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頑張らなくっていいんだよ。
これは当事者しか知らない、まだ誰にも話したことの無い物語。
僕は、比較的年下から慕われるタイプだ。(この子はその中でも特別であったが)
そんな事を自覚し始めたのはいつ頃だろう。
面倒見がいいから?優しいから?無害だから?理由なんてどうでもいい。
答えを求めようともどうせ見つからないんだから。
これは数学ではないのだ。強いていえば虚数である。ピタゴラスが目を背けていたように、僕も過去から目を背けていた。
彼女との出会い
出会いだなんて、大それた言葉を使うけどこれは運命的な事なんて起こってはいない、当時は少しそんな事思っていたかもしれないけど、これはただの日常の延長線上だ。
いつものように服を買いに出掛ける。
僕は基本一人行動で、ものを買う時なんかは常にイヤホンをで音楽を聞いている。服屋は特にそうだ。欲しいものがあればこちらから話しかけるのにすぐにあっちから声をかけてくる。
ある意味の自己防衛。自己を投影するための服をなぜ他人に勧められなければならないのだ。
そんな事を思いながらその日も服を見てた。
だが、その日は違った。彼女は手も空いてそうに見えたのにこちらに服を勧める気配はなかった。(後で知ったのだが、彼女は働き始めたばかりで話しかけるべきか迷っていたらしい。)
いつもなら、「今日は話しかけられないから楽だなぁ」なんて思うのだが、何故か僕は彼女に話しかけていた。
「どのアウターが僕に似合いそう?」
こんなことを聞いた時には、僕の中で何を買うかなんて決まっていた。
すごく真剣に悩んで、彼女は僕と同じものを選んだ。
すんなり買えばいいものの、少しからかってみたくなり「じゃあLINE教えてよ、そしたらそれ買おっかな笑」なんて、冗談混じりで言ってみた。つい、言ってしまった。
でも彼女は、またもや真剣に数秒考えたあと、ポケットからメモ帳を取り出しそっと書いたメモを僕に差し出した。
商品を売るために仕方なく、という感じはしなかった。
これをナンパと呼んでいいのなら僕は1
打数1安打ナンパ成功率100%の男ということになる。
そんなことはさておき、その日は夜も暇だったのでカフェで一服しつつ彼女を夜ご飯に誘ってみた。
「今日は17時までだからいいですよ」なんて
当時は、女性経験がなかったこともあり、僕は舞い上がっていた、薬局に走るぐらいには。
当然その夜は何も無く、ただ他愛のない会話をしながらの食事で終わった。
なぜ彼女は僕を選んでくれたのだろう
何度かデートを重ねたあと、ふと気になって、僕は聞いた。
「僕は特に顔がいい訳でもないのになんであの時LINE教えてくれたの?」
人は顔じゃありませんよ、とか、商品を売りたかったからみたいな答えだと思っていたが彼女はこういった。
「何となく私に似てると思ったから。それにイケメンはモテませんよ」なんて、
詳しく聞いた。
「イケメンが仮にモテていたとしたら世の中はイケメンであふれているはずなんです。」
「種の繁栄において、優れたオスが子孫を残せるんです。ということは、数が多いものが優れたオスでしょ、ていうことは数の少ないイケメンはオスとして優れていないってこと。」
なるほど、これは僕に似てる。
僕は反論した。
「でもその理論が正しいとしたら、平安美人顔はいっぱいいる。種の進化の最前線がイケメンになってるんでしょ。」
彼女は笑った。
「ほら私に似てる。そんなんだから彼女出来ないんだよ。」
やかましいと思いつつ、的を射ている。
彼女はこうも言っていた。
私は、コバくんのこと尊敬してるんですよ、私より色んなことを知ってるし私に色んな世界を見せてくれる。もちろん男性としても好き。
だなんて、僕からしたら彼女を通じてみる世界のキレイさ、即ち心のキレイさに憧れていたのに、そんな彼女からこんなことを言われるだなんて
そんな事を思いながら、僕も好きだよ、と答えた。
その日初めて、0.03ミリの距離でお互いの体温を感じた。
彼女が僕に教えてくれたこと
僕達は、恋人ではあったがそれらしい事はあまりしなかった。例えば、テーマパークだったり動物園だったりには、行かなかった。
別に嫌いという訳ではなく、たまに会って2人で話しているだけで満足だった。だから特別なシチュエーションはいらない。不思議と彼女とは、話のネタが尽きなかった。
他愛のない話もしたが、ものの見方だったり考え方だったり、僕の方が年上なのに教えられてばっかりだった。年齢なんて関係ないって気づかせてくれたのも彼女だ。
今の僕の考え方の大半は、思い返せば彼女の影響を受けている。
このnoteに書いた考え方はほとんど彼女の受け売りだ。
『頑張らなくていいんだよ。辛くなったら逃げちゃえばいいん。壊れきったココロは治らない。表面上は、治っててもいつか小さなきっかけでまた壊れちゃう。』
この言葉が、後で響いてくるだなんて思いもしなかった。
彼女との別れ
僕は、時給がいいからという理由で深夜アルバイトをしていたのだが、そんな安易な考えが間違いだった。
深夜バイトをして、カフェインで眠気を抑えて、大学へ行く、
そんな不摂生から自律神経が乱れ始めた。
睡眠の質がココロに影響を及ぼすことはご存知だろうか。
睡眠が乱れ、バイトにも学校にも遅れ、ただサークルと趣味のライブにだけは顔を出していた。
サークルに顔を出しても無理をしていつもどうりの自分を演じて、ココロは荒んでいく一方だ。そんな悪循環。
僕は次第に自責の念にかられ、彼女に合わせる顔がない。そう感じた。
そんな中彼女の言葉を思い出してしまった。
『ココロが壊れきる前に逃げればいいんだよ』
今思えば、これはお互い望んでいない最悪の選択だなんてことは言わずもがなだ。
そう、僕は彼女の存在から逃げる選択をしてしまったのである。
彼女ならきっと僕を救える言葉を持っていたはずなのに、救えなくても癒してくれていたはずなのに、
今や連絡手段も無いからお互いどう過ごしているかなんてわからない。
きっと僕に似ている彼女なら、僕よりキレイな世界を見ている彼女なら、広い世界のどこかで自分の世界を広げているだろう。
また逢う日を願ってなんて、身勝手なことは言えない、きっと彼女は僕と違って僕を必要としてないから。
あとがき
これは知らない世界の知らない誰かの物語。
ただ、救いがないのは現実だから。
こんなこと書くつもりもなかったのに、目を背けていた自分の過去、人から見たら大したことないかもしれないけど、僕からしたら意味のあった物語。
救いようがないバカのただの過去。
如何だったでしょうか。
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