ミャンマーの若者達が、どれほど追い込まれているのかを表す象徴的かつ衝撃的な事件
なかなかうまく言葉にできずにいるのであえて書いてみる。
書くことで、少しばかり自分の思考が整理された気もするが、それでもまだまだうまく表現できてないけど、何かが伝われば嬉しいです。
ミャンマーで起きた衝撃の若者飛び降り事件
8月10日の火曜日、ミャンマーで とても悲しい事件が起きた。
若者5人がビルから飛び降り、2人? 全員?が亡くなった。
悲惨な状況を表す写真と、イラスト化された画像が数点 出回った。
それだけ この事件は ミャンマーの人々に衝撃を与えた。
事件の 真相はわからない 前提で、確からしい情報を記載。
・事件発生は 8月10日の夜
・場所は ヤンゴン市内 の ボタタウン
・軍がアパートに押し入り銃声が聴こえた
・その直後、5人の若者がビルから飛び降りた
・2人が即死、残り3人が重傷で軍の病院に搬送
(その後 全員死亡との報道もある)
※ 軍のプロパガンダ紙 国営新聞の発表 は下記の通り
8月 10日、密告を受けてアパートを急襲。16種類の自家製爆弾や爆薬と共に、男性2名、女性1名を逮捕。
部屋にいた 男性4名と女性1名が、警察の襲撃から逃れるためアパートから飛び降り、男性1名と女性1名は即死。負傷した男性3名は軍の病院へ。
逮捕者 及び 関係者については、法律に基づいて措置が取られるよう追加調査がなされている。
ここまでが起きた事、の話。
彼らは、どんな想いで飛び降りたのだろうか。
今、ミャンマーで軍に捕まる事は何を意味するのか?
軍に捕まる事が何を意味するのか、少し考えてみる。
仮に、もし仮に、捕まった場合…
軍による酷い拷問と尋問が待ち受けている、事が想像される。
クーデター以降 捕まった人の証言によれば
「食事や水さえ与えられず、トイレに行くことも許されず、数日間 眠ることさえも許されない環境の中で、拷問を受けた」との証言があった。
傷だらけで、あざだらけで、遺体だけが遺族に返却されたケースもあった。
中には、腹が大きく割かれ、縫い付けられた状態で返された遺体もあった。
医療スタッフが銃で殴られた事件もあった。
捕まれば酷いことになる。
これが多くの人の共通認識。
「無実だったら逃げる必要はなかったのでは?」
そう考える人もいるかもしれない。確かにそうかもしれない。
しかし、事情はもう少しばかり複雑にも思う。
そもそも軍のやり方は滅茶苦茶だ。ここはもう語りだしたらキリがないので省略するが、軍に対して批判や抗議をするだけで捕まる状況にあり、今のミャンマーには、もはや 表現の自由はない に等しい。
軍に 気に入らない、と判断されたら逮捕される、ここが前提としてある。
幾ら「無実だ」と訴え、本当に無実だったとしても、軍は罪をでっちあげて、拘束し拷問を行なう。それが、今のミャンマーの軍のやり方だ。
つまり 狙われたらアウト、という感じだ。
そして、多くのミャンマー国民は、そうした認識を共有している。
捕まって、拷問を受ければ、まったく関係のない友人や家族にも迷惑を掛けることになるかもしれない。捕まった人物と連絡を取っていただけで犯人扱いされる可能性がある。そんな事が当たり前に起きている。
「軍はそんな酷いことはしない」などと考える人もいるかもしれない。
しかし、2月1日以降の軍の行動を見る限り、そんな期待は無理だ…。
捕まれば拷問を受けるし、殺されたっておかしくない。
今回 飛び降りて亡くなった中には、2月に軍に拘束され(おそらく拷問も受け)、奇跡的に刑務所から解放された者もいた、との報道もあった。
そのメンバーは拷問の辛さも、酷さも知っているだろう。
さらにいえば、次 捕まれば殺される と考えていたのかもしれない。
彼らが爆発事件に携わっていたのかは定かではない。
本当に爆弾をつくっていたのかすら、実は疑わしい。
軍は、そうした捏造報道を、クーデター以降も何度かやっている。
案の定、軍は 国営新聞の中で、下記のような報道をした。
8月 10日、密告を受けてアパートを急襲。16種類の自家製爆弾や爆薬と共に、男性2名、女性1名を逮捕。
部屋にいた 男性4名と女性1名が、警察の襲撃から逃れるためアパートから飛び降り、男性1名と女性1名は即死。負傷した男性3名は軍の病院へ。
逮捕者 及び 関係者については、法律に基づいて措置が取られるよう追加調査がなされている。
軍が " 記事にして報道した事 " は事実。しかし、捏造の可能性も残される。
それと同時に 若者達が爆発物をつくっていた可能性も、否定はできない。
しかし、なぜ彼らは死の確率も高い、ビルから飛び降りる方を選んだのだろうか。
なぜ彼らは飛び降りなければならなかったのか?
「無駄な抵抗をしなければいいのに」と、そんな声もある。
「死ななくてもいいのに」と。
その通りかもしれない。しかし、やはり 何か違う。
個人的には、暴力に対して暴力で立ち向かう方法には疑問もある。
とはいえ、圧倒的な武力で抑えつけられ、非暴力の相手にも平気で銃を向け、撃ち殺してしまう軍が相手だ。
そんな軍に対して「民衆は それでも非暴力で立ち向かうべき」などと言うのは、さすがに無理があると思う。
文句を言っただけで殺されるかもしれない。
そんな状況に置かれた事がないから、その心中を察する事は本当に難しい。想像力が追いつかない。
でも、それでも、できる限り想像力を膨らまして考えてみる。
それしか自分にはできない。
彼ら、彼女達には家族がいて、夢もあっただろう。
今となっては信じられないが、2月1日(COVID 19?)以前のミャンマーは経済発展が進み、若者も夢を語る事ができ、希望に溢れていたのだ。
しかし、クーデター以降、軍によって突然 未来が閉ざされた。
「過去の軍のやり方を思えば、今 立ち上がるしかない」
そう考えた若者達は、自分を犠牲にして戦ってきた。
2月1日以降の多くの若者達の行動を見れば、明らかだ。
あれは決して、自分のため、だけではない、と私は感じている。
もちろん、自分の未来のため、もあるだろう。
しかし、それと同時に、次世代のために、過去 軍政に苦しめられてきた他の国民のためにも戦っていたように感じている。
「まずは自分の命を守ろう」と考えるのが、今の世の中では " 普通 " なのかもしれない。
まずは自分のコップが満たされなければ、なんて話もある。その上で、他人に優しく、と、そう考えるのが一般的なようにも思える。しかし、同時に思う。そのコップの大きさを決めるのも自分なのだ。自分が これで 十分 と決めれば、それで十分なのだ。月収 5万円でも十分かもしれないし、500万円でも不十分かもしれない。それは各人が決めることだろう。
少し話を戻す。一般的には 自分の命 を優先するものだと思う。
しかし、彼らは 自分の命より、国の未来を憂い行動に出た。
まずは 自分、そう考えるのが普通だろう。
それはミャンマーの若者達も同じだと思う。そして同時にこうも思う。
その 「自分の範囲」 が圧倒的に広いのではないか?と。
自分、自分の家族・友人、近所の人、自分の知り合い、同僚 等 に留まらず
親戚、同じ地域の人、軍と戦う同世代、軍と戦う国民、世界で独裁政権と戦う若者達 など 自分の範囲 がすごく広いように思う。
自分のことだけ考えれば、家にいた方がいい。
そんな事は彼らだって十分にわかっているはずだ。
しかし、彼らはそちらを選ばなかった。
おそらく「自分のためだけでなく、国のために闘おう」と考えたのだ。
自衛のために武器をとる若者達はきっと 愉快犯ではない。
「爆発したら面白いんじゃね?」とかでは 決してないと思う。
もちろん真実はわからないけれど。
それだけ厳しい状況に追い込まれ、リスクも承知で動いたのだと思う。
いざとなったときには… とそんな覚悟で。
軍に捕まるくらいなら死を選ぶ。
それが彼らの抱えていた決意なのかもしれない。
今回 ビルから飛び降りる選択をせざるを得なかった5人。
その覚悟を、馬鹿にすることはしたくない。
もし生きていれば、と思うところはある。
生きてさえいれば いつか…と思ったりもする。
その瞬間には、衝動的なものもあったのかもしれない。
しかし、彼らは 飛び降りる選択をした。
「愚かだ」と誰かは言うだろう。
「勇敢だ」とまた別の誰かは言うだろう。
解釈はそれぞれが行なう事ではある。
ただ ここにある事実として
彼らは、軍に追われた。
どんな事情があるにせよ、捕まる事よりも飛び降りる方を選んだ。
そして、亡くなった若者がいる。
飛び降りる時に、死を考えたのか、本当に逃げるためだったのか
そこもわからない。
しかし、今回の事件を通じて思った事がある。
ミャンマー国民は、それだけ追い詰められている。
彼らの行動に、多くの人が共感したからこそ、情報が拡散された。
そういう事だと私は捉えている。
日本で、いじめを受けて自殺、そんな報道がなされる事がある。
どこか あのような状況と 通ずるものがあるようにも思う。
仕事で追い込まれて鬱になり、自殺する人も多い。
「仕事を辞めたらよかったのに」
なんて思う人も多いだろうけれど
追い詰められると、あるはずの選択肢が見えなくなる。
だから、そうなる前に 救う必要があるのだとも思う。
どれだけ、その人が辛い状況に追い込まれているのか?
想像もできないほどの状況に置かれているかもしれない。
そんな事を 出来得る限りの想像力を働かせて考えたい。
そして できる限り 広く、大きく物事を考え、
自分がやれることをやっていこう、と改めて感じた。
本当に多くのミャンマーの人達が、苦しい状況にある。
今は、クーデター後の混乱に加え、COVID 19 も猛威を奮っている。
想像を遥かに超えた次元で、精神的に追い込まれているのかもしれない。
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