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心が解ける浜辺

乾いた海風が薄いシャツを透して肌を冷やして心地よい。
ニューポートビーチを漫ろ歩いていると
微笑みながら浜辺の方を見つめる夫婦が手を握り合っていた。

私もその見つめる先を陽射しに手を翳して見ていると
夫婦がにこやかに「息子なんです」と話し掛けてきた。

渚に向かって走る男の子が見える。
歳を聞くと6歳だと言う。
子供に恵まれなかった夫婦が、孤児院からこの子を
引き取り、育てている。

中々懐いてくれなかったが、自然に心が通うまで
辛抱強く待つことにしてきた。

数日前、この子が海の写真にじっと見入っていたので
この週末、3時間以上のドライブをしてやってきた。

海に着くと、小さい指を浜辺に向けて真っ直ぐ伸ばし
「海だ」と言い、二人に目を向けて、見たこともない
笑顔を見せた。

初めて目と目が確かに合って、これならやって行けるという
確信をもてた。
二人は海の近くに引っ越そうかと話し合っているという。

私は、日に焼けた砂の照り返しがあったが清々しさを
感じながら渚に目をやった。    

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