ショパンの手
ワルシャワのショパン記念館に展示の
ショパンのデスマスクの横にあるデスハンド。
肖像や立ち姿の華奢に似つかわしくない手だ。
小さめの手だが、指の節々が異様に太い。
幼少の頃から鍵盤に指を走らせ、鍛えられた
手を見て、ピアノが打楽器であることに
改めて気付かされた。
母の手が、節々が太くシミだらけのことを想った。
若い娘の手は白魚に喩えられるように頼りないが、
主婦と成り、母と成り子を育て、食事を作り、
洗濯をするという家事に費やし鍛えられてすっかり変貌する。
母の逞しい手は、ショパンの手に似て、
美しい日常を奏でてきた証と云えよう。