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時の存在
おじいさんは毎朝踏み台を持ち出して
背を伸ばし柱時計のネジを巻いた。
一時間毎に二つ、三十分毎に一つボーンと
宣言するように鳴った。
時を意識する生活が新しかったのかも知れない。
時が流れるという。
あらゆる物・事がこの流れに乗って
過去から未来に変化してゆく。
そうだろうか・・・
変化してゆく、あらゆる物・事にただ、
刻印を打っているのが時間ではないか。
白い紙片に刻印を打ってお札にするように。
時という言葉を持たない生き物には時間が
在る筈もない。
時を持たなければ、生死の意識はなく
自意識も愛も心も持ち得ないということだろうか。