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感想:Props


「初音ミク×イセタン」のテーマソングとしてポリスピカデリーさんが書き下ろした曲です。
伊勢丹のポップアップストアではこの曲が無限に流れていたそうな。行きたかった・・・!!!

(ヘッダー画像はこちらのスクリーンショットになります。)

『明日からも僕には君がいる』って歌詞、激エモじゃないですか?

ポリスピカデリーさんとしてはひっさびさの純粋なロック曲。私の記憶が間違ってなければ「Selected!」以来かなと。(「不埒な喝采」は個人的に純ロック判定ではないです)
この曲はアップダウンはそこまで激しくなく、一貫して疾走感の強い曲調です。


今回語りたいのは、Bメロのドラム!そして曲構成!
まずは曲構成の話から。

これまでにも触れたことがあるかもしれませんが、歌モノの曲って基本的に4つ、もしくは8つをセクションのひとまとまりとしているパターンが非常に多いんです。
4とか8ってどういうこと?って感じだと思いますが、考え方の一例として歌詞に注目してみます。
この曲でいうと、

割り込んだいつもの答え
痺れを切らしてる
すれ違う人の中を
泳いで渡るのさ
Props 歌詞(動画説明文より)

一番最初のAメロ前半について、歌詞を抜き出しました。
ご覧の通り、4行ですね。これで4つです。
歌メロの作り方と歌詞の分け方次第なので例外も多いんですが(実際、この後のAメロ後半は歌詞が3行だけど4つカウント。歌メロの妙ですね)、最も基本的な考え方はこれで大丈夫です。
また、8つっていうのは単純に4×2ということです。便宜上Aメロ前半を例として出していますが、実際には後半部分もあって、そっちも4つなので合わせて8つだよねって具合です。

ここまでが前提です。
急にこんな話を始めて何が言いたいんだって話なんですが、これを踏まえてサビに注目してください。

憧れだけじゃない思いのかけら
覆ってもまだ透けてしまうみたいだ
明日からも僕には君がいる
絡まってた音溶け出した
奏でて今
Props 歌詞(動画説明文より)

5行です。
つまりこのサビは4つではなく、5つ。通常の構成より1つ多いんです。1つ多いことによって、最後の5つ目『奏でて今』がはみ出たような、浮遊感を与えます。そしてこの曲ではその部分ではスネアが使われずシンバルとバスドラのみ叩かれています。浮遊感を強調することで、サビの終息感を意識させるような表現をしています。

次に、5つ目で終息させた後の展開です。この曲は1サビ2サビラスサビとサビが3つある構成ですが、その後はそれぞれ「イントロとは違うメロディの間奏に移行」「半テンしてCメロに移行」「演奏を止めるブレイクを挟み、イントロと同じメロディのアウトロに移行」という展開をしています。
サビで先の"浮遊感"を押し出すパートが来た場合、まず想像されるのが「半テン」「演奏を止める」「イントロに戻る」という進行。実際、これらはすべて2サビとラスサビで採用されている要素です。
問題は1サビ後。「ジャジャッ、ジャジャッ」というこれまでと異なるギターリフによってリズムの切り返しをしています。しかしドラムのビートはイントロとほぼ変わらず、2番への接続を違和感なく達成している。

この「1番Aメロと変わらぬテンションを出しながらも、ギターのストロークを変えることで印象的なリズムを作り出している」ところが地味ながら、ものすごい離れ業をしているポイントです。


次にBメロのドラムの話!
これはもう、まず聴いてください。

1番Bメロのドラムだけを抜き出しました。
皆さんは"裏打ち"という概念をご存知ですか?よく4つ打ちと一緒に使われるリズムで、「ズッチーダッチー」の「チー」の部分のことです。それこそポリスピカデリーさんの他の曲では「セパレイト」のイントロで使われています。
一方このビートはその逆。いうなれば「表打ち」をしているんです!変な言い方をしましたが、表打ち自体は非常によく使われるリズムです。このビートの表打ちが特異なのは、多くの裏打ちリズムのようにハイハットの音を細かく切っていること。

比較用に、ハイハットを細かく切っていないバージョンも用意しました。それ以外は全く同じですので、両者を聴き比べてみてください。
前者は「チーッ、チーッ、チーッ、チーッ」と刻んだような音で、後者は「チーチーチーチー」と音が伸び続けているのがわかりますか?この曲では前者、音を細かく切っている方が使われています。これが本作の大きな特徴のひとつです。

これの何が良いのかって言うとうまく説明できる自信がないですが、このビートって多くのドラム経験者が思いつくフレーズだと思うんですよね。「裏打ちでハイハットを細かく刻むパターンあるよね・・・じゃあそれを表打ちにしてみたら?」みたいな発想で。しかし実際に採用されることがあまりないフレーズでもあります。理由はおそらく演奏のしづらさ。
この細かく刻むリズムはどう実現しているのかというとですね。ハイハットって実は開いたり閉じたりする2枚組のシンバルで、シンバルが開いている時に鳴らした音を閉じることでミュートすることができるんです。そのシンバルの開閉はペダルで行っていて、大抵のドラマーはそれを左足で操作するんですが、裏打ちを切るのに比べて表打ちを切るのってけっこう大変なんです。
まぁそんな事情からなのか、表打ちを細かく刻んだようなリズムがあまり採用されることはないイメージなのですが、この曲ではそれが使われています!!!!それだけで100億点!!!!!!!!
ほ~んとに、ドラマー夢のリズムですよ・・・。

また、今紹介したのは1番のBメロですが、2番Bメロもおもしろくて。

注目してほしいのはBメロ序盤なので、Bメロに入る前のAメロ部分からドラムだけ抽出しました。
上に貼ったものだとBメロに入るのが0:04~ですが、フィルがBメロの最初の方まで食い込んでいるためスネアのタイミングが前にズレているのですが、前にズレているためスネアの叩かれない空白部分が長いのです(空白といっても、バスドラとハイハットはずっと叩かれているわけですが)。こんな感じでタイミングのズレが生じた場合、スネアが叩かれない部分が続くのはけっこうな違和感を残すためそれをどうにか減らそうとすると思うんです。ゴーストノートのタイミングでスネアを入れるとか。そこへいくとこの曲はフィル部分から次のスネアまで一切スネアを追加するといったことをしていません。ここに強い意志を感じるというか、「あえてそうしているんだ」という印象を受けるんです。それが良い!!
ドラマーは、強い意志を感じるドラムが大好きです!!




私から言いたいのは、以上です。
自分の大好物である曲構成とドラムについてよく練られているのが感じられて、個人的にとても嬉しい曲でした。

あとは最後にひとつだけ。

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