招聘
その戦いはおよそ荒唐無稽だった。だれかが夢を見たときに人はそういう。前例があってもそうであるのに、前例がなければちくりちくりと刺していく、その重箱の小さな隙間に穴を見出すために人は躍起になる。心配を思うのか?否、人はそんなに人に寄り添ってはいない。平凡な道を歩むとき、人は一瞥さえくれないだろう。
ーー総大将はそう言った。兵士たちはまさか男であるのに、女の配下に下り一兵卒として耳が女の声を求めている現実が来るとは思っていなかった。これは夢だと誰もが女の声に耳を傾けながら、心の悪魔に抱かれていた。いまだに男たちは女を信用してはいなかった。女が美しいことは認めても、美しいゆえに総大将と認めるわけにはいかなかった。
女は続けた。
前例を私が作る。そう約束しても誰もついてくるものはいないだろう。なぜなら私が持って生まれたものはこのように不自由極まりない体だからだ。鎧を身に着けて生まれてくるべきであったのに、神は容赦なくはぎ取った。強い意志と強い力がことをなすときに必要であったのに、それすらも天使に銘じてはぎ取って、地上に落とした。生まれたのではない、私はこれでは戦えないと抗ったのだから。
ーーー男たちは目の色を暗黒色にし、悪魔に心を委ねた。女は鋭敏に感じ取り、こう発した。
私は女だ。しかし忘れるな、私は総大将である。他方おまえたちは一兵卒だ。立場をわきまえろ。総大将の一言でお前たちの命は銀河に消える。最初からあった魂は最初からなかったものにされる。立場をわきまえろ!
ーーー男たちの目から色が消え、白色に濁った。女は意識を高め、背筋を伸ばし、しっかりと部隊を見下した。
部隊は恐れたが、目が白く濁っているからその恐怖を女に伝えることもできなかった。女はその光景を鼻であざ笑った。
腑抜けが。何を恐れるか?おまえたちの心の恐怖をしっかりと見ろ。おまえたちのその心に巣くう悪魔と戦うことだ。そうでなければ部隊では戦えない。見極めろ、しっかりと自分の心を。
部隊のひとりひとりの目がまた濁りを増した。女あざ笑い心に言葉と矢を放った。
行け、無間地獄に落ち、自ら駆け上がってこい。話はそれからだ。
忘れるな、私が総大将であることを。
お前が前例になれ、お前だ、お前が心に感じ目で見ることをビジョンとして送るように。忘れるな、その恥はいずれ栄誉となりお前の冠となる。
ーーー一人の男が名指しされた。同時だった。部隊の一兵卒たちは無間地獄に落ちていった。
<<to be continued...>>
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