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【怪談】とあるツイキャス主の話

「いや、私、ショタカテでツイキャス配信してたんだけどー」


と、話すのは高校時代の友人。目鼻立ちは整っているのでなるほどと納得してしまった。


本人曰く、配信アプリを使って日々小銭を稼いでるらしい。


「話すの好きだし、聞いてくれる人とは仲良くなれるし、お小遣い稼ぎには丁度いいしで一石三鳥くらいだったんだよねー」


しかし、2ヶ月ほど前にぱったりと辞めてしまったのだという。訳を聞こうとすると、待ってましたとばかりに彼女は話し出した。






きっかけは、彼女にとってなんでもない夜。仕事の後いつものように配信を終えて、シャワーを浴びお菓子をつまみながら就寝しようとした時。


_________誰かに見られている。


そう、思ったらしい。当時は恐怖より警戒する気持ちが勝ったらしく瞬時に全てのカーテンを閉めた後に家の中の点検をした。誰も見つかりはしなかったし、形跡もなかった。

明日は仕事で早い。車で30分ほどある実家に戻るのも面倒くさいと思った彼女は、その日は一応自室の鍵を閉めて就寝したらしい。


翌日。きっちり戸締りをした彼女は仕事に。仕事中は特に何も起きずつつがなく時間は流れていった。


休憩中、Twitterで「今日は配信おやすみします!」と呟いた。元々その日は休みにすると決めていたらしい。ちらほら来ているリプライを見ていたら、あるひとつのアカウントが気になった。

「ごめんね!💦」と一言。配信を休む旨のツイートにリプライしていたのだという。なんで「ごめんね」なのだろう。まるで、自分のせいみたいな__とまで考えたが、流石にないだろうとリプライ全てにハートをつけてTwitterを閉じ仕事に戻った。


仕事終わり。彼女は自身の住んでいるアパートに帰ると、入口にある新聞受けを確認する。




小さな鉄製の扉を持ち上げた、瞬間。




べちゃり。


目の前に流れ落ちるなにか。そして途端に周囲を包む異臭。何かを腐らせたような、それとも違うなにかの匂いを鼻に吸い込んでしまう度に吐き気を催す程だ。慌てて鼻を塞ぎ、あまりそのなにかを確認せず2階に駆け上がり玄関の鍵を開ける。そして入った後に直ぐに鍵を閉めて、震える手で実家の電話番号を入力した。


30分ほど経てば実家にいた母親と姉が駆けつけてくれた。玄関を開けた時に彼女が見た母親の顔は真っ青になっていたという。


「顔真っ青だけど、大丈夫?ごめんね、私が呼び出したから?」


「違う、違うってあんた。…水商売とかやってない?恨みを買ったりとかは?」


「なんで…してないよ。このストーカーもなんでかは知らないし。」


「…………これ、警察行こう。ね?」


深刻な顔で母親は言った。当人でもないのに真っ青なのは流石におかしさを感じていた彼女は当惑したらしい。


「え、でも…実際にないんだから分からないでしょ…扱ってくれないって。」


「あの新聞受けに入ってたの。」



胎盤だよ。



助産師だった母親が放った言葉で、彼女はそのまま意識を失ったらしい。


母親に看病され意識を取り戻した時には、あれは警察に回収されてしまった後だった。姉が通報したらしい。



犯人は未だに捕まっていない。他人が怖くなった彼女は、配信アプリをやめてしまったらしい。配信アプリとは全く関係の無い事件かもしれないが、あの「ごめんね!💦」のリプライが頭からこびり付いて離れないそうだ。そのアカウントは確認した時にはもう無くなっていたらしい。


「ま、実害はないし。すぐ引っ越したし色々対策したからいいかなと。笑い話にもなったしねー」


と言いながら快活に笑いとばす彼女はとても逞しかった。



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