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オノレ・ブランの大量生産方式とは?(The Bigbang Theory×経営学)

今日の題材はアメリカドラマのThe Bigbang Theoryのシーズン2 / エピソード18。

このエピソードはペニーがペニーブロッソムという花形のアクセサリーを作り同僚に売ったことをシェルドンに自慢するところから始まります。しかし、シェルドンの計算によると現在のペニーのアクセサリー生産手段の場合、「途上国の靴工場の子供たち」のほうが稼げると馬鹿にされます。そこでペニーは渋々シェルドンにどうしたら効率的にアクセサリーを作れるかアドバイスを請うことに。

シェルドンが紹介した効率的な生産の手段が、オノレ・ブランとヘンリー・フォードによる生産方式です。今回はオノレ・ブランについて紹介していきます。

オノレ・ブラン(Honoré Blanc)は1736年生まれのフランスの銃器製造者です。互換性部品を用いて生産ラインの効率性を追求したパイオニアとして認知されています。

当時のフランスではマスケット銃(16-19世紀に使用されていた歩兵向けの銃・銃弾を火縄銃のように前から装填していた)が使用されていました。現代のように大きな工場で銃の製造が行われているわけではなく、職人たちがそれぞれ一定量のマスケット銃の製造を請け負っていました。そのため職人ごとに銃の部品の大きさなどが異なり、銃が故障したときに部品交換が容易ではない上に、大量生産ができないことをオノレ・ブランは問題視していました。

フランスでは既にジャン=バティスト・ヴァケット・ド・グリボーバル(Jean-Baptiste Vaquette de Gribeauval)によって大砲に使用されている部品の規格化が行われており、大量生産が可能であることに加え、部品の互換性が確保されていました。オノレ・ブランはこのアイデアをマスケット銃にも応用できるのではないかと考え始めます。

現代における平面などの切削作業を行うフライス盤が存在しなかった当時のフランスでは手作業のヤスリがけなど試行錯誤を通じて互換性のあるマスケット銃の部品製造に力を入れます。結果、オノレ・ブランは十分に互換性のある部品の製造に成功します。

この互換性部品を使用したマスケット銃製造を国内の職人が行えば、製造工程が効率化し、故障時の武器交換が容易になるため、オノレ・ブランは職人へこの手法の導入への提案を行います。

しかし、フランス国内の職人は互換性部品を手作業で作れるのか、また銃製造自体が上手く機能するか懐疑的だった上に、もし上手くいけば職人としての立場が脅かされるとして、このコンセプトの導入を拒みます。

結果的にフランス国内でこの手法が取り入れられることはなかったものの、当時の駐仏アメリカ大使であったトーマス・ジェファーソンによってこの銃製造コンセプトがフランスからアメリカへ持ち込まれました。

18世紀のアメリカでは銃の多くがヨーロッパから輸入されており、その理由はヨーロッパの職人による銃製造に依存していたからでした。トーマス・ジェファーソンはオノレ・ブランによる互換性部品を利用した製造方式を使えばアメリカ国内で銃を大量生産できると睨み、持ち帰ったのでした。

現在のアメリカ軍および民間契約企業による互換部品製造システムの基礎はこのように作られていきました。

シェルドンはこういうことを全部知ったうえで、ペニーに対し、もしペニーブロッソムを大量生産したいのであれば、バラバラの部品で作るのではなく、部品を統一した上で、作業するべきだと言いたかったんですね。ペニーブロッソムのような単純な商品の場合でも均一の品質を保つためにも重要なことだなと思いました。

シェルドンの知識量には感服です。

できれば毎日カルピスソーダ飲みたいです。お願いします。