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【怪談】浴槽の彼女

お風呂に1人で入っていると、なんだか怖くなる時があるんです。それは、多分小学校の頃の記憶が頭の中にこびりついているのだと思っています。


そういったのは学生時代の後輩でした。ここでは仮にFとします。まだ昼下がりで、光が差し込むのどかな雰囲気のカフェには似合わない暗い表情だったのを覚えています。


彼女が小学生のころ、お風呂での怖い話が小学校で大流行したらしいです。内容はお風呂に1人で浸かっていると、排水口から腕が伸びてきて引きずり込まれてしまうだとか。

人間の腕があんな小さい排水口を通るわけがないのですが、当時の彼女たちは大まじめに怖がっていたそうです。でも、ここまでだったらただの噂ですし、学校の七不思議と大差ありません。それなのに今もFが恐怖を感じているのはなぜなのだろうか。


そう尋ねると、何かがのどに詰まったような、困ったような顔をして、小さな声で話を再開しました。


「その噂の出どころは町の少しはずれにある廃屋に肝試しに行った中学生だったんです。そこに私の兄もいました。どうして小学校に広がったのかはわからないんですが…私は広めてないので。ぐるっと回って、一番怖がらなかった奴が何かのカードをもらうとか…そんな感じの話だったような気がします。それで、実際彼らは廃屋を一周したようです。当時はヤンキーのたまり場にもなっていたようで、落書きがいっぱいだった!とやや興奮気味に話していました。」


兄は落書きの話をした後、Fを怖がらせようとおどろおどろしく続けたそうです。けど当時彼は中学生。話し方は稚拙なので、やや面白がりながらFは聞いていたとのこと。


『畳があったんだけどボロボロで、下の木が見えるくらいにボロボロだったんだ!あと、ヤンキーがいたのかカップラーメンがあったり変な箱も多かった。風呂の方にいくと扉がガムテープで貼られてて行けなくなっていてさ、時間がなかったからお風呂の中に何かないか、じ~って見てみたんだよ!そしたらさ…何見えたと思う?うでだよ、うで!絶対あれは腕だったね。ドアがザラザラだったからほとんど見えなかったけど、腕が見えたんだよ、俺には!俺はみんなにおーい!って呼びかけたんだ。あ、いや、怖かったけど…ガムテープで閉じてあるし、封印?的なのがあるだろって思ったんだよ。いや~俺勇気あるな~…みんなが来た頃にはなんもなくなってたんだけどさ。マジで絶対腕だったんだって』


大体こんな感じの内容だったそうです。それでも私は子供のたわいないうわさなんじゃないか…と思ったんです。けど、青ざめたFの発した一言で私も言葉を失いました。



「今年、あの廃屋の風呂場から女性の、白骨死体が見つかったそうです。死体遺棄事件でした」


白骨死体として見つかった彼女は、「封印」されていたのでしょうか。それとも。


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