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老いてビックリ

娘が5歳くらいだった頃の遊園地でのことだった。
売店でソフトクリームを家内と3人分買って食べ始めた。
娘はご機嫌でペロペロと舐め回し口の周りを白くして
私たちの方を見上げて訊いた。
「どうして大人は口の周りが白くならないの?」
 
若い人から見て老人はどのように写っているのだろうか。
モタモタして邪魔に感じるのか、または憐れに感じているのだろうか。
若い頃、老人は不機嫌そうで、直ぐに怒り出しそうで、
うるさく忠告されそうで近寄りたくない存在だったように記憶している。
いずれ自分もこうなるという実感は露ほどにもなかった。

さて老人になってみると、ビックリすることも、
そうだったのかと納得することが多くなって面白い。

年取ると
●初耳の事でも理屈を越えてパッと理解できることがある。
●命の終わりをリアルに感じるので時間がやたらに愛おしくなる。
●それまでの人生をひとつの物語として捉えられるので後悔が薄まる。
●人の幸運シャクの種、人の不幸はミツの味という感覚が薄まる。
●湧き上がる欲が減退して、体力も落ちて頑張れの呪縛から解放される。
●花や草木、子供のイキイキとした姿が輝かしく見える。
●こんがらかったヒモを解いたり、
 折りたたみの傘を畳んだりの面倒なことが嫌でなくなる。
●ロングドライブして無事に帰った時、車に感謝のハイタッチをする。
●こんなに長く命を運んで来てくれた自分の身体に有り難みを感じる。

若い人にはソフトクリームで口の周りを白くしないようにやり過ごす老人の
叡智の豊かさは想像つかないだろう。
年取ると、実は面白いことが沢山見えるし、無駄なく、頑張らずできるし
何事も大したことはないと、簡単にあきらめることもできるのだ。

英語でAge before beautyと言って、
老人に「お先にどうぞ」と譲ることがある。
美しい若さより老熟を優先するという、
なんともお洒落な感性ではないか。 

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