新車が来た。注文してから一年以上経ったのだが、ようやく新車が来た。
「車を取りに行く時は、家族で行こうねってパパが言ってたよ」
と娘が言ったのは一週間ぐらい前だったか。車に無頓着な私は「家族が車を取りに行っている間に、家じゅうの掃除機をかけよう」
と思っていた。でも特に他に用事があるわけでもなく、旦那様も、車を一緒に注文しに行った娘も大張り切りだし、息子も表には出さないけどわくわくしてるし、そんな家族と一緒に行くことにした。

思えば12年まえ、今の車が来た時も、春だった。その時は息子はまだ赤ちゃんでベビーシートに乗っていた。家族3人で花見に行こう!と車屋さんから出発して間もなく、”ドンッ”と衝撃を受けたのだった。信号待ちをしているところで、おばあさんがおかまをほって来たのだ。
あの時の旦那様のショックそうな顔は、今でも忘れられない。
「前に車を買った時は、こんなことがあったんだよ」
「今度の車はハイブリット車なんだよ。ハイブリッド車というのはね…」
と子供たちに話しながらドライブした。

そして新車の一番最初のドライブ先に選んだのは、海だった。
「海に行くけど、泳げないよ。寒いからね」
と親が言うと
「ええ!入りたい!」
と娘。娘はかつて、4月に海にドライブに行った時に肩までつかり、寒くて寒くて大泣きしたことがあるのだ。

結局靴と靴下を脱いでズボンをめくり、ズボンが濡れないところまでならOKと言うことになった。
「ええかね?服を濡らしなさんなよ。今日は着替えもタオルも持って来てないからね!」
と念を押され、子供たちは海へかけて行った。いくら言っていても、結局は濡れるだろうと思っていた。濡れたら寒いし、丁寧に拭いてやろう。ハンドタオルしかないけど。
あ、そういえば、たった今車屋さんからバスタオルをもらったではないか!と思い出し、旦那様は車にバスタオルを取りに行った。

子供たちはふくらはぎが濡れるぐらいのところで遊んでいる。波が満ち引きするのに合わせ、息子はちょうど濡れないぐらいのところでダッシュを繰り返している。波は引き潮だ。
その時だった。大きな波が来て、子供たちは悲鳴を上げながら逃げてくる。私も逃げるべきなのは分かるけど、砂浜で素早く動けない。あれよあれよという間に水が来て、ショートブーツの中までびしょびしょになった。子供たちも膝上まで濡れて、波打ち際に置いていた靴を靴下も流され、逃げるついでに拾っていた。
私は思いもしなかったことに、大笑い。笑いすぎて目が細くなりすぎて、目が開けられなかった。水が引いた後に
「目が見えん、目が見えん、助けて」
と息子に救助を要請し、彼は私の手を引いてくれた。
その後も子供たちは波打ち際で遊び、私はさっきよりも海から離れて見守っていた。そこに旦那様が登場。私が一部始終を話すと、
「あーあ、新車が砂だらけになる…」
と言いながら、笑った。ああ、そうか。

しばらくして「もう帰る」と子供たちが言い出し、「乾いた砂で水分を落としてから、お父さんのところへおいで」と旦那様。丁寧に足をふき、靴の砂を払った。先に終わった娘を追いかけて私も車に戻り、車のそばで待っていた。そこに旦那様と息子が来て、子供たちは靴を脱いで車内へ。旦那様は私の脱いだショートブーツの砂を丁寧に落としてくれた。

ああ、そう言えば何年か前の夏、山口県でも同じようなことがあった。周防大島町で 子供たちが水着で泳ぎ、砂浜では歩けない私は水着で波打ち際で座り込んで遊んだ。いざ帰るときには旦那様が大活躍。更衣室はないから女子はトイレで着替えろと指示を出し、靴の砂を払ってくれたりしたものだ。
その翌日に、同じ町で2歳児の遭難事故があり、驚いたものだ。
https://hochi.news/articles/20180816-OHT1T50050.html?page=1

帰りに温かい飲み物を買い、家では熱いお風呂に入ったのでした。

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