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輪廻転生
年を重ねて、不思議に思うのは
植物への愛着が強くなったことだ。
若い頃は花とか木とか、
ただ当たり前だった。
それがどうだ、早春に芽吹き、
花を咲かせ、秋になり紅葉して
冬には葉を落とす、生き物の盛衰を
まざまざと見て感傷に浸るのである。
我が人生と重ねてしまうと、
もう葉っぱ一枚が人ごとでは済まされない。
20年も前のことだ、葉っぱのフレディというCDを買った。
森繁久彌が愛息に先立たれた落胆から救った、という絵本を
万感の思いで朗読している。
人はどこから来てどこへ行くのだろうか、という究極の問いに
応えるストーリーである。
葉っぱのフレディは、春夏の晴れやかな往時を想いながら
枯れ葉となって枝から離れ、冬の雪に落ちてゆく。
ある時、枝から離れるのが怖いと友だちに打ち明けると
葉っぱのダニエルが云った。
若葉からたくましい青葉になるとき、そして紅葉になったとき、
怖かったかい?
枝から離れて散ってゆくのも同じ変化で、決して
怖いものじゃないんだよ。
ひらりと雪に落ちたフレディは、自分がいた木を見上げて
その大きさに驚いた。
生命の木は、また戻っておいでと大きく腕を広げていた。
フレディは安心して目を瞑ったのである。