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復活の紫陽花

冬の庭を見渡してみて、紫陽花ほど貧相な植木はない。

まるでイタリアのおつまみパンのグリッシーニのように、
カラカラに乾いた枯れ姿で、命の気配もない。

ロンドンの東のブリストルの郊外、森と教会の古典的な街イエイトで生まれた少女は、この街の光と陰の揺らぎから想像力を働かせて、いつも物語を
巡らせていた。

早すぎる母との死別、再婚した父との反目、結婚生活に恵まれず、
母子家庭となり、友人からの借金、生活保護、壁の中をネズミが
走り回るアパートでの惨めな子育て生活、貧困と不幸が重なり
うつ病に悩まされる。
絶望から度々、自死への誘惑に惑わされた。

それでも、ずっと抱えてきた魔法使いの小説を完成させた。
いくつもの出版社に断わられ続けたが、やっと小さい出版社と
契約ができて、18万円を手にした。

この物語ハリー・ポッターはみるみるうちに世界的な大ヒットになって
大輪の花を咲かせた。その作家の名はJ・ K・ ローリング。

冬の寒さが緩むと、あの乾いたグリッシーニから芽が吹き出て、
瑞々しい若葉が出始め、五月晴れの頃には立派に青葉が繁り、
梅雨の頃には、紫陽花も陽の恵みを得て
紫色の大輪の花を咲かせるのです。

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