でんぐり返し

思い立って、畳みの上で、でんぐり返しをしてみた。

放浪記の舞台で森光子がでんぐり返しをする。
劇中で念願叶った歓喜の盛り上がりと高齢にもめげず
これに立ち向かう森への敬愛から観客は目を潤ませて
その場面に見入ったという。
何を大袈裟なと思ってきた。

アメリカに住むことになって、何か武道でもと思い合気道道場に通った。
合気道は相手の直線的な攻撃を回転運動に転換して投げ飛ばす武道だ。
身体を鞠のように回転させて立ち上がるでんぐり返し稽古を
かつて何十回もやったという自負があった。
それが、やってみてビックリした。
首は痛いし、目がグルグルと回って、胸が悪くなって、吐き気までした。
何と言うことか、来るものが来ていた。
筋肉、骨だけでなく平衡感覚の三半規管まで衰退していた。
でんぐり返しをして二日目から首が痛くなってきた。
痛みまで遅れてやってくる。

でんぐり返しは、高齢者には危険な運動と身に染みた。
良い子はマネしないようにと、早速、友人たちにお触れを出したのだった。