ペーパーバックライター
ビートルズのヒット曲にペーパーバックライターがある。
ペーパーバックとは上等とは云えない装丁の大衆小説という意味らしい。 この曲は、自分が書き上げた小説を出版社にどうか出版してくださいと
切々と訴える依頼文そのものが歌詞になっている。
歌詞を要約した。
拝啓
お送りしました私の本はご検討頂けましたでしょうか。
執筆には何年も掛かりました。
1000ページの長編小説ですが、ご指示頂ければ
いくらでも直します。
話しの方向性だって変えても結構です。
出版権も差し上げます。
きっとミリオンセラーになるでしょう。
返送の際にはこちらの住所にお送りください。 敬具
返送先を知らせる最後の一行がダメ元の哀しい手紙だ。
私の著書の中に「光のパシスタ」という小説もあって、出版に漕ぎ着けた苦労をひしひしと感じる。
未だ初版で足止めになっている哀しい身からすると、この曲の軽快なリズムに体を揺らせる気にはならない。
日本では毎年7万冊の本が出版されて、めでたく重版に与るのは1~2割というから、初版討死の作家が8~9割ということになる。
量が質を生むという言葉があるが、量として支えている方は辛い。
アメリカ英語には、時に身も蓋もない辛辣なニックネームを付ける癖が
ある。それは「パルプフィクション」という言葉で、ペーパーになる前の
トイレットペーパーと同じパルプに過ぎない粗悪な小説本というこき下ろし振りである。
イギリス英語ではペーパーバックで、まだ紙の本と呼んでいるところが
救いだ。
日本語になると、三文小説と呼ぶ。
安いながらも三文頂ける有り難さがある。
やっぱり日本人は優しい。