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VRoid StudioでのVRM出力時、透明メッシュは削除したほうがいい?

Blender等での改変を前提に、VRoid StudioでVRMファイルを出力する場合、「透明メッシュを削除する」のチェックを外すことが、少し前まで慣例となっていました。しかし、VRoid Studioの改良が進み、透明メッシュを削除した場合に起きるトラブルもかなり少なくなってきました。加えて、透明メッシュを削除しないと、clusterなどのメタバース環境において、ポリゴン数の制限を逸脱する恐れがでてきました。



1.透明メッシュを削除するメリット

VRoid Studioを使ったVRMモデルの制作は、CG初心者にとって、オリジナル3Dアバター制作の第一歩となっています。チュートリアル動画などを参考にしながら作業すれば、CG分野に縁がなかった人でも、自分だけのアバターを無料で手に入れることができます。

一方、2,3年前に公開されたチュートリアルでは、VRMファイル出力時に、「透明メッシュを削除する」のチェックを外すことが、よく指示されていました。しかし、実際には、削除した方が、モデルが必要とするメッシュ構造が見やすくなり(Fig1.及び2)、作業ミスが減らせるメリットの方が大きいと思います。

Fig.1

上図(Fig.1)の左側が透明メッシュを削除しないまま出力した場合、右側はデフォルトである削除する設定で出力した場合です。
Blenderのマテリアルプレビューでは、見えるところは両者とも同じです。

Fig.2

しかし、ソリッドモードで見ると、特に衣服の部分の見え方が全然違います。編集モードでテクスチャーがあてられているメッシュを操作したい場合、手前にあるメッシュをHキーでハイド状態にするか、削除することになります。


2.VRoidStudioでのVRMファイル出力時の設定

VRoid StudioでのVRMファイルの出力時、まず、VRMのバージョンのうち、0.0と1.0のどちらかを選択します。そして、不必要にモデルを重くしないため、「ポリゴンの削減」のメニューでは、「透明メッシュを削除する」に、チェックを入れます(デフォルトで既にチェックが入っています)。

具体的には、VRoid Studioの画面では、下図(Fig.3)のように、透明メッシュが削除される設定になっています。

Fig.3

一方、Blenderによるアバター改変のチュートリアルでは「透明メッシュを削除する」のチェックを外すように指示されることがあります。

この目的について、はっきりしないのですが、テクスチャの一部が削除されてしまうバグがあったのかもしれません。また、シェイプキー(ブレンドシェイプ)の動作がおかしくなることもあったようです。

3.透明メッシュを残した場合の問題点

Vroidをベースに、Blender等で改変を行いたい場合、透明メッシュを残すと、実作業において、いくつかの問題が生じます。

下図(Fig.4)に示すように、ワイヤーフレームで見ると、透明メッシュを残したモデル(左)と削除済みモデル(右)とでは、メッシュ構造の見え方がかなり変わります。

透明メッシュに包まれているので、先も述べましたが、内部メッシュにアクセスするには、Hキーなどで非表示にしながらの作業になります。

Fig.4
ワイヤーフレーム表示にすると、右の透明メッシュを削除したモデルに比べ、左のモデルでは、透明メッシュによりテクスチャがのったメッシュがどれか、判別しにくくなっています

さらに、気になる点として、透明メッシュ未削除のモデルでは、衣服を中心にポリゴン数がかなり増大します。Vroidは様々な衣装バリエーションに対応させるため、本来使わないメッシュも、処理の都合上、残していると思われます。

Fig.5

上図(Fig.5)では、左の透明メッシュ未削除モデルの全体のポリゴン数は78,650であり、右の透明メッシュ削除済みモデルは55,914で、衣装のポリゴン数だけで2万以上の大きな差になっています。

ちなみに、clusterにおいて、VRM1.0のアバターをアップロードする場合、このケースでは透明メッシュを削除しないと、その制限(上限72,000)にひっかかります。


4.特定の透明メッシュを残したい場合の方法

Faceオブジェクトのまつ毛、アイライン、瞳のハイライトなどは、シェイプキーの影響を受けるため、透明メッシュは残したいと考える方は多いと思います。しかし、VRoid Studioの出力時の設定では、全ての透明メッシュを対象とするため、部分的に残すことができません。

一方、VRoid Studioでは、テクスチャ画像に1ドットでも透明色以外の色情報が存在するとそれを含むポリゴンは透明メッシュと見なされず、削除対象から外れます。

下図(Fig.6)は、VRoid Studioから、目のハイライト部分を描画するテクスチャを画像として出力し、それをPhotoshopで背景レイヤーを置き、そこに、白色をバケツツールで塗った状態です。不透明度は1%の最低値に設定しています。

Fig.6
背景レイヤーを別に作り、そこに、バケツツールでレイヤー全体に白色を薄く塗ります

Photoshopから出力したpngファイルを、再びVRoid Studioにテクスチャーとして読み込ませ、透明メッシュ削除の設定で出力したモデルをBlender上で観察しました。それを下図(Fig.7)に示します。

まず、見た目の違いですが、向かって左が、目のハイライト全体に、極薄く白色が塗られているのですが、3Dビューポート上では、右の対象モデルと比べ、違いはわかりません。

Fig.7
目のハイライトを画面上で観察しても、薄く白色を塗った場合(左)とそうでない場合(右)とで、ほとんど変化はわかりません

しかし、メッシュ編集モードでは、下図(Fig.8)に示すように、ハイライトに相当するメッシュを見比べると、左側のメッシュは両眼ともメッシュが丸く残っていますが、右側の未処理テクスチャーのモデルでは、透明部分のメッシュが削除され、虫食い状態になっています。

Fig.8
編集モードで目のハイライト部分のメッシュを比較した図。左が薄塗したモデル、右がそうでないモデル。眉毛にあたるメッシュは、両者とも透明メッシュ部分は削除されています

目のハイライトのように、見え方にデリケートなメッシュにも本方法が適用できるので、利用範囲は広いと思います。


まとめ

VRoid Studioからの出力時、透明メッシュを残すかどうかは、その後の改変計画や、利用形態によって判断が変わることがあると思います。しかしながら、残った透明ポリゴンが障害となって、メッシュ編集がやりにくくなり、思わぬミスを誘発しかねないため、VRoid Studioの出力時に透明メッシュは削除の設定(つまり初期設定のまま)しておいた方が無難でしょう。
 さらに、VRM1.0の利用においては、現状、ポリゴン数を意識する必要があり、不要なポリゴンは積極的に削除した方が、最終段階になって減量化を迫られるよりも負担は少ないと思います。

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