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夢で逢えたら

散歩をしていて、フッとメロディーが浮かんだ。
口ずさむが、曲名は判らない。
頭の中にはきっと何百ものメロディーが
整理されない状態でとぐろを巻いているのだろう。
その切れ端が歩行のリズムとリンクして
メロディーが浮かんだのか。
 
帰って、youtube で答え合わせすると
「夢で逢えたら」という曲だと判った。 
鈴木雅之がゴージャスな背景で
ブラックなソウルっぽい雰囲気で歌っている。
歌詞の内容から、遠く離れてしまった恋人を懐かしんで、
せめて夢の中で逢瀬を楽しみたいという
未練がましい男の性(さが)と思った。
大滝詠一らしいサラッと爽やかなメロディーなのに、
ブランデーの香りがする夜の雰囲気を醸し出すように
見事にアレンジされている。
あり合わせの酒に氷を入れてグラスを傾けた。
 
流石に名曲なので、沢山の歌手がこの曲をカバーしている。
吉田美奈子もいいし、原田知世とDeenのデュエットも
軽くて気に入った。
ここまで聴き込んだら、本家本元のオリジナル版も
聴かなくては礼を欠くとミュージックビデオを始動させた。
 
お母さんの大きな丸いお腹を女の子が優しく触っている。
「あなたの弟よ、産まれたら可愛がってね」と
女の子に静かに語る場面から始まった。
母親は早くに亡くなり、男の子は成長した。
男の子は、ぽつっと「お母さんに逢いたい」と呟き、
うなだれる。
姉は微笑みながら「じゃあ、目を瞑って」と言って、
ウォークマンを取り出して
二人でイヤホーンから流れてくる曲に聴き入る。
それが、大滝詠一本人が優しく歌う「夢で逢えたら」だ。
曲の中盤で、この曲の意味するところが判って、
胸が詰まり涙が溢れた。

不思議な事だが、この曲が浮かんでから数日後に最愛の母が
傾眠のまま逝ってしまった。
この曲は母からのお別れのメッセージだったと信じている。
 


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