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ツリーハウス

草に覆われた石神井川がサラサラと流れ
そこから田んぼが広がり、台地の縁まで続いた。
一段高い所に大きな木が、田んぼの方に傾いて立っていた。
その大木の中程に綱を縦横に編んで子供が
5~6人が居られる場所を作った者たちがいた。

今でいうとツリーハウスとでも呼ぶのか。
彼らは秘密基地と呼んでいた。
秘密基地にはその基地作りに係わったものが上る権利を持ち、
友だちを招待する制度もできていた。

小学校のクラスにそのメンバーがいたが、札付きの悪として
先生は相手にしていなかった。
ある時、その秘密基地を見上げているうちに
なんとかそこに上って景色を見たいと願った。
許しなく上った者が引き摺り降ろされ、
殴られたという噂があって、とてもそんな危険を
冒そうとは思わなかった。
そうなりゃ、札付きと友だちにならなくてはならないと
覚悟を決めた。
いつも注目していて、そいつの助けになるよう立ち回った。
宿題を手伝ったり、体育の徒競走の時は負けてやった。
我ながらなんと嫌らしい子供だったと恥じ入る。
念願叶って、その札付きに連れられ秘密基地へ上がる。
揺れる縄梯子にしがみつきながら上っていった。
一段一段夢心地で胸ときめいた。
上がってみると三畳間くらいの広さで、
綱だけでよくここまで出来たなあと子供心に感心した。
きっと大人たちも係わったにちがいない。
のどかな時代だ。

さて、石神井川を望むと川を隔てて広大な田んぼが広がり
土地はゆるやかに高まり丘が拡がっていた。
想像以上の景観に満足した。
一度上った切りで、その後興味は失せて
札付きへのご機嫌取りも終わった。
なんという不義理な子供だったのだろうかと
重ね重ね恥じ入る。
 

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