感想:7150日
『今日で7150日』
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氏の個性や魅力を存分に発揮した瀬名さんらしい新曲だ。音一つひとつへの気配りもさらに磨きがかかっており、「aimai」などで感じたドラムの、特にハイハットの打ち込みらしさはほとんどなくなっている。
以前からその柔らかくスキップするような軽快な音使いによる気持ちよさはあったが、それより増して心地よく聴くことができる。
サビの最初にある歌詞の繰り返しが印象的だが、これは瀬名さんだからこそ魅力的に押し出せるメロディだとふと思った。
たとえばロックなどでは概してかっこよさが強調されることが多いため、このようなある種安直なリフレインを、しかもサビの頭に持ってくるのは、ともするとダサいと思われる可能性すらあるのではないだろうか。キャッチーさとダサさとは紙一重だからだ。
それを瀬名さんの音使いでもってキャッチーさをかわいさに昇華させているのだ。歌詞の端々から覗く「幼さ」も、そのかわいさを自然にしている。
また、この歌詞が与える印象はそれだけでない。かわいさをそれとなく後押ししながらも、『人が少し怖くなった』『ほんとは嘘つきたくない』など、綴られるのはシリアスな言葉だ。
音は軽快で楽しい気持ちになる反面、歌詞はどこか切なく悲しい気持ちにさせる。曲が進むにしたがって、この矛盾が私たちをなんとなく不安にさせる(少なくとも私はそうだ)。
2サビが終わっても間奏を挟むことなくCメロへ繋がり、後ろ向きととれる言葉を歌い続ける様子で、その不安はじわじわと高まっていく。
そしてそれを綺麗に取り去ってくれるのがラスサビからの展開だ。『誰かもきっと死にそーだろうけど』から最後までの部分だ。ここで新しいメロディが入り、曲の見せる色が少し変わる。
ここで今まで溜まったフラストレーションを完全に解消してくれることはない。しかしこのラスト部分の歌が、アウトロの波がゆっくりと引いていくような締めくくりが、抱えていたもやもやを違った余韻に変えてくれるのだ。
私の貧弱な語彙力と表現力ではうまく説明することができないが、こういった曲展開の妙がこの曲にはあると思う。私はそこを聴いて好きになった。
要は最後の部分がめちゃくちゃ好きだと言う話です。
最後に話した「展開」の話については、前に記事でまとめているので、興味がある方はぜひこちらも読んでいただければ。これをきっかけにこんな曲が好きになった人が増えてくれれば嬉しい。
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