でいうとスネアドラムの位置ですね。(どこがスネアドラムかは、もう解説は必要ないですよね?)
先ほど言ったように頭打ちはスネア=強拍が表で、倍テンでは裏となります。ということは、裏拍が強調されているとテンポがより速くなっていると感じるのではないでしょうか。
ここで言ったようなことを解説している文章は他に見たことがないので、あくまで個人的な解釈というか仮説です。(もしあったら教えてください!)
ですが私の中ではけっこう腑に落ちるなーと思っています。
たとえば、ライブで曲に合わせてジャンプしたりするじゃないですか。サイリウムを振るでもいいです。その時ほとんどの人はタイミングを合わせてやると思うんですけど、どのタイミングに合わせるかって頭の拍だと思うんですね。Hand in Handのサビなら「はーんでぃんはん!」の頭の「は」の部分、劣等上等なら一番目の「ダッ」、ロキなら「ロキロキの」の最初の「ロ」。ジャンプならこのタイミングで着地するようにジャンプするし、サイリウムならここでサイリウムを振り下ろすようにしてるんじゃないでしょうか。
頭の拍、つまりは表拍ですね。ですから「曲のリズムを見極める時はまず表拍を意識する」と言い換えることもできます。もっと言うなら、表拍を強調・・・アクセントと考えているわけです。
ここまでを前提として、さっきの強拍を引き合いに出します。倍テンは裏拍にアクセントが置かれていますね。つまり、意識していないタイミングがアクセントになっているということです。
「じゃあどっちが正しいアクセントなの?」という疑問を飲み込んで話を進めると、アクセントが表にも裏にも来ているように聴こえるということになりますね。だから倍テンした時に速くなったように感じるのです。
対して頭打ちは、表拍がアクセントです。だから裏拍でアクセントが来ていると感じることがない。
だから倍テンと頭打ちを比較した時、倍テンの方が速くなっているように感じるのではないでしょうか。
・・・難しいうえにめっちゃ長くなってしまいましたが、私はこう考えています。
今日のまとめ
要点をまとめましょう。
・倍テンは2倍のテンポになったように感じるビート。
・頭打ちは表の拍でスネアドラムを打つビートで、こちらも通常のビートより速くなったように感じさせる。
・頭打ちは特にラスサビでよく使われる。
・倍テンと頭打ちでは、倍テンの方が速くなったように感じる。
これが今回私が言いたかったことです!
ちょっと長かったのと最後の方はめんどくさい話に片足突っ込んだような感じでしたが・・・雰囲気だけでも伝わっていれば幸いでございます!
ちなみに
今回紹介した頭打ちというリズムですが、特にDECO*27さんが多用しているリズムでもあります。
パッと調べただけでもう出るわ出るわw
もちろんこれで全部ではありません。ボカロPで一番頭打ちを使ってるのがDECO*27さんなんじゃないか?と言いたくなるくらい使ってます。
驚きなのはモザイクロール以前の初期の曲でも普通に使われていることですね。好きなのかなこのリズム・・・。
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