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ジャパンテクノロジーの神髄
一日中、ドライブして車を車庫に入れてドアを閉めたら
車体をポンポンと軽く叩いて「ご苦労さんだったね」と労をねぎらう。
スマホの電池が残り10%を切ったら、
「ああゴメンゴメンお腹すいたよね」と詫びて充電する。
気に入っていたが、毛玉が沢山できて、へたってきたセーターを
ゴミに出すときは「ごめんね、ありがとう」とお礼をつぶやく。
30年も使ってきた掃除機は未だ現役で衰えを知らない。
ただ、アチコチ引っ張り回して掃除していると、
本体が重く感じるので振り向くと、車輪を上にして寝転がっている。
「ほら、しっかりしろよ」と叱りながら、
当時の技術者の設計ミスだなあとぼやく。
身の回りの「物」たちは、考えてみれば、
何かの縁があってここに来てくれて役に立ってくれている。
名前こそ付けないが、家族であり、仲間なのだ。
擬人化という言葉がある。
物体に対して人であるかのように感じて扱うことだが、
日本人には古くから染みついてきた自然な感覚である。
「森羅万象全ての物に魂が宿っている」という言葉に違和感はない。
昔、読んだ新聞の記事にあった話である。
ある工場の生産ラインの機械装置がよく故障するので
責任者が調査してみると作業員がぞんざいに扱っていたことが分かった。
そこでラインで動く機械一つ一つに純子さんとか百恵さんとか
当時人気の歌手の名前をつけたところ、ピタッと故障が無くなった。
名前があると愛着が湧いて、
せっせとメンテナンスをするようになったそうだ。
ロケットが宇宙に飛んでゆく姿を仰ぎ見て
「頑張って来いよ!」と我が子を送り出すように呟く
日本人技術者の横顔には共感する。
この精神文化がひょっとするとジャパンテクノロジーの
土台を成しているのではないだろうか。