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異形のスポーツ

大英帝国が如何に偉大かは近代スポーツをみれば分かる。
テニスも卓球もラグビーもゴルフもサッカーも野球も
ボクシングも競馬も陸上競技も、
何もかも、あの小さい島で工夫され、ルール化され、
整えられて世界に広がっていった。
どの競技も当のご本尊はさして強くないところが微笑ましい。
「知は力なり」とこの国の哲学者フランシス・ベーコンが
高らかに唱えた。
 
中でも異形のスポーツと云えば、ゴルフだろう。
スポーツは相対してたたき合うのが基本であるが、
ゴルフだけはプレー仲間が一緒に肩を並べて
同じゴールを目指す。
順番にプレーして優劣を競い、点差に一喜一憂する。
仲間のように振る舞うが、勝ち負けとなれば敵対関係である。
自分のいいショットでは、見たかどうだ!となり、
密かに報酬系のホルモンのシャワーを浴びられる。
仲間に「ナイスショット!」と声かけするが、
本心は「こん畜生!」なのである。
長丁場18ホール、プレー中ずっと
秘めた優越感と劣等感が交錯する。
 
タイガー・ウッズという天才ゴルファーの言葉が
核心を突いている。
「グリーン上で仲間がパットをしている時に、
ボールが入れと念じている」
一瞬美談に聞こえるが、そうじゃなく、
そうしておくと、不思議なことに
自分のパットが入るようになるという
裏腹の心理効果のことだ。
 
テニスなどで打ち込まれた時は、
悔しさよりも相手が上手かったと収まるが、
ゴルフはすべて自分の責任なので、
悔しさの持って行き場がない。
そこで、道具が良くない、コースが良くないと
責任転嫁に忙しくなる。
そう言う意味で、百戦錬磨、権謀術策で生きて来た英国人の
心理戦の神髄がゴルフに織り込まれている。
事ある毎に「紳士のスポーツ」と自称しているが
紳士とは本心を隠し、繕う人ということだ。
これ以上辛口を並べると世界ゴルフ人口6500万人を
敵にまわすことになるので
空恐ろしく、この辺で止めておく。

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