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映画30S
はじめに
映画30S 考察にも程遠いですが
頭に浮かんでは消えそうな雑多な思考を
あわてて捕まえて書き出してみました
想像が膨らむ脚本
考える糸口がさりげなくちりばめられた演出
繊細な感情をとらえるカメラ
リアルと幻想が織り交ざった映像美
そして各シーンを引き立てる音楽
楽しい体験をありがとう!
3人の関係性
太陽=タケル
地球=蓮香
月=御手洗
3つが揃わないとバランスが崩れてしまう
御手洗が去って、バランスを崩してしまう蓮香
なぜ御手洗は蓮香と別れたのか
タケル(太陽)が輝いていないと
御手洗(月)は輝けない
2人の輝きを見上げるのが蓮香(地球)
→バンド時代の3人の関係性
輝く=夢を追うこと
御手洗甲の話
蓮香がする、タケルが同棲するという話に
興味なさそうな御手洗の「へぇ」
→この後、御手洗が去ることに
タケルが夢を追う仲間から欠けることによって
御手洗のバランスが崩れてしまった
御手洗はタケルが夢を置いて
現実的な結末に向かおうとしている
このまま蓮香といると、自分も蓮香も同じ結末に
なることを危惧し、夢を追うため去ることにした
この後、夢を信じて月のビジネスをはじめる御手洗
嘘の話
孤児院の話
御手洗の言葉が荒唐無稽で
嘘をついているようにみえた御手洗に
怒りの表情を浮かべるタケル
タケルは潔癖で陰りのない自ら輝く太陽
蓮香(=地球)が嘘だよ、と口にする
=地球が影となって太陽から月を隠す
御手洗の言葉は蓮香によって
最初は「嘘」だと判定された
展望台のシーンで薫から孤児院の話をきいた蓮香
「あの話、本当だったんだ…」
御手洗の言葉は10年の時を超えて
本当だと信じられることに
ガリレオの地動説と同じ
御手洗
「嘘なんてついたことないからわからないよ」
→孤児院の話
→蓮香と別れる話
どちらも、御手洗にとっては本当のこと
「月に立つ」
矢崎に語った言葉も、御手洗にとっては
嘘ではなく
詐欺でもなく
今はまだ叶っていないが
これから真実にすること=夢
御手洗はなぜ家族はいないとタケルと蓮香に言ったのか
薫曰く、御手洗が一人は寂しくて妹がいる、といった嘘に対し
(同じく寂しかった)自分が妹だ、と言ってしまった
薫は本当の妹ではないので、タケルと蓮香に家族はいないと言った御手洗は嘘をついていない
寂しくて妹がいる、というのは嘘かと思えるが、薫が妹だと名乗ったことで、ある意味嘘ではなくなった
嘘は夢であり、心からそれを信じ、努力し、
未来の自分が現実にすれば、嘘は(夢は)嘘ではなくなる
薫の話
御手洗甲
御手洗薫
孤児院で血のつながりがないのに同じ苗字
名前にもつながりがある
薫=香(カオル)=甲(コウ)
喫茶店のシーン
書類には「みたらいこう」と記載されている
薫=甲 2人の同一性
薫は御手洗が10年前展望台で着ていた
オレンジのポロシャツを着ている
薫は兄が欲しくて嘘をついたが、嘘を嘘にしないため
薫は兄を妹として深く知ろうとし、また、同じ苗字を語っている
興信所の二人は御手洗と薫が本当の家族ではないとわかっていた。
そのうえで、身内である、だから身内の詐欺の責任は身内で片付けるべき、という「依頼人」の理屈。
本当の妹になりたい薫には、ある意味都合のよい話
薫は「調査」を名目として
「兄」を深く知ろうとし、追いかけていく。
→では「依頼人」とはだれか?
喫茶店のシーンは、兄の捜索というストーリーに沿った薫自身の空想
or
未来からきた御手洗甲自身
→御手洗は未来から今に干渉し
薫に自分を探させることで、タケルと蓮香を救おうとした
みさきと薫は、同じ孤児院で育った姉妹のようなもの
(血のつながりはない)
みさきは薫が「兄」の話をする際(矢崎、三山)一緒にいない
→矢崎の事務所に乗り込んだシーン、
三山のマンションに押し掛けたシーンは薫の空想?
ラスト、展望台で迎えた朝の薫の言葉
「お兄ちゃんの居場所がわかりました」
展望台
不安や焦燥に指先を震わせている蓮香に気づいた薫が、
蓮香の手を握り
「お兄ちゃんはここにいる」
「理由はないけど大丈夫、幸せになる」
言い切る薫に、蓮香は
「御手洗くんぽい」
「きみは間違いなく御手洗くんの妹だよ」と返す
→自分の中に兄を見つけて、兄探しを終えることができた薫
薫は自分の中にいる兄の存在に満足して
タケルと別れて徒歩で帰る
普通は、こんな山道を徒歩で帰るのはありえない
なのに、タケルも蓮香も止めない
ラストシーンでは薫はビルの屋上に戻ってきている
ビルの屋上は、薫がみさきに対して
お兄ちゃんって存在しているのかな?
それとも私っているのかな?
いつか私のことを覚えてる人は誰もいなくなる、と語ったシーンと同じ
最後、兄についてまとめあげたノートを閉じ、
「またね、お兄ちゃん」
今までかけていた眼鏡をはずしている
眼鏡をかけている間は、近くを探して見つけられなかったけれど
視線をあげてみると、
兄はずっと月にいた、それに気づいたということを表している
タケルの話
展望台の御手洗は
タケルの中の御手洗は過去に抱いた夢の象徴
御手洗は10年前と同じ服(オレンジ)
タケルの空想
or未来から来た御手洗
「お前の嘘を俺が許してやる」
タケルは御手洗(=過去に夢を抱いていた自分の代わり)に
許してほしかった
or 未来から来た御手洗がやりたかったことは、タケルを救うこと
タケルにとっての過去に抱いた夢は「歌を作る」こと
だから御手洗はギターをタケルに差し出した
タケルは目の前の御手洗に一緒にこっちに来いと言われるが
こっちに残るよ、と選択している
過去に抱いた夢か、今自分を待つ夕美か、あの場で選んだ
結婚式の準備をしているとき、二人とも黒い服を着ている
→迷いや不安の表れ。
最後、白いシャツに包まれた夕美とタケル
白はタケルの迷いや不安が晴れた証
蓮香の話
蓮香には「やりたいこと」がない
蓮香がとらえられていたのは御手洗が象徴するもの
つまり「夢」
「やりたいこと」がみつけられないコンプレックス
薫が蓮香の震える手を握り、兄はずっとここにいます
きっと大丈夫。伝えてくれた言葉
根拠はなくとも言い切るその姿が「御手洗くんぽい」
その言葉で薫が御手洗と重なり「夢」への呪縛から解かれる蓮香
夢は外にあるのではなく、自分の中にある
最後に高来に「やりたいこと、見つかりました」と伝える蓮香
「やりたいこと、見つかりました」は蓮香がついた嘘であり夢
ただ、このあと嘘を本当にしていくためについた、決意のような嘘
アルコール依存から立ち直って、高来と未来を歩もうという夢
おまけ
矢崎の事務所には多数の月へのモチーフ
事務所の女性は三日月のイヤリング
「彼は嘘を本当だと信じ込もうとしていたのか」
薫に出されるお茶の茶碗はウサギの模様
矢崎は女性アイドルグループのファン
事務所にはサインが沢山飾られている
→「妹」の解釈には色んなパターンがある
薫のシーンは、不思議の国のアリス的
みさきが広場で待機している後ろのポスターに監督
登場人物の衣装や部屋など画面の色合いは
色味や彩度が揃えられている
白/黒、水色(青)、ベージュ、茶色
印象的なシーンだけ強い別の色を使っている
御手洗の服=オレンジのポロシャツ
薫のオレンジのベスト
広場で薫がぶつかったときに飛ぶ風船は赤
風船の行方は遠く青い空=月がある場所