甘い誘惑
ロサンゼルスに住んでいた時、
近所のミュージックショップで、
よくCDを物色した。
ジャケットのイメージで5枚くらい買った。
その内の1枚がまあまあなら
当たりという確率だった。
たまに飛びきりを見つけることがある。
「シークレットガーデン」がそれだった。
クインシー・ジョーンズ、バリー・ホワイト、
アルB.シュアーと名前が並んでいるので
雰囲気は想像がついたが、それよりも何よりも
The Secret Garden(Sweet Seduction Suite)
という隠微なタイトルに魅了された。
訳して「秘密の花園、甘い誘惑」となる。
まるで白いスーツの胸ポケットに赤いバラを一本さした
プレーボーイの渾身のプロポーズのようだ。
50年も前に家内を六本木にあった菩提寺の墓の前に連れて行って
「ここに一緒に入る?」と訊いた無骨な我がプロポーズとは
雲泥の差で情けなくなる。
・・・
秘密を教えて、ただの秘め事じゃなくて、本当の秘密を。
今夜こそあなたの秘密の花園を明かしてほしい。
その秘密を共にしたい。
さあ、思い切ってあなたの心にお許しを貰ってください。
あのメロディーを口ずさみましょう。
鍵を開けて、陶酔の調べに身を任せ、誘惑に満ちたこの庭で
熱い想いに焼かれるのもいいじゃないか。
あなたの悦びが、私に精気を与える。
あなたと共に居たい、あなたのそばで横になりたい、
抱き合っていたい、ずっと触れていたい。
あなたの満ち足りた笑顔が見たい。
信じてください、私の無垢の心を。
だから今夜はすべてを解き放ってください。
全てを私に委ねてください。
いつでもあなたのためだけに生きているのですから。
髪を解いて、心を解いて一緒にこの庭に入りましょう。
甘い誘惑を秘めた庭へ、熱い想いに惹かれる庭へ、
あなたが自由になれる庭へ、
夜毎のあなたのシークレットガーデン。
私の望みはただ一つ、あなたと一つになって
あなたのためにだけに生きていたい。
だから連れて行って、
あなたの心のシークレットガーデン。